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退魔士試験 7

大空視点

 大空と八雲は猫の後をつけて移動を始める。

 猫も急ぎはしながらも大空と八雲のペースに合わせて、後ろの様子を見つつ案内をする。

 そして向かうのは海岸付近の場所へとたどり着くのであった。


「ここか……なんだか、物音はするようだけど」


 立ち止まって大空は辺りを見渡し、言葉を出した。

 猫もここで立ち止まっていて、更には古賀松も遠くない場所で見かける。

 どうやらここで間違いはなさそうだ。


「私たちも急いだほうがいいわね」


「だな」


 八雲の提案に大空も賛成する。

 大空と八雲は古賀松の場所へと駆けつけた。

 古賀松との距離を縮めて行くと、古賀松は大空の方へと振り返る。


「おお、来たか」


「状況はどうだ?」


 古賀松からの声の返しで大空は状況の確認を聞いてみる。

 すると、古賀松は後ろを親指で指して、大空と八雲は見る。

 少なくとも隠れて何かをしている状況ではない。


「犯人を見つけて、戦闘ってとこ。見ての通りさ」


「龍富がここは一人で戦いたいって要望なんで、俺たちは手出ししないってことになっている」


 言葉でも古賀松は状況を説明すると、更に状況説明の補足と近くにいた御堂は話す。

 大きな瓦礫の陰に隠れていた為、遠くからは見えなかったが、龍富は化者らしき相手と戦闘していた。

 お互いに武器を交えてだ。

 ほかにも柄池も傍観していて、退魔師の試験官の男女計二人も観ていた。


「これはアタシの出る幕でもないってことか?」


「かもな」


 この龍富優勢の中、大空は聞くと、古賀松はその可能性が高いと話す。

 現に龍富の方が押している上、攻めの手数も上だ。

 この状況を不満を抱えて大空は観ていた。


(いや、まだあいつだけではないはずだ、戦うのは。これから別の奴と戦う可能性も……)


 難なく済むならそれがいい、とは思っても大空も戦う機会があればとは思っていた。

 せっかくの龍富から教わった力を使う機会があって欲しいとも心の中で思ってもいた。


「だあっ!」


 龍富は気合の声と共に武器で相手を押し返し、相手は距離を置くことになる。

 距離を置かれた相手は再度攻めに行く。

 しかし、龍富は退魔力で延長した刃で横に薙ぎり、相手はうかつに攻め込んだツケを傷で払うことになった。


「くっ……」


 不利に漏らす声が相手から挙がる。

 その後に、相手は龍富に背を向けて走ることとなる。


「あいつ、逃げる気か……?」


 御堂の相手に対する言葉が出る、が龍富はその場で立ち止まったまま、刀の先を真上に向ける。

 その後に目を閉じて龍富は何やら力を溜めることとなる。


「龍富は何かするのか?」


 大空の疑問の声。

 その後に龍富の刀から退魔力があふれ始めてきた。

 十分に溜まったのか、すぐに龍富は一飛びをする、刀を後ろに振りかぶりながら。

 龍富の向く方向は相手の方。


「いくぞ……」


 龍富の声が挙がる。

 刀の先端に退魔力が集まり、収束した分、光が輝きを強める。


「どりゃあ!!」


 龍富の声と共に一閃が下ろされる。

 刀は届かない、相手との距離が離れていて。


 しかし、振り下ろした刀の先から退魔力の塊が相手に向けて飛んでいく。

 横に長い塊は龍のようにも見える。

 その塊と相手の逃げ足は塊の方が圧倒的に早かった。


「あぁ……」


 振り向くとともに相手から声が出る。

 その声の色は諦めにも似ていた。


「うわあ!!」


 塊の命中と共に相手の声と当たった部分を中心に光が散乱する。

 相手は飛ばされて、地面へと這いつくばることになる。


「あれは……断龍斬(だんりゅうざん)……!」


「「知っているのか柄池!?」」


「ああ」


 柄池の突然の声に古賀松、八雲が同時に聞くと、柄池は肯定で答えた。


「あの断龍斬は俺とリュートで修行の成果で身に付けた技なんだ。俺が遠距離でも戦える技があればということで修行をしてな。なかなか退魔力を修行でうまく飛ばせなかったな、あの時は」


 柄池は修行の時を空へと目を向けて語り始める。


「あの退魔力、ずいぶん勢いよく飛んだよな。修行の賜物ってことか」


「そうなんだよ。俺もあの時は修行につきっきりでね」


 あの攻撃について大空は語ると、その攻撃は柄池も修行に付き合った賜物と話す。


「銃が効かない相手に遠距離からどうするかってのも問題になっていたから、それも修行の理由になるかな」


「おい」


 柄池の説明に龍富からの言葉が横から入ってくる。


「やっぱり龍富は少し離れたところも戦えるけど、完全に刀の射程範囲から外れると、戦いづらくなるから」


「おい」


 続けてと柄池の説明にもう一度龍富は言葉の横槍を入れる。

 龍富の言葉は先程よりも強い口調だ。


「勝手にねつ造するな」


「そ、そんな……本当のことも混じっているんだし」


 続けての龍富の言葉は注意で刀で下の地面をつくとともにであった。

 対して柄池は否定とも言えない言葉で対応する。

 その表情は苦笑いでねつ造との言葉は間違ってはいないのかもしれない。


「アドバイス部分は本当だけどな、修行は俺一人でやったんだよ。しかも断龍斬ってなんだよ」


「だってその技、この名前の方がかっこいいって、絶対に」


 龍富から事実と嘘の部分が話されると、柄池からも断龍斬について語られる。

 なんとなくだが、名前については譲れないものがあってねつ造までにいったのだと、大空は考えた。


「いや、俺の考えた名前があるんだ。それに俺が修行を積んで身に付けたんだから、俺に命名権はあるだろ」


「うぅ……すいません。でも、断龍斬の方が……」


 命名権についての主張を龍富がすると、柄池はすんなりと言葉で謝る。

 割と柄池は自らの名付けたものにも執着している様子であった。

 と、ここで相手のことを思い出したのか、龍富は相手の方へと向き直す。


「いや、そんなことよりもだ。犯人を捕まえないとだ」


 龍富は相手の方を錠で拘束せねばと話して、相手の方へと駆けていく。

 幸いにも龍富の攻撃を受けた相手はまだ伸びているようだ。

 試験官二人も何も言わずに傍観を決めている状況だ。


「まだ、倒れているうちに……」


 相手の近くに来た龍富はそう言って、相手の手を自身の手中に収める。

 別の龍富の片手には錠も持っている状態だ。


「よし、これで逮捕と」


 相手の手に錠をはめて、龍富は無力化したと伝えた。

 それを聞いてか、試験官の男性は一つ頷く。


「ん。無事確保確認。これで試験は合格だね」


「え……? これで合格……?」


 男性の合格の一言。

 その呆気ない言葉に大空は驚きの声を出す。

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