20
「ロージアさーーん! いらっしゃいませんかーー!!」
子供達のことは、ハリコさんに任せ、私はロージアを探した。
けれど、城の中も、外も探すけれどどこにも見当たらない。
あと思い当たるのは、レヴィナギア様の部屋くらいだ。
ゆっくりノックをして、返事を待つ。
「……入れ」
その言葉を聞き、ゆっくり扉をあけると腕を組んだまま立っているレヴィナギア様、そして、その視線から必死に逃げようとしている鳥籠の中に押し込められたロージアがいた。
「あ、ロージアさん!! 探してたんですよ」
「おんな……」
「君の返答次第で、此奴の命運が決まる。さぁ、どういう罰がお好みか」
命乞いするロージアの瞳をみて、ため息をこぼしながら、鳥籠に近づき、鍵をあける。
レヴィナギア様の左眉がひくりと上に上がったことは、見て見ぬ振りをした。
「罰とかはいいので、ロージアさんの翼と瞳で木の実を探してきてください。他にも使えそうなものがあればそれも」
「いいのかそれで」
「はい、木の実がなければ品物は作れませんので。それにこの仕事に一番向いているのはロージアさんです」
手を伸ばし、鳥籠からゆっくりロージアを取り出すと、先のアクセサリーは綻びつつも、その姿を留めていた。
「やってくれますね?ロージアさん」
その言葉にこくりと頷き、ロージアは部屋から一目散に飛び出していった。
「女、こんなものでいいのか……?」
人の姿のロージアが、私とハリネズミ一家のいる部屋に来るまではそう時間はかからなかった。
包みに入っていた木の実は、最初に用意していたものより色艶も鮮やかで、何かの鉱石のようなものも混じっていた。
「凄いや、ロージアさん!!」
「わぁ、この石、宝石みたいでキラキラ!!」
褒められると思っていなかったのかバツが悪そうに頭をかくロージアの元にリコが歩み寄る。
「ロージアさんの、それボロボロになっちゃったね。こんどリコが新しいの作ってあげる!!」
「……いや、俺はこれが気に入ってる。ありがとうな。
それと…………ごめん」
最後の言葉は本当に消え入るほど小さかったけれど、私たちには確かに伝わった。
その後のロージアは、領地内にチラシを撒いてくれたりと、割と積極的に仕事を手伝ってくれた。
一度、人の姿をしたロージアさんが、リオと一緒にレースを編んでるのを見たときは、扉の外からハリコさんと思わず目を合わせて笑ってしまったが。
そんなロージアに、祭りを前日に控えたときにふと聞かれた。
「どうして、あの時俺を怒らなかったんだ……?」
彼としたら悪いことをしたら罰せられるのが当たり前なのだろう。
「もしかして、お前まさか人間ではなく天使……」
「いいえ? だって貴方を叱責することで生産性は上がります?
だったら、ロージアさんの後ろめたい気持ちを利用して、普段なら嫌がるような仕事に派遣して、仕事を迅速に済ませる方が効率がいいと思う、とっても人間らしい考えです。
まぁ、ハリネズミ一家との和解は嬉しい想定外でしたが」
「……悪魔以上に悪魔みたいな女だな、……お嬢は」
それだけいうと、私に背を向けて何処かに行ってしまった。
それでも分かるくらい耳が真っ赤にさせて、緊張しながら、私のことを《お嬢》と呼んでくれたロージアとは、この先少しはうまくやっていけそうだと嬉しくなった。




