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お題SS ~5時間以内に11RTされたら、剣と魔法が存在する世界観でお互い好きあっているが、素直になれない谺響の小説を書きます~

作者: 谺響

空気が冷たくなってきた分、空もまた蒼白く澄み渡っていて、流石にそろそろ清々しいとは言えなくなってきた。冬の近いそんな寒々しい空模様の下でも、村は至って平和で、極めてのどかだ。

平和、サイコー。

悩みのタネがないワケでもないが……今のところその悩みのタネである相方は、朝早くに書き置き一つ残してお出掛け中なので、気にしないでおくに限る。気にしたところでどうせオチは読めている。だったら、こんなのどかな昼下がりはのんびりと昼寝でもしていた方がよっぽど有意義だ。そうと決まったらベッドに身体を放り出して、大きく伸びをする。


「カキョウさん、大変だ!モンスターが!」


だが残念なことにほんの一時の憩いも許されないらしい。息を切らせて飛び込んで来た村人が、急を告げる。


「奴ら、今までにないくらいに大勢で……それにやけに殺気立ってる!」


「どれだけ大勢で来たって、残さず追っ払ってあげます。安心して他の皆と避難していて下さい」


村人の肩に手をやり、優しく言って宥める。戸口の脇に掛けてあったマントを羽織り、杖を掴んで帽子も目深に被ると家を出た。


「さて……一仕事して来ますか」




俺が所属する魔導師アカデミーからこの村に護衛として派遣されてもうじき1年になる。こんな山奥の、酒造くらいしか取り柄のない村に護衛なんて、一体どれ程の意味があるのやら。研究に明け暮れる魔導師の対人スキル改善だとか、それらしいことを色々と言ってくれるが、結局のところアカデミーは地域の皆さんの味方です!ってアピールしているってだけの話だ。それも、汗水流すのは俺たち下っ端の生徒だ。

始めの頃は反骨精神を宥めるのに苦労したが、実際に村で暮らしてみると案外悪くなかった。そりゃ、不便は多いし、何より本校にいた頃のような、大がかりな実験が出来ないのは結構くるものがあるけれど、モンスターを退治する度に村人に有り難がられ、ちやほやされるのは満更でもない。

物見櫓に登ると、いるわいるわ、村の入り口を取り囲むようにオークの大群が群れをなして息巻いていた。こちらに気が付いたのだろう、指を指して何やら喚いている。見張り番に下がっているように言うと、櫓から身を躍らせた。『魔法使いたる者、いかなる時でも優雅であれ』--それだけはアカデミーの教えで唯一、心の底から同意できるものだ。静かに門の前に降り立つとオークたちの罵り声に囲まれた。


「来たぞ、ヤツだ!」「出やがったな、この£∞*¢♂め!」


「毎度毎度、懲りない奴だな……」


「全くだ」


一際体の大きいオークが群れを割って前に進み出る。もう何度対峙してきたか知れない、オーク軍団の長、ズルゴは肩に担いでいたそれをおもむろにこちらへと放り投げて寄越す。


「敵いもしないくせによく吼える」


足元に転がされたのは白髪の女剣士、パール。太い鎖で両手を縛られた相方(とは呼びたくない)の鎧は打ち砕かれて原型を留めていない。どれだけ泣き喚いたのか、泥で汚れた頬が微かに震えていた。こちらからはその顔は窺い知れないが、きっと涙と鼻水で凄いことになっていることだろう。


「きっちりと躾をしておけ。身の程をわきまえろ、とな」


「あー……うちのがご迷惑おかけしてスミマセン。わざわざ御返却頂かなくても構いませんのに……」


「ふんッ!キャンキャン五月蠅いだけの雌犬なんぞ要らぬわ。そんなことより……」


ズルゴが不敵な手招きで挑発する。よくある展開だが、ここまでご足労頂いて何のおもてなしもないとあっては礼を欠くというもの。笑ってそれに応える。


「それじゃぁ、一丁……決闘し(ヤり)ますか!」




† 谺響 vs ズルゴ   決闘(デュエル) 開始(スタート)


「地の果てまで領土を拡げよ、踏査(エクスプロレイション)

常夏の島トロピカル・アイランドの恵みをここに、楽園の拡散ユートピア・スプロール!」


まずは結界魔法(エンチャント)で魔力基盤を整える。魔術師は魔力が無ければ何もできないし、出来ることの上限もその魔力量でおのずと決まってしまう。ここをおろそかにするような者は魔術師として失格だ。


「随分と急くが、果たして間に合うのかな?針葉樹林帯(タイガ)を駆け抜けて馳せ参じよ、ゴブリンの先達(ガイド)!」


背後の物音に振り向くが一瞬遅い。死角から小さな影が襲い掛かり、こめかみに一撃入れてそのままズルゴの元へと飛び去ってしまう。手にした望遠鏡で殴られたのだろう、地味に痛い。というよりも、むしろムカつく。足元に寝ているコイツとどっちがマシだろうか?

余計な考えは兎も角、気を取り直して相手に向き合う。


「夢見る意志には溢れる光を!セラの聖域(サンクタム)

豊穣の地の先人よ、我に力を!来たれ、アルゴスの女魔術師(エンチャントレス)!」


こちらが召喚したのは戦闘能力は皆無ながらも、結界魔法(エンチャント)を扱う魔術師に力を貸し与える、有難いお姉様だ。南国特有のワイルドで露出高めな衣装(モロ尻)を豊満な身体に纏う、絶対に肉食系だろ、コレな見た目とは裏腹に尽くす系なのだ。

こちらの手番はまだまだここからだ。


「さぁ、今日も張り切って働いてもらおうか。出番だぞ!出でよ、フェアリーの大群クラウド・オブ・フェアリーズ!!」


「あいっ!」x6


続けて召喚したのは6体でワンセットの小さな青髪のフェアリーたち。

彼女たちを召喚した時の効果で、魔力が戻ってくる。

完全に魔力が戻ったところでここからは結界魔法(エンチャント)を声の続く限り唱える。


「この地に更なる恵みをもたらせ、繁茂(ワイルド・グロウス)

夢と(うつつ)を結びて(ほど)け、退去の印章シール・オブ・リムーバル

魔法の歌よ、途切れることなかれ!女魔術師の存在エンチャントレス・パーセンス!」


よし、いけるっ!

おもむろに印章(シール)を割り砕く。その効果の対象になったフェアリーの大群クラウド・オブ・フェアリーズの召喚が、解除される。


「きゃ~?」「あ~れ~っ!」「ぴゃ~っ!?」


「今こそ我が手に帰れ!そして溢れかえる魔力を再びこの手に!フェアリーの大群クラウド・オブ・フェアリーズ!」


さぁ、準備は整ったぞ。


「吹き荒れろっ!気流の言葉ワーズ・オブ・ウインドっ!」


気流の言葉ワーズ・オブ・ウインドは魔力を注ぐことで置換効果を発揮する結界魔法(エンチャント)だ。発動すると敵味方双方の展開した生物(クリーチャー)結界魔法(エンチャント)などをその場から吹き飛ばしてしまう。一見すると自分にも被害の及ぶ、癖のある魔法だが、今この状況では最早それはメリットでしかない。


踏査(エクスプロレイション)詠唱(キャスト)誘発(トリガー)した女魔術師(エンチャントレス)の能力を気流の言葉ワーズ・オブ・ウインドで置換!先に展開していた踏査(エクスプロレイション)とフェアリーを(バウンス)して、改めてフェアリーを召喚!」


そして魔力が再び満ちてくる。激しい風がオークの群れを次々と吹き散らしながら渦を巻く。

こちらは風が吹けば吹くほど魔力が漲って来る。ちみっこいフェアリーたちが飛ばされないようにと必死に裾にしがみついてくる様を見て滾らないハズがない(但し、フェアリーはバウンスする。慈悲はない)


「ぬおぉぉっ……!」


ズルゴはまだ辛うじて踏ん張って堪えているが、最早彼を守るものは何一つない。既に勝敗は決している。だが、慈悲はない。


「ふふふふふ……ふはは……はははははっ!それでは幕引きといこうかっ!」


高笑いと共に勝利を宣言する。


生ける願い(リビング・ウイッシュ)にて導け!

虚無の霊気!荒廃の権化!神として語り継がれし最も巨大な世界の終末よッ!!」


「おおおおおおおおおおおおっ!!覚えてやがれぇぇぇぇぇぇっ!!」


召喚魔法の口上を唱えているうちにズルゴの巨体は風に飛ばされて行ってしまった……

初めましての方もそうでない方もおはようございます。


今回はファンタジー世界でお互い素直になれない二人が(ryなお題でちゃちゃっと書いてみたのですが、RT数により途中打ち切りにしたらタイトル詐欺になりました。反省はしません。

コメントなどで続編の需要があるようでしたら、また書くかもしれませんが、保証はしません。


この作品はTCG「Magic:the Gathering」を下地にしています。

作中で谺響が使用したのは「エターナルウインド」と呼ばれる無限コンボ。知名度はイマイチですが大きな公式大会でも戦績を残しているものです(レガシー環境に合わせてやや調整しています)ご覧頂いた通り、引きが良ければ2ターン目でもう、好き放題出来ますし、そうでなくとも大抵は4~5ターンで気流ロックがかかり、相手の場は根こそぎ吹っ飛びます。あの魚だって怖くありません。ちなみに先行ドロー無しのゴブリンの先達の誘発能力不発でも作中の流れが再現できますが、フェアリー召喚後は文字通りの綱渡りドローが要求されます。


これを機会に興味の湧いた方は是非、MtGで遊んでみて下さい。

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