舞い降りた幸運
僕はその時何も出来なかった。声をかけようとしても、もし間違いだったらどうしようと考えてしまったからだ。
その時だった。女の人がこちらを向いたのだ。そして目があった瞬間彼女の顔が赤くなりながらもパァっと明るくなった。
「もしかして、りょう、君?」
その一言に僕も確信した。優姫ちゃんだと。
「優姫、ちゃん?」
「うん!りょう君久しぶりだね!」
力強く返事をしながら駆け寄ってきた。そして勢いよく飛びついてきたのだ。
「のわぁ!あ、危ないよ、優姫ちゃん。」
「だって嬉しいんだもん!」
僕だって嬉しい。でもこの時だけは恥ずかしさに負けてしまった。
でもなんとか引き離すことが出来た。
「優姫ちゃんいつこっちに戻ってきたの?」
「えっとね、先週ぐらいかな?向こうで色々あってね?戻ってきちゃった。」
てへっと可愛く答えてきた優姫ちゃんを見て昔と変わらないなと思い少しほっとした。そして僕は今日の祭りのビックイベントの花火を一緒に見に行こうと誘おうとした時、ふとあることが頭に浮かんだ。
彼氏、いるのな。もしいたらどうしよう。
聞きたい。でもこんな事を直接聞いていいものなのだろうか。
そんな事を迷っていると。
「ねぇ、りょう君てその、彼女とかいるのかな。」
「え?」
予想外の言葉に僕は間抜けな返事になってしまった。
「ううん、いないよ?どうして?」
「今日お祭りの日だよね?もしよかったら一緒に花火見に行かない?もちろんりょう君がよければだよ?」
またもや予想外の言葉に僕はその時何も言えなかった。
優姫ちゃんが花火を見に行かないかと僕を誘ってる?
ということは一緒に行ける!
「うん!もちろんいいよ!行こう!」
「やった!じゃあ6時ぐらいにりょう君の家に行くね?」
「わかった!待ってるね!」
この時僕は一緒に行ける嬉しさと、自分から誘えなかった情けなさを感じていた。
花火を見に行く約束をし、優姫ちゃんと別れて帰宅してる最中僕はあるのことに気がついた。
「あ、そういえばあいつと約束をしてたんだっけ。」
と考えていると携帯が鳴った。画面には彼女がいなくて1人で花火を見に行けないからと僕の家に来ると言ってきた友人の名前が映っていた。
「もしもし、なんかようか?」
「わりぃ、今日お前の行けないわ。留守番頼まれてさぁ。すまん。」
「わかった、じゃあな」
よっしゃ!これで問題解決!
僕はこの後の優姫ちゃんとの花火見物にワクワクしながら帰宅した。