答えと知らぬうちに
同じ声で同じ問いかけをして来る幻聴に苛立ちを覚える。
(生きたい、死にたくないっ!)
ぶつけるよう乱暴に答えを幻聴にぶつけた。
『乗せよう』
返ってきた答えは、意味がわからない。
理解力もなくなっていた。
所詮、死への恐怖から自身が作った幻影だ。
(足掻いてもかわない……)
意識は、闇へとおちた。
だから、気づくこともなかった。
音もなく底から産まれた渦に抵抗なく呑まれる。
水面へと登り、水柱となり天高く上る。
そして、水柱は七色の煌きを集めた龍となり、背に乗せていた。
世界をすり抜けて、狭間の暗闇を流れて行く。
故郷をすり抜けて、世の理から外れた事を知らない。
ゆらり、ゆらり。
ぼんやりとした輪郭がはっきりとしない長い体を揺らし、暗闇を泳ぐ。
煙のように暗闇を彩る唯一の色は、全て同じ虹色。
色彩は一緒だが、一体一体にある特徴が見られた。
七色のうちのどれかが濃い色合いをしていた。
星空を連想させるが違う。
泳ぐのは、毛並みの長く虹色の色彩を持つ龍だ。
龍は、早く早く――と急かすように長い身体で暗闇の中で動き回る。
(多いではないか。いつにも増して多いぞ!)
そして、その泳ぐ多さに眉間に寄る皺が一筋増えて深くなった。
居城から出たくないと思うが、仕事なのでやらなくてはならない。