環境
開放的なホールにはひんやりとした冷気が肌が感じ取る。
豪勢なシャンデリアの上には水色の色彩をした女性が腰掛け、霧を発生させていた。
(……植物系には日差しが強く水分もない。水系がああしなければ存続は難しい)
シャンデリアの下には霧に見え隠れする植物系の特徴である草花が見られた。
「こっち」
少女はホールを突き進む。
一番奥にある最上階まで続く階段だ。
足元の階段から続く階段は目眩を覚えさせた。
妖精である少女は背中にある羽で飛び立つ。
しかし、登るしかない。
魔法に長けている妖精と精霊。
生物としての存在は、陽炎のように虚ろだ。
生物として存在し、確かな技術を持つ人に憧れと嫉妬を抱きながらも、共存共栄を選び歩んでいた。
そして、嫉妬は戯言を言ってしまった。
「何を思い殺したのか……」
今はいない人を思いながら呟く。
何十回と響き渡った階段を登る足音。
最上階にある楕円形の展望台を歩いているため響かない足音に耳は違和感を覚えてしまい落ち着かない。
「長老、お連れ致しました」
楕円形の中央にある硝子のドアで少女は止まり、向こう側へと会釈をしながら告げた。
入れというように奥にあるカーテンが少女によって開けられる。
カーテンで隔離されるようにキングサイズのベッドに横たわる老人が一人。
少女よりも大きく成人男性くらいの身丈であるが、痩せこけているせいでか、小さく見える。
そして、大樹の妖精である老人にとってこの環境は、拷問と等しい。
下の階と違い強い日差しを遮るものもなく、水分もない。
「長老がこんな場所にいるとは……」
晴れ晴れとした大空と爛々と輝く太陽が真上にあるせいか。
肌が痛いと感じる。
「これは私が望んだことだ」
以前聞いた声よりも掠れて別人かと思えたが、間違い亡く老人から聞こえた声だ。
「これで元に戻れる?」
咳き込んだ老人の背中を摩りながら少女は妖精語で老人の耳元で囁いた。
少女の声色は、期待を隠せずにはいられないものだった。
「ああ、十分だろう……」
咳き込みながら口元を掌で押さえ老人は少女に答えた。
耳に入ったが瞬間全ての疑問が解決した。
まるで、舞台のように。見せられていると感じから見せられていると確信変わった。
「全てに気づいたのか、この世が」
真実にきづいた世界が妖精に罰を科し、この環境を作り出した。。
世界とは三本の主柱によって成り立つもの。
基盤となる世、世から産まれた最初の固体であり世の守護である神。
そして、生物。
どれかが崩れてしまえば、全てが崩壊に向かい消滅する。
「貴様が言ったことが原因だ」
老人を写した眼は冷たい、その声も。
この老人こそが全ての始まり。
「平和な日々を取り戻したいのだ、償いもしたい。だから」
「やり直したいのだ、もう一度」
老人はベッドから降りてその場に座り込むと両手を合わせて懇願した。
「それは身勝手だ。最後の生き残りであるあいつを星龍に乗せたのは、貴様だ」
その言葉と共に脳裏を過ぎるのは、連れとの出会いの時だ。
年端もゆいかぬ幼子が縄で背に括り付けられいた。
「仕方なかった。あの時に誰かがやらねば」
咳き込みながら言葉を続けようと浅い呼吸を繰り返し、老人は死角であろう場所にある少女に目線を送った。
少女は頷き静かに飛び立ちながら、両腕に光を纏わせ鋭利な刃を作りあげた。
ある一点を見つめて飛び込む。
首襟の僅かな隙間から見える首筋。
その僅かな隙間も少女かから見れば十分な隙間だった。
首筋に刃が入った瞬間に湾曲を描いて、カーテンを染め動かす。
「私は模しているだけ」
ぱっと鮮やかな緑の樹液がシーツに散り、老人は目を見開いた。
強い衝撃しかなく、何が起こったのか老人は理解していなかった。
視界に胴体を貫く掌を確認すると、激痛が瞬く間に走り体を支配し呼吸すら出来ない。
老人はパクパクと口を動かすだけ。少女は両腕を刃にしたまま呆然と立ち尽くす。