染まった視界
空は無表情で静かに頷く。
(あれを殺す)
思考で反芻すると、ぼんやり先ほどの光景が記憶として思い出される。
白神と呼ばれていたあれはとても以前の彼に良く似ていた。
(そして、殺してやる)
目の前にいる黒神を殺してやる。
ど、くん、と静かに鼓動が鳴った。
視界が漆黒に染まり、黒神と自身を繋ぐ鎖だけが煌きだけが唯一の色。
記憶さえも漆黒。その他の色合いが思い出せない。
まるで彼の色に侵食され犯されていく。
「待たぬかっ!」
その声共に漆黒ではない色が掴まれた肩から、体温と一緒に色合いを取り戻していく。
「白神、しつこいぞ。そやつは我がやる」
「空とて、同じ新参のいのりといた方が安心するだろう?どうだ?」
「……。強制でないのから、断る。黒神に拾われたので黒神に従う」
掴まれたままの肩にある掌にそっと触れて離し、真っ直ぐに見つめてくる雪の眼から視線を離した。
「そ、そうか。お前がそれで良いと言うなら構わんよ。黒、優しくするのだぞ?お前は熱くなると止まらんからな」
「自重しよう」
ひらりと両の振袖が羽のように翻し、また一歩、また一歩と距離が空いて行く。
その足と空いていく距離を逸らした眼は見つめていた。




