感情
後方を指で示すと、そこには動く白の人影がこちらに歩いていた。
少女は緑一色で愛らしい眼を鋭くし、睨みつけた。
「嫌い。裏切り者……」
半透明な羽は、感情に反応し灰色と黒の色合いに変化。
感情の憤慨を示していた。
魔法は解かれ足が自由に動くのを確認する。
「関係ないと言い切れる事か?」
宥める事も含めて諭すように言うと、少女は顔を伏せた表情を隠した。
羽は、元の半透明に戻りつつあるが根元は灰色のまま。
――理性で納得できたとしても、感情はそうもいかぬか。
少女は鋭い眼のままで、ターバンからはみ出している毛先を引っ張る。少女の行動が八つ当たりだと分かって上で好きなようにさせる。
ざっく、ざっくと砂漠を踏みしめる重い足音。
「……大丈夫か?」
最初の沈黙は戸惑いと驚きがあった。
僅かな差に見えたが、かなりの差があったようだ。
追いつくまでに小休憩になった。
たどり着いた連れの頭にあるターバンは、汗染みができ紫外線対策として顔にも巻いた布地で僅かにしか顔には大粒の汗が滝のように伝う。肩で呼吸をしている様は、闘牛を思わせた。
連れは、答えるよりも疲労が勝るようだ。
「運動不足が原因だ」
水の入った水筒を差し出すと受け取る手と一緒に睨まれた。
喉を鳴らしながら、水を飲んでいく。
「……」
少女は頭の上に座り連れを視界に入れようとしない。
水筒を取り上げて一口だけ喉を潤した。
「そんなにむくれるな」