無くしたもの
姿形だけでなく似てしまったらしい。
ふ、と唇の口角が上がり笑う。
「これは、要らぬものだ」
笑いを浮かべたまま右手を胸元にあてた。
皮膚の細胞の隙間を指先は感じとる。
そして、比較的大きい隙間を見つけて手を沈めて行く。
出血もなく傷口もないが、胸元に沈んで行く手というのは、どこか生々しく気味悪さがある。
自身の脈を感じながら、右手を動かす。
その一瞬におとずれる衝動は、強烈な吐き気。
呻き声と同時に吐き出すのは、胃液で口内には酸っぱく苦い。鼻にはつんとくる。
「あっ、た……」
指先にあたる金属と同じように無機質で冷たいモノを手に掌に握り締めた。
引きづり出すと、様々な色彩が混ざった玉。
口内に残った胃液を唾と共に吐き出すと、手の甲で拭う。
体内にあった中心――ココロを引きづりだした。
無気力から来る眠気を抑え込み玉を見つめる。
音はないが脈を打つように淡い光を放つものやゆっくりと動くものなどがあるが混濁している場所は一つもない。
「嫌な色彩だ、これは」
まるで駒と呼んだ彼らに宿る感情一つに纏められたように思えて不快で眉間に深い皺が寄る。
玉は、それに反応したように色彩は変化していく。
そして、不快さを感じる桃色と赤い色彩を指先でなぞる。
その色彩はすっと消えあったヵ所は一筋の跡なった。
残りがない事を念入りに確認し、深呼吸をし一気に戻した。
右手を抜くと、両手の開閉を何度か繰り返し感覚があることを確かめて歩き出す。
何を無にしたのかは、何だろうかと疑問が浮かんだすぐに消えた。




