互い
煙の鎖に指先が触れ、素早く動かし印を刻むとぼろぼろと崩れていく。
「ならば、忘れるな」
扉に向かいゆっくりと歩いていく。
そして、すれ違う僅かな去り際に耳元で囁く。
見るが限り情を移しているので忠告も兼ねて。
「駒であり兵士なのだ、と」
扉に触れて波紋を起こし、一人残し後にした。
「駒で兵士か……」
呟いた声は思っていたよりも弱弱しく静かに消えた。
自身がその言葉に傷ついていると嫌でも自覚できた。
(それだけでいられるのか、貴様も、私も)
自身にした問いかけであり出て行った者に対しての問いかけでもあったが、答えは見つからない。
だた、あの言葉を聞いた時に胸の奥が凍ったような冷たい感覚が広がった。
「私は……」
このままいたいと思う。
私が終わるまでは、今が続けば良いと思う。
目に止まった一輪の鈴蘭を優しく揺らした。
「ならば、忘れるな。駒であり兵士なのだ、と」
自身で唇が紡いだ時に、鼓動が高鳴りを全身で感じた。
そして、今も高鳴っている。
違う──と否定しているように思える。
(私は……何を考えた?)
早足になった歩みを止めて自身の両手を広げて見つめた。
「毒されたと言うのか。これは」




