本当の理由
鳥かごの出入り口が開き、一つの苗木が浮遊する。
「癒せ」
苗木の葉に口付けを一つすると苗木は一輪の鈴蘭となり弱い光を放ちながら、通路の鈴蘭に加わる。
その様子を見届けると、二人は一息付いた。
雪の目と目が合うと、ふつふつと感情が湧き上がる。
「う、ぐっ!」
その感情の勢いに任せて鎖を引き前へと引きづり出した。
鎖が喉に食い込み、呼吸が止まる。
本能として荒い呼吸を繰り返す事を無視し睨み付けた。
「さぁ、今まで戻らなかった理由を言え」
あの二人の青年がないこの場所なら素直に言うだろう。
「言わねば、駄目か?」
深呼吸をピタリと止めて赤かった顔色は一変して青ざめた。
自分の気遣いを無にする気なのか――と怒りが沸く。
えたぎる感情は激流となり言葉になって喉まで上がってき来る。
怒鳴るのは容易なことだ。
鈍感なのは長年の付き合いで理解している。
「一つ約束しろ。け、消して怒らぬと」
滅多に見せない真剣な表情と口調に戸惑うが咳払いで誤魔化した。
「あぁ、誓う」
「ぜ、絶対だな」
びくびくと怯えるその様子は、まるで親に怒られる前の子供。
その様子に呆れを覚えてため息と共に吐き出す。
「誓うと言っただろう。早く言え」
「――強制に帰したあやつに、な」
「実に、荒い方法だったな。再構築したが反動で未だに目覚めていないぞ」
「目覚めた、あやつにだな、その……」
女のように指先を遊ばせて言葉を濁す。
「なんだっ!」
「あやつに、嫌いと言われるのが嫌だったのだ……」
右耳から入って左耳から抜けそうになったが、脳裏に反響し留めた。
「そんな下らない理由で今の今まで戻らなかったと言うのか、貴様は?」
真剣な表情を浮かべて静かに頷くだけの返事をよこした。
その瞬間にプチッと何かが切れた。
「戯け者、貴様は本当に戯け者だっ!」
「な、なぜだっ!」
狼狽える姿を見て、怒鳴ったせいで乱れた息を整えて静かに口を開いた。
「あやつらに情を入れるものではない。役割を忘れたか?」
緩やかな空気だったが、その一言で空気が張り詰めた。
「……忘れるなど、出来ぬと。貴様と私がよく解かっているではないか」
すうと雪の眼から光が冷えて冷笑を浮かべた。




