傍観が平和
小柄な青年は悪寒を感じ素早く詠唱を紡いだ。
漆黒の美人の手首と細い首に煙の糸が輪となり繋がる。
「気絶している場合ではないぞ。さぁ参ろうか」
漆黒の美人は楽しげに煙の輪を引く床に縄の芋虫を引きずって行く。
「助け、助けてくれっ!」
二人の青年は、口を挟むことなく黙って見送る。
「いつもなら助けてあげる貴方が珍しい」
「できない。無理、絶対無理。今回は傍観が平和」
「お寂しいなら稽古にお付き合いを」
「やる」
一枚岩の大理石で出来た回廊と扉。
「く、る……っ!」
背後から大げさに呻き声を無視して歩みを進める。
術で作った鎖は繋がったまま。
隙あらば逃げようとするために歩きにくいのが我慢だと自身に言い聞かせた。
「ならば早く歩け、戯けがっ!」
扉に撫でる様ぬに触れると水面のように波紋が浮かび広がり、二枚の扉は音も立てずに独りでに開く。
扉に指先が撫でるように触れると水面のように波紋が起こり広がる。
二枚の扉は独りでに音もたてず開く。
二人が扉を潜ると、扉は同じように閉まる。
暗闇が広がるがぼつぽつとした弱い光が灯り広がり始めた。
鈴蘭の花びらが弱い光を放っていた。
一つ二つという数ではなく、無数に広がる。
「解放」
指先をぱちんと鳴らし、静かに呟く。




