口は災いのもと
地味な攻撃に涙目になりながら漆黒の美人の両手首を掴んで爪を離そうとするが、漆黒の美人はそれ以上の力を込める。
がっつりと両肩を掴んでいる漆黒の美人は、両肩更に力を込めて抓る。
「そなたのすぐ戻るは我の認識と大分違うようだ。ここではっきりさせようではないか――すぐにというのは直ちに・即座という意味合いでありすぐに戻るは直ちに・即座に戻るという事だ。そなたのような年月をかけるのは間違いのだ」
「言い方でどうでもないではないか。数年だけという物言いをすれば軽く感じないか?」
その発言に漆黒の美人の中で、何かに割れ目が入りいっせいに広がる。
「……。馬鹿だね、黙っていれば良いのに」
「半神だいうのに、比べ物になりませんね。大人しくしおらしく聞いていれば、数分で済んだものを」
二人の青年は気づかれなうように漆黒の美人から距離を置きながら、呆れて見守ることを決めた。
踏んでならない地雷を容赦なく踏みつけたと長年の直感で感じ取ったからだ。
「たった数年であろう。物事は、良い方向で言わねば……」
ならぬと言い終えるまでに漆黒の美人の変化に気づき、蚊の声になり消えた。
「――ならば、そなたのいい加減さをたっぷりと言ってやろう。遠慮はいらぬ、存分聞け」
とびきりの笑顔を見せて漆黒の美人は華奢な手足に術で用意した縄をギリギリときつく締め上げて行く。
「さて、時は十分ある。一晩で終わると思うな」
縄の芋虫状態で這って逃げようとする姿を漆黒の美人は視界に捉えて日頃の鬱憤を込め背中から渾身の力を込めて踏み付ける。
「逃げないようにしろ」
足下でぴくぴくと痙攣する縄の芋虫を睨み付け漆黒の美人は珍しく命令口調で静かに告げる。
「か、かのモノに繋ぎを。とける事のない枷で繋げ」




