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二つの神  作者: Innocent
彼らの日常
17/40

説教は短いのがいい

 一時間は、当たり前。実体験での最大時間は六時間。

 その時の怒りの原因は、箸の使い方。


 あの時の経験はトラウマとなり、消してそこまでの怒りを溜めないようにしていたが、今回はそこまで溜めいる。


 「帰りたくないな……」


 また、深いため息が口から吐かれた。  

 苗木があるために帰らないという選択肢はない。

 一歩でも止まれば、足は空間と反対方向へと向くのが確実だからだ。

  拳を掲げて、奮起し力強く歩みを進めた。


 「おみあげ話で誤魔化してみるか……」


 しょうもない策を企てをぶつぶつと呟きながら歩んでいく。

 一歩踏み出した時、暗黒から煌めきを纏った風が一瞬にして身体を飲まれた。


 (相当、怒っているな……)


 風によって衣服の止め金具が壊れていくと各の袖口が無残に破られて服と呼べないもに変貌していく。

 値のはる衣服ではないが数年経ち身に馴染んで来た愛着があった。

 術に対応できるように出来ていない為に避けられない。

 唯の布切れと成りはれてしまい狭間の闇に溶けるようにして消え失せる。


 (あぁ……っ!)


 多少の肌寒さを感じるが、問題ないな――とした時に胸のうちが沈む。

 説教から逃れることは出来ないと覚悟し、目を開けると見慣れた面々が物を言いたげにこちらを見つめていた。




 歩みを遅くしたり早くしたりと忙しく動き回る淡く光る人影。


 (何にしてんの……?)


 人影の帰還に必要となる複雑な術式の陣を描くチョークが止まれる。

 小柄な青年は石柱を支えにし立ち上がりその様子を呆然と見つめた。

 いつもなら人影は一目散に帰還する。


 しかし、今回は違うようだ。

 その様子から迷っているように見えるのは一目瞭然。


 (きっと、理由は――)


 小柄な青年は、横目で傍らを見つめた。

 その理由と言える漆黒の美人は苛立ちで寄った眉間の皺は深くなり、組んだ両腕から見える指先は一定のリズムで動かしている。


 怒りが最大になるとやる美人の癖だ。


 「あやつ、逃げる気ではないだろうな……」


 「今逃げるなんて出来ないと思う」

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