怒らせると怖い
灯篭の明かりのようにぼんやりした光が狭間の闇を照らす空間。
古ぼけているはいるものの手入れされている為、風格は失っていない真っ白な城と抉り取られたような無残な大小の大地は無数の光の鎖で固定されている。
その空間にあった。
そここそが、狭間の伝説の地だった。
ゆらりと揺れながら輪郭がぼやけた帯状の光が無数が四方八方へと散り散りになっていく。
その様はまるで星空の流星群を視界に捉えた時、顔の血の気が引くのを実感した。
鏡を見れば、間違いなく青ざめている。
(やってしまった、また……)
手に持った鳥かごを落としそうになるが、耐えた。
サボっているわけではないが、押し付け形に毎回なっている。
自覚のないうちは聞き流せるが、自覚したためにそれでも今は出来ない。
「また行くこともしばらくはできないな、今度は」
鳥かごを眼差しを移した。
中身は、鳥ではなく空洞のある若い苗木。
その空洞には様々な光景が淡い光を放ちながら、浮遊している。
(……最近、界の乱れが多くなっているな)
気のせいだろうと初めは思っていたが、それは確信になっていく。
記憶が正しければ、同じような事をしたのは、数ヶ月前。
止めていた歩みを再開させて、空間を目指す。
「怒るだろうなぁ……」
はぁ――と深いため息を吐き、先ほどよりも歩みを遅くしてとぼとぼと歩いていく。
商人に扮するための服の裾がふわりと広がる。
(機嫌をとろうにも、あやつは私とは違うしな)
うーんと怒りに燃えて待ち構えているであろう半神を思い浮かべて頭を捻る。
真っ向から半神の怒りを受けると、説教が長いのだ。




