君は待っていた
逸る足 朝露に濡れた草を踏む音を響かせ
杜の静かを分け進んでいく 約束の場所で君は待っていた
降り注ぐ木漏れ日にはしゃぎ
小さな身体で日溜まりを追っていた暑い夏の昼
帰り道を見失い泣きじゃくる私に
恐る恐る近付き繋いだ心の手と手
不安で仕方ない私を君が導いてくれたから歩くことができた
寂しげな視線を感じた気がした果敢ない君に名を預けた夕暮れ
確かにその存在に触れ永遠の泡沫を理解した
また明日と告げ去り行く私を見送る長い影
変わらない姿のまま約束の場所で君は待っていた
何でも話したかった 語る私の隣で頷いてくれていた君は今
黄昏を覆う霧の中暗い帳の奥深くで
降り積もる雪の調べをひとり聴いているのでしょうか
静寂は君を包み寒さを和らげてくれるのでしょうか
逢う度に目線が追い付いていく私に君は優しく微笑むから
思いは募っていくばかりで肌を伝う切なさが痛い
逢いたい 君が傍にいない季節が私は苦しい 息が詰まる程
私だけを約束の場所で君は待っていた
風と遊んだ後の涼やかな夜の川辺 君の残響を抱き締め
迎えた朝の空に昇る金の瞳が気紛れに零す銀の雫
温かな哀しみに濡れる頬を拭ったら
眩しい夢は沈んでしまうのでしょうか それでも私は君を忘れない
温もりを知るまでの憐れな命 君は充たされた顔で
鎮まる魂の最期の言葉が私を大人にするから
柔らかな蛍火の輝く約束の場所で君を待っている
ずっと“愛しているよ”
『君を待っていた』とシリーズの作品です。




