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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
3章 クエスト攻略、逆攻略
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小規模交戦:密偵さん、名前なんだろ……

 現在時刻は17時ぐらい。

 昨日よりもずいぶん遅いが、ターシャさんのところに顔を出す。


 マップを確認すれば昨日解放したばかりの密偵さんが今日も仕事で張り付いている。懲りてないというか、プレゼントした装備品が理由で重要度がランクアップしたっぽい。そして新しいお仲間が10人ほど。昨日の子供たちに加えて、10人もの増員。おいおいおいおい。いくらなんでも増殖しすぎているだろ。スライムか貴様ら。


 こうなると、目を掻い潜ってというのは不可能に近い。

 半分を周辺の警戒に、残り半分を監視に使う事で死角をなくしているようだし。大規模魔法で誤魔化す方法もあるが、いくらなんでも怪しすぎる。こうなると本気で≪透明化≫(インビジビリティ)が欲しくなる。触媒さえあれば……っ!



 結論。ばれても構わないの精神が大事です。

 昨日できた伝手に仲介を依頼する事にした。



「こんにちは。奇遇ですね。こんなところで会うなんてビックリしました。今日はどんな御用でしょうか?」

「……っ、また貴様か……」


 昨日逃した密偵さん。その背後を取り、後頭部を握って振りむけないようにする。

 この人は物陰で単独行動をしていたので周囲から見られる心配は無い。

 ちなみに服装を切り替え、顔は隠している。


「昨日の今日だというのに、ずいぶん仕事熱心ですよね? もしかして、俺を待ってましたか? 19人も動員するとは、よほどアイテム集めにご執心の様ですね」


 少し低めの声で言う。そのついでに、頭を握る手に力を入れる。

 素直になってもらうために≪威圧≫を少し使ってプレッシャーを与える。

 一昨日の段階で強硬に事を進めたので、ゆっくりと態度を軟化させるべきなのだ。一昨日は精神をすりつぶす勢いで。昨日は脅迫で自白。ならば今日は少し脅す程度がきっとベスト。そのうち、普通に喋れるところまで仲良くなる事を目標にしよう。


 密偵さんは両手を上げ、降参のポーズ。少し震えているが、俺には交渉の余地があると信じているのだろう。怪しい動きを一切見せずに大人しくしている。


「その通りだ。なぁ、坊主。少しでいい、話をする時間を貰えないか? 俺の上司が――」

「却下」

「即答か……。上手くいけば大儲――」

「金に興味は無いよ。腐るほどあるし。1万年は遊んで暮らせる」


 つまらない事を言う密偵さんにダメ出しをする。

 1万年というのは控えめな数字だ。去年1年間で使った金貨は学費込みで210枚。100万年だって余裕なのだ。


「あの二人を保護したいんだろ? 俺たちも手伝う。それならどうだ?」

「その話、詳しく聞かせてもらえるかな?」

「もうやってる事だが、あの二人にちょっかいをかけようっていうゴロツキどもを、俺たちは排除している。それを、継続してやろうっていうんだ。お前がどれほど強いかは知らないが、四六時中一緒ってわけじゃないし、俺たちに出番がある程度に甘い。こっちは人を、労力を出す。お前は俺たちの為に時間を少し割く。悪い取引じゃないはずだ」


 密偵さんの後頭部から手を離す。

 言っている事には、確かに俺の利益がある。それに、すでに手を出そうとした奴らがいて、こいつらの利益のためとはいえターシャさん達を守っていた事実。もしかすると嘘かもしれないが、一考に値するのは認めるべきだろう。


「いい提案だけど、今日はダメだ。明日なら、時間を作れる。昼前にここで待ち合わせ。呑めるか?」


 相手の要求を僅かに突っぱね、こちらが上だというアピール。

 平民が時間を指定し、公爵様の部下に合わせる様に言うのは不敬だと喚くか。それとも、こちらの「この程度の」要求を呑んで懐の深さを見せつけるか。


 結果を予想するのも馬鹿らしい提案に、密偵さんは肯く。

 ここで肯いたところで、実際に上司が待機している訳でもないだろう。呼び出して慌ただしく準備して会見するより、時間を使って万全の準備をして迎え撃つ(・・・・)方が有利なのだから。

 この場合、俺は我儘で相手の都合を考えないと見るか、たんに主導権を握る為に言いだしたと見るか、俺が相手へ準備時間を与える為に提案したと見るか。

 単に考え無しと見られる事は無いだろうから、基本は2択。どちらの評価をするかは、たぶん4:6ぐらいだろうね。外見で人を判断する事は無いだろうから。



「じゃ、今日は全員撤収。オーケー?」

「分かってる。また、明日な」


 最期に密偵さんと短く言葉を交わし、この場は別れる。

 あ、名前聞けばよかったな。

密偵さんは、永遠に密偵さんです。


読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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