事前準備:ニートだけでは恋愛ゲームをできない
俺の名前はアルヴィース。
女性を口説く事を使命とする、11歳の亜神である。
……自分で言ってて悲しくなってくるな、これ。
俺には運命の女神から出されたクエストがある。
『未来のヴィジョンを共有しよう』
細かい事は分からないが、1ヶ月以内に知り合いの女の子を口説けという事だと思う。
とんでもない無茶を言ってくれる女神である。
実精神年齢28歳ではあるが、正直、今までまともに異性と話した事はない。
ゲームでは多少話をする事があったが、ゲーム内だけにゲームの話があったので、その時は何とかなった。しかし、その手は使えず何を話せばいいかなんて全く分からない。
現在領主さまのお屋敷にて女性兵士の皆さま方と一緒に暮らす幸運に恵まれはしたものの、それだけでまともに話せるなら現実世界で引きこもりのニートなんてやっていない。
話題以前に、会いに行くの理由が見当たらないヒロインもいる。
顔見知りレベルならともかく、1年前に一言二言話しただけの相手が「将来の夢を手伝う」なんて言って会いに行けば相当ひどい扱いを受けることが予想される。
うん、俺に恋愛ゲームなんて、イジメでしかないな。
愚痴を言い終えたところでやるべき事を考えよう。
不本意であっても自分がやると決めたんだ。全力で取り組もう。
当面の目標は
「ミューゼルと話を出来る関係になる」
「レミットさんの様子を窺う」
「迦月の信頼を得る」
「リアとの行為に同意できる覚悟を手に入れる」
となる。
最後のは最終日まで保留するとして、ミューゼルが難問である。
女の子と知り合う――再会する?――にはどうすればいいのか。いっぺん親御さんに頼んだら自分でやれって追い返されたし。
ある意味一番時間がかかりそうな相手だし、まずここから片付けるべきだろう。
方針が決まれば、自分に出来る事を考える。
まず、自然に話しかける事が出来るシチュエーションを作りたい。
いつぞやの誰かのように、襲われているところを助けるなんて滅多にないし狙ってやる事じゃない。
よくあるというか、精神的に負荷の少ない王道シチュエーションと言えば引っ越しや転校などの「同じグループに所属する」方法だ。
すでに同じ学園に所属してはいるものの、授業変更を待ったら時間が足りなくなるので現実的じゃない。
商会でバイトというのも考えたが、ミューゼルと話をする時間をあまり取れないし、同じ日に働けるかなんて分からない。この日の人手は足りているから、などと他の日に回されることもあるしね。雇ってもらうためのコネはあるが、人事まで口出しできないだろう。
他の方法だと、ミューゼルが料理屋を開きたいという情報を利用する。
腕のいい料理人に直接弟子入り出来るとか言われたら付いて来てくれるだろうか? あからさまに怪しいから難しいかな?
そうでなければ、俺が有名になって――無いか。俺が人から注目を浴びれない段階で無理だな。
いや。昔考えたみたいに、俺は厨房に引きこもって接客を人任せにすれば――って、その場合はミューゼルと接触するのが難しくなるか。ままならないな。
ミューゼルが昼飯を食っている場所次第だが、そこに乱入するっていう方法があるか。直接話しかけるのではなく、近くでいい匂いのする美味しそうな弁当でも食べれば話しかけてもらえないかな? 我ながら消極的すぎる。
いくら考えてもらちが明かないな。
こういう内容を相談できるのって、誰だろう?
フィリスか、それともマリィさんか? それとも女性兵士の誰かを頼るか……。教官やお義父さんに聞いてもたぶんいい返事は来ないだろうし、頼れそうな大人の女性は、というと…………。
「コイバナ!? コイバナなのね!? そういう話なら大歓迎よ!」
「青春ね~。若いわ~」
ボロいアパートに楽しそうな女性の声が響き渡る。
ここはセイレン東区にあるスラム一歩手前のエリア、とある特殊な商売をしている女性が集まるアパートだ。
俺が考えたどり着いた協力者とは、夜の蝶。この間知り合ったシエルさん他の世話をしていた水商売のお姉さま方である。
男のあしらいに長け、手玉に取る女性たちなら、こういった話を面白おかしく聞きながらも効果的なアドバイスをしてくれるのではないか。そんな期待を俺はしている。
「状況は分かったわ。私たちも一緒に考えてアゲルから頑張りましょう!!」
「そーそー。おねーさまに任せなさい~」
協力者は2名。
テンションの高いターシャさんと語尾の伸びるキーリさんだ。
二人とも恋愛話が好きらしく、快く協力を約束してくれた。
どちらも赤銅色の肌に黒髪で、南国の出であることが分かる。背が高く胸が大きく、くびれるところはしっかり細い、モデル体型の二人だ。
シエル・ノエルのような双子ではないがよく似た雰囲気を纏っている。仕事上、わざと似せているらしい。
どちらも出産経験ありで、小さなお子さんがいたりする。
子供たちは、前はシエルさん達が面倒を見ていたのだが、今は俺が雇った人が相手をしている。
「まずは服を見繕わなくちゃね!」
「第一印象は大事よ~」
会話できる状況よりも、まず服装で駄目出しを喰らった。
えー?
「服装には気を使わなくちゃ駄目! 女の子が「いくら気にしてないよ」って言ってもただの建て前なんだから! 話せるシチュエーションになった時、いい印象を与える服とそうでない服なら、いい印象を与える服の方が少ない時間で仲良くなれるの。甘く見ちゃ、絶対に駄目!!」
「こーゆーのは~、普段からの習慣が大事なの~。今から覚えちゃいましょうね~」
「分かったら着替えタイムよ! ああ、どれから試そうかしら?」
「まずは攻めてみる~?」
「私は無難なところから切り込むわね」
「なにかいい小物が無かったかしら~」
俺の反応を見て余計にやる気を出した女性二人。
その後、最初に着せられた服の何かが琴線に触れたらしく、二人が仕事の時間になるまで延々とファッションショーをやる事になった。
おかげで私服のパターンが10種類以上出来たけど、精神的に限界まで追い込まれた。
どうしてこうなった?
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