クエスト:囚われのヒロイン?を救出せよ②
今回はR15です。
「助けていただき感謝します、御使い様。妾は白楼族・族長イグゾートの娘、セレスティアと申します」
助けた幼女は幼い姿からは想像しにくいほど丁寧に頭を下げた。
でも今の発言には、ツッコミが必要だ。
「御使い様って何? 俺、ただの人間だよ」
「異なことをおっしゃいます、御使い様。貴方様がただの人間でないことは一目見て分かりました。その内に秘めたる神気は人の身に収まるものでは御座いません」
あー。そういや山の獣共もひれ伏してたっけ。巫女さんだとやっぱそういうの、判るんだろうね。
種族・亜神は現在も有効です。種族変更、ダウングレードは出来ないんだよ。今は条件を満たしてないから、アップグレードもできないけど。
「とりあえず、ただの人間ってことにしておいて。面倒なことはしたくないし」
と、ここで頭を下げたままのセレスティアの肩が少し動いた。
ああ、偉い人の娘が単独行動してる訳はないよね。つまり、護衛がいて、そいつらが裏切ったか捕まったかしたから、それをどうにかして欲しい、ってトコかな?
とりあえず手伝いが必要かを聞いてみる。
「ご慧眼、感服しました。妾の護衛8名が彼奴らに捕まっております。御使い様の手を煩わせる事、申し訳「最初から助けるつもりだったからそれ以上は言わなくていいよ」
助けて欲しいというのだけ確認できたから言葉は途中で打ち切る。丁寧な喋り方というのは回りくどいので時間がかかる。
助ける以上、最後まで面倒を見る必要があるっていうのが俺の考えだ。ただ、本当に最後までだと時間がかかるから細かいことはその護衛さんに丸投げしたいという打算も働いている。
それに子供なんだから助けたいって気持ちが強いのが一番の理由。俺は紳士ではないが、それぐらいの良心はある。
彼女らが襲われたのは昨日の夜で、時間経過を考えるとわりと非道いことになっているのが予想される。ちょっと気分が重くなった。
あとは、なんか緑マーカー11と護衛さんの数に誤差があるけど、そこは今気にしてもしょうがないので次の人を助けに動くことにした。
中略。
半日以上が経過して夜になった。
途中、お腹のすいたセレスティアにご飯をおごったり、女の子に絡んでいる男共を瞬殺したり、助けた人を孤児院に連れていったり、何回襲撃をかけても追加される赤マーカーと緑マーカーに翻弄されたりしたが、未だに護衛さんらは見つからない。
緑マーカー、30以上助けているけど、本命が見つからないってどういうことだろう。追加分が多過ぎると言いたい。
ようやく見つけたときには、わりと間に合ってない状況で、涙が出そうだよ。
知って気分が悪くなることは間違いないので、セレスティアは魔法で眠らせておく。眠らせる前から気絶していた気もするけど、眠らせておく。
こっちには見張りがいなかったのでそのまま中を窺う。
予想通り、お楽しみの最中だ。無事?な5人を含めて全員若い獣人女性。セレスティアと同じ耳をしているので、同族だろう。
5人は芋虫のように縛られ、転がされている。
被害者3人は押さえつけられ、口を塞がれ、見ているだけで気分が悪くなってきた。なので一気に終わらせる。
隠れたまま本日大活躍の≪範囲拡大・眠りの霧≫の発動待機を解除してまとめて眠らせる。獣耳の女性3人を他5人の近くに運び男共に≪範囲拘束≫。追加で≪無限の悪夢≫を使い、そのまま衰弱死させるつもりで永遠に眠らせる。
あとは仲間がここに来た時のために、一個ぐらいトラップを仕掛けておく。
馬鹿共に対する対応はそれ以上必要ないので、メインである護衛一同の処理をはじめよう。
最初に怪我を≪範囲回復≫で治す。重傷者はいないので、通常の回復魔法で事足りるようだ。骨折とかまで回復魔法で治せるかはわからないので、今度、人体実験でもするかな?
汚されているのをそのままにする訳にはいかないので、襲われていた3人、まずは全身隅々まで(子供には言えないところも)綺麗にする。臭いとかの問題もあるので、手持ちの香木を使って誤魔化しておく。
最後に服を水で洗い、着せておく。ついでに残り5人も襲われなかったかを確認する。……役得とか、そんなことを言われそうな方法で。
眼福というか、やるべきことも終われば場所移動。下衆共の近くではせっかくの頑張りも効果半減になる。
セレスティアは抱きかかえ、護衛には≪浮遊≫をかけて、あとは自分たちをまとめて≪暗闇の膜≫で周囲から見えないようにして移動開始。近くの空部屋に寝かせてからまとめて≪眠りの霧≫を解除する。ちなみに≪眠りの霧≫の眠りは叩き起すことも可能だが、普通に魔法解除もできる。
まとめて全員を起こしたのだが、すぐに状況を把握したセレスティアと違い護衛の7人は状況の変化に戸惑っている。最後の一人は、目を覚ましたはずなんだけど先程までの状況が状況だけに自分の体を抱きしめながらガクブルしている。効果があるかわからないけど、≪精神安定≫の出番かもしれない。
とりあえず放り出して大丈夫かだけ確認すればいいんだから、一言声をかけてもう立ち去っていいかな、などと考えてみる。
今回は最後まで面倒を見るって決めていたけど、その「最後」ってどれぐらいかまともに決めていなかったのが悔やまれる。実行犯は叩き潰したけど、黒幕も多分いるだろうし。
色々と考えながら無言でじっとしていると、護衛さんらの一人がこっちを探るような目付きで見ていたのに気がついた。
目付きから察するに「こいつは何者なんだろう?」って所かなぁ?
だが教えるつもりはない。
≪仮面≫を被ったまま、次の方針を考え込んでいた。
……家でマードックさんが待っていることにも気がつかずに。
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