そして俺はニートに戻る
シエルの提案を聞いて、一つの結論が自分の中にあると気が付いた。
だから、シエルに言う。
「ありがとう。そこまで気にかけてくれて嬉しいよ」
ここまで笑顔で言って、
「だけど却下」
きっぱり断った。
「あれ? 今、すごく綺麗な流れでしたよね? え? ここで断るんですか!?」
「当然!」
「そんなすごくいい笑顔で言わないでください! 釈明、釈明を求めます!!」
申し出を断られてシエルは混乱している。
「最初に言った通り、恩着せがましく何かしてほしいとか考えてないし? それに安全の問題がある」
「……あ」
俺はセイレンにいるつもりだ。だがシエル・ノエル姉妹がセイレンにい続けるならば、また何かあるかもしれない。
この姉妹はアルビノで双子というとても目立つ容姿だから、街にいればきっとすぐにバレるだろう。バレたらまた何かある。そんな危険を冒したくないので、妹さんのリハビリが終わってもこの街に戻す心算は無い。どこか適当な村か何かに移住でもしてもらおうかと思っている。
最低でも、狙っていた誰かをどうにかするまで二人にとってセイレンは死地でしかないのだ。
そして、一つ思い出した事がある。
視線恐怖症。
これを、克服したい。
ペナルティメーカーに頼ったままではいたくない。
こんなのが夢とか言ったら怒られるかもしれないが、きっと長い時間を必要とする俺の目標。
いつか、大勢の前で何か一つ成し遂げる。
それがきっと、みんなと一緒の未来を見るのに必要なのだ。
理由を聞いて、シエルはすごく落ち込み俯いた。
今後、また会えなければ恩を返すも何もない。
こちらとしても意地悪をしたい訳ではない。背伸びして頭を撫でて、慰めてみる。
「……分かりました」
シエルが俯いたまま、言う。
「でしたら、今支払えるものだけでもお渡しします」
はい?
何か、悪寒が?
シエルから、何か不穏な気配が漂う。
「大丈夫です。初めてですけど、周りのみんなからやり方は聞いています。なんとかなります。いえ、なんとかします」
だから大丈夫、とシエルは言うと顔をあげた。
表情は無く、白い頬を赤く染め、瞳に決意と覚悟を秘め、友に救援を要求する。
ルリエは「どんな貴族令嬢だったんだ!」と言いたくなるくらい綺麗な動作で俺の背後をとり、拘束する。左手で腕をひねられ、右腕で首を極められた。身長差があまりないので俺は中腰になってしまう。
力を込めて逃げようとするが、ルリエは何気にレベルが高く、おそらく全力で抵抗しないと抜け出せない。だがこんな理由で女性を傷つける事は本意でないので、拘束から抜け出せずにいる。素のステは俺の方が高いのだが、拘束中だとある程度以上差がないと抜け出せないのだ。
「ルリエちゃん、参加します?」
「んー? わたしはパスかな?」
「分かりました。ではそのまま押さえつけていてください。脱がせます」
「ちょっと待てぇ! 子供に手を出すなよ二人とも! 待て! 話し合おう!!」
「……大丈夫です。きっと気持ちいい事ですから」
「ごめんねー? わたしも興味あって。まぁでも、普通ならお金を払ってする事だし? きっといい経験になるよ!」
ルリエはすごく楽しそうに言う。
いかん! このままでは貞操のピンチだ!
咄嗟に二人を眠らせるべく≪眠りの霧≫を使おうとするが、不発。
――ここでヒロインスキルかよ!?
逃れ得ぬ未来に戦慄する。
ズボンが中途半端に脱がされ、拘束具と化す。装備変更も、出来ない。
詰んだ、と思ったが最後の奇跡を信じ、必死になって言う。
「待て、分かった! 全ての黒幕を探して潰す! この街に戻って来れるようにする! だから、待て!!」
降伏宣言はパンツに手がかけられた段階で効果を発揮した。
膝をつき、下半身の最後の1枚を脱がそうとしたシエルの手が止まった。
ほっと一息つくが、シエルの視線は最終防衛ラインで固定されている。
「これは鎮めなくていいの?」
「頼むから勘弁してください……」
状況もわきまえず、背中に押し付けらる柔らかい感触にごく一部が元気になったのはしょうがないと思う。
もう、泣いていいよね?
服を整えた俺は、最後の一線が守られたという安堵と、男の尊厳を辱められた事に、心から泣いた。
漢の、涙だった。
ノエルのリハビリで2カ月使うように言い渡し、終わったら迎えに来る事にした。ついでにその時までにセイレンの掃除を済ませる事を約束する。
その後、3人を隠れ家まで送るのに往復で1週間、フィリス、マリィ、兵士一同、リア、迦月、メイド二人、レミットさん、ウォレスら皆の手を借り掃除に1週間を使った。一部メンバーからちょっと質問されたけど、みんな協力してくれた。
結果としてとある男爵が行方不明になったけど、どうでもいので経過については割愛する。
クエスト終了まで残り2週間。
いまだ開放されない『???』を含め、ほぼ手付かず。前途多難だ。
だが、このクエストを自分で一回やると決めた以上、投げ出す気はない。
しばらく学校に行かないが、そこは諦めよう。
俺の反撃は、ここから始まる。
2章終了。
本来は休学しただけだしニートとは言わないないのですが、拡大解釈という事で。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。




