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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
2章 学園生活1年目、将来の夢
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望むものは……②

 俺はミューゼルに会うために、マードックさん経由でウォレスさんに仲介を頼む事にした。

 ウォレスさんは俺が戦うところを見た事があるから、多少は事情を話しても問題ないという判断だ。

 朝から会いに行って、最初に多少の雑談をしながらミューゼルについて聞き、その後にクエストの話をしてみた。

 その結果はこうである。


「却下だ。俺は協力しねぇ」

「なぜに!?」


 ウォレスさんはミューゼルへの橋渡しを断った。これにはかなり驚いた。

 細かい事は横に置き、ミューゼル自身への長期的な支援を含む内容なので、ウォレスさんが断るとは思っていなかったのだ。

 ミューゼルは自分の料理を出す店を持ちたいと言う。

 正直、資金援助であれば俺ほど頼りになる人間はいないと断言できる。もちろん、手助けの領域を超えてしまえば俺の援助に依存してしまう可能性もあるが、間にウォレスさんのように良識ある大人を置く事でそれは回避できる。

 あとはミューゼル自身の料理の腕次第であり、細かい事をいえば俺はそちらの指導もできるので、俺の手助けは大きな(・・・)礎になると確信している。


「お前の助けがあればミューゼルの夢が確実に(・・・)かなう。だからテメェの助けはいらねぇ。冒険者に例えりゃ、採取依頼の品を他の奴からもらって依頼人に渡すだけの仕事みてぇなもんだ。苦労に価値がある(・・・・・・・・)。後はその軽そうな頭で考えろ」

「……」


 言いたいことが分からない訳ではない。

 ゲームでチートをすればゲーム本来の面白さ、達成感は無くなるだろう。人によってはわざわざ課金やチートで難易度を上げて(・・・)縛りプレイを楽しむ人もいる。


 助け方を間違ってはいけない。

 自分の目的のために、人の心を無視してはいけない。

 これは前回、迦月との関わりで学んだことである。

 だとすると、このクエストの意味がわからない。

 能力(スキル)と財力、どちらも俺の一部だ。これを無視して、わざと制限ありの状態で助ければいいのか?


 ミューゼルの夢を助けると言うのであれば、資金提供や技術伝達のどちらか程度でもかまわないと俺は思った。だがそれは駄目だと言われた気がする。

 他にやることと言えば食材調達や店の宣伝、資産運用などの、経営方面だ。しかし、推測推論だが、これを提案してもウォレスさんは断ると感じた。

 ともに苦労を分かち合うには仲間になる(パーティを組む)事が一番なんだけど、そこに至るにはどうすればいいのかが全く分からない。今の拒絶ぐあいから考えれば「もう関わるな」と言われたようなものだし。



 途方にくれ、どうすればいいか分らなくなった。

 こんな状態でレミットさんに会っても話し合いは上手くいかないだろう。

 今日は授業が無い。タントリス教官はお休みで捕まらない。

 マードックさんはウォレスさんへ繋いでもらったにも拘らずこの体たらくなので、合わせる顔が無い。

 ……フィリスはなぁ。クエストから省かれた事について説明できないし。俺が決めた事じゃないからな。なんか、この件で会うのが怖い。


 考えがぐるぐると頭を廻っていると、ふと昨日思いついた「普段なら絶対やらない事」を思い出した。



 場所は変わって娼館のあるエリア。

 1階は綺麗なおねーちゃんが身体をすり寄せながらお酒の相手をしてくれる、キャバクラ的な場所になっている。2階はもちろん休憩所になっている。キャバクラや休憩所など、日本にいたころは一度も行った事が無いので初体験である。


 昼間からでもやっているらしく、いくつかの店からは楽しそうな笑い声が聞こえる。その中でも特に活気のある店があったのでそこに入ろうとする。


「おいおい坊主、ここはお前みたいな年で入るとこじゃねーぞ。って、おぉ? なんでもねぇ、入りな」


 入口で門番をしている若い男に声をかけられるが、金貨1枚を取り出し、無言でそれを押しつけて黙らせる。

 店内は綺麗で煌びやかな内装。採光窓と魔道具(ランプ)で明りを確保しているが、全体的に薄暗い。いくつか衝立(ついたて)があり、声で客がいるのは分かるのだが、姿が見えず声も変質しているようで誰がいるかは普通は分からないようになっている。

 店内は店内で用心棒らしきかなり強そうなおっさんと、この店を期待させる役割をもつであろう、今まで見てきた美女美少女の中でもトップランクの儚げな美少女が待機していた。美少女は推定15歳、白髪に赤い目が特徴の白子(アルビノ)で、線の細い体に薄手のドレスを着ていた。

 おっさんとは言ったが、上品な執事の恰好をしているので執事さんでいいか。その執事さんからつまらない話を聞かされる。


「お客様、当店はセイレンでも屈指の美女を取りそろえた最高級の――」


 この店は高いから小金持ち程度では入れませんよ、という意味の話だ。

 ドレスコードか何かかな、と当たりを付けて手持ち装備の中から一番豪奢に見える布装備に≪装備変更≫する。ついでに、10指すべてに指輪を装備し、竜神珠をあしらった首飾りも追加する。トータル100億Gオーバーの最高装備の一つだ。


 突然装備を変えた俺に驚いた二人を睨み、無言で催促する。さっさと席に案内しろ、と。

 視線の意味に気が付いたのだろう、おっさんは慌てて俺を席に案内する。立場から金持ちは見慣れていて、ある程度強いから俺の装備にどんな意味があるのか理解出来てしまったのだろう。青ざめているのが分かる。


 案内されたのは個室で、豪華ではないが品の良い調度品に大きな大理石のテーブルと4人まで座れそうなソファーが一つ。俺はソファーの真ん中に座る。

 部屋には僅かに心を落ち着ける効果のある香が焚かれており、ささくれだった俺の心を落ち着けてくれた。

 それに付いてきた美少女はそのまま俺の左隣に座る。肩と肩が触れ合うほどの至近距離に。


「シア、と申します。以後、よしなに」


 美少女――シアは名乗ると俺の方に躰を預けてきた。

 そのあと、さっきのおっさんではなく別の美少女がドリンクを持ってきた。≪鑑定≫するとかなり値段の高いお酒――適正価格は1瓶金貨100枚かな?――と、アルコールの入っていない普通のドリンク。

 新しい美少女は飲み物をテーブルに置くとシアと同じように俺の右隣に座った。


「私はルナよ。シア共々よろしくね」


 こちらも名乗ると躰を押しつけてきた。シアがそっと触れる様に躰を寄せるのに対し、ルナはより積極的に絡ませるように体重を預ける。

 ルナの恰好はミニスカメイドと言えば分かりやすいか。身長は平均より低くて俺より少し高いという程度だが、胸元が大きく開いている服に見合う発育をしている。長い赤髪をポニーテールにしている。推定年齢はやはり15歳。


 どこか荒れた心のまま何か言う気にはなれず、目の前の飲み物を飲もうとグラスを手にすれば、いつの間にかシアがなみなみとお酒を注いでいた。

 俺の体はアルコールに弱いが、ちょっと自己再生魔法を使えば耐えられる事が実験で分かっている。≪自動回復≫(リジェネ)効果のあるものを装備しているから今は大丈夫。そこまで考え、ゆっくりと酒を飲む。


 美味い。


 部屋の香、人の体温、美味い酒。

 これだけの助けを借りて、ようやく人心地付く。


「俺はアルヴィース。貴族でも何でもない、ただのアルヴィースだ。だからアルでいい。敬称もいらない」


 ようやく俺も名乗り、全身から力を抜く。

 柔らかいソファーに体が沈む。そうすると、俺に体を寄せる二人の美少女が俺の方に深く引き寄せられた。

 それを当然のように受け入れ先ほどよりは強く、それでも最初のルナほどにならないように体重を預けるシア。これ幸いと正面から抱きつくルナ。アルコールだけではなく、女の子特有の柔らかさと甘い香りにクラクラしているのを自覚する。


 二人はスキンシップを厭わないが何も言わない。接客業だけにこちらの心情とその対策は万全のようだ。荒れた心が落ち着こうと、すぐに何か喋りたい気分にはなれない。

 しばらくの間、酒を呑みながらただ静かにしていた。




 酒を1瓶飲み干し、追加を注文する。ついでに、何か摘まむ物を持ってきてほしいと頼む。

 チップ代わりに金貨100枚相当の大きめの宝石を一つ取りだし、給仕に戻るルナに渡す。

 二人きりになれば、なんとなくでシアを抱き寄せその薄い胸に顔をうずめる。おでこに柔らかい感触があるけど、AA(ちっぱい)だね。いやそれはいいんだけど。




 アルコールの助けがあっても、これが限界。

 そうやって顔を見せないようにして、俺はここ最近の失敗談をシアに語りだした。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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