運命の女神②
よく分からないクエストを貰っても、対処しようがない。
クエストは例のごとく受注済みだが期間は無期限となっている。
細かい事どころか大雑把なことすら理解できないので、無視する。
現在地はダンジョン内部なので、雑魚の相手をしつつボスの再登場待ちをしている最中だ。
本日5回目のボス戦で、出てくる予定のボスは吸血女王か悪魔王。
多数の取り巻きを従えているので広範囲殲滅用の大技を発動待機して待つ。
前回のボス戦終了から1時間経過。
帰還用のと次の階層に行くためのゲートが消える。
すると、部屋を埋め尽くすほど大きな召喚魔法陣が描かれ――今まで見たことの無い奴が出てきた。
そいつが出てきた瞬間、圧倒的な威圧感に俺が気圧された。
アラスティアと同格の威圧感。ヤバいと思った瞬間、俺は発動待機解除≪神聖なる剣≫を放った。
しかしこの魔法は完全に無効化される。
天井を埋め尽くす光の剣たち。本来多数に向けられるはずのそれは、たった一体の何かに向かって輝く軌跡を残し、飛翔する。剣はどれもが同時に動くのではなく、術者である俺の意志も関係なくランダムに最大5秒の差を付けて攻撃を開始する。つまり、全方位攻撃を一定時間ではあるが行い続けるはずだった。
それを身に纏う羽衣を一振りするだけで、すべて砕いた。
最初の1本が触れる前にくるりと身体を回転させ、直接触れていないはずの光の剣まで羽衣から出た何かで砕いていった。
先ほど、アラスティアと同格と考えたがとんでもない。アラスティアですらそこまで無茶な防御はできない。
つまり、ゲーム時代を含めて単独最強の悪夢だということ。パーティどころか1クランでは対応不可能な、複数クランによる戦いを想定した『レイド級ボス』と同等の戦力を保有している可能性すらある。
詰んだ。
俺はここで死ぬ。
さすがにこれは想定の範囲外だった。
きっと極々低確率で出現するレアボスなのかもしれない。何度も挑んでいたために行動パターンが決まってしまい、効率を重視した結果がこれだ。
10回20回のボス戦では検証したと言えなかったのだ。それなのに油断して、パターンを決めつけ、失敗する。
この世界がゲーム同様の死に戻りを許してくれるわけではないのに、ゲームと同じ感覚に戻りすぎていたようだ。
半ば諦めが全身を支配し、戦おうという気力がなくなる。
そんな中でも最期の相手の姿を目に焼き付けようと観察をする。
見た目は人間の女性。
髪は栗色のベリーショートで瞳も同色。肌は雪のように白い。年はおよそ20歳前、勝気というか気の強そうな女に見える。
服装はギリシャ神話の女神が来ていそうな白い布を身体に巻いた感じの奴で、たしかキトンかヒマティオンとか言ったはず。それに羽衣みたいなのを追加で装備している訳だが、あの羽衣は武器か盾扱いの装備なのかね?
服装その他からいえばあれはどこかの女神で、かなり強いと証明されている。アテナとかは見た事あるけど、他にギリシャ神話で戦える女神っていたか? ギリシャっぽい恰好だけど、ゲーム内のオリジナル神って可能性の方がありうるか?
動けずただ女神(?)を見ていると、女神(?)が俺を視界にとらえ、ものすごい勢いでこちらに走ってきた。
そして床を蹴り宙に舞う女神(?)。
その膝が茫然としていた俺の顎を捉え、意識をギリギリ失わないレベルのダメージを与える。いや、一瞬意識を失ったと思うのだが、そのまま空中にいる女神(?)に髪を掴まれ強制的に覚醒させられた。
勿論そんな事をされれば着地の勢いでめちゃくちゃに髪を引っ張られる。それでかなり髪が抜けたようで、頭皮がかなり痛い。
顎と頭皮の痛みに涙目で打ち震えていると、今度は胸倉を掴まれた。身長は相手が160cmぐらいで今の俺より+20cmである。傍から見れば、女子高生か女子大生にいじめられる男子小学生の図。
そのまま締めあげられ、第一声を至近距離で聞く事になった。
「ようやく、ようやくアンタをこの手で殴れる! アタシの! この2ヶ月間の苦労を思い知りなさい!!」
殴れるとか言いつつ、足を踏んでからの膝蹴り連発。身長差ゆえ、腹や胸に何度も何度も攻撃される。先ほどの蹴りも含めて手加減されているのか、大したダメージは無いがとにかく痛い。
「ちょ、ま、待ってくれ!」
なんとかそれだけ言うと、相手は多少落ち着いたのか、俺を開放してくれた。
「ふー。言いたい事はたくさんあるけど、まずは名乗らせてもらうわ。あたしは運命の女神。この世界の管理神の1柱よ!」
読んでいただきありがとうございます。
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7月17日 1:09 誤字修正
×女子高生迦女子大生にいじめられる →
○女子高生か女子大生にいじめられる




