決闘:人はそれをイジメという
「≪金剛石の投槍≫×2!!」
コインが宙に舞った段階で俺は魔法を放つ。
目標はマップ上にあった赤点二つ。場所は建物の影だったけど、貫通力の高いジャベリン系の魔法の中でも一番の貫通力を誇る≪金剛石の投槍≫を使ったので最大威力そのままで命中した。
当然のように赤点は灰色になって消滅する。
ちなみにタゲをとってから撃ったので、目標を貫通したらジャベリンは消えます。よって相手が隠れていた建物以外に被害はありません。
俺がいきなり魔法を撃った事で全員ざわめきだす。あ、ティアとリアは平常運転だ。
驚いているフィリスに口パクで「のぞき」と伝えると、フィリスは近くにいた兵士に状況を確認するよう指示を出した。ちゃんと伝わったようで重畳である。
迦月の目の前でやったのは、半分は威圧の追加なのだが、やりすぎたか?
「仕切り直し。する?」
「う、うむ」
「リア、頼むね」
「ん」
リアがコイン片手に確認をとる。
俺とリアは、一呼吸で使った魔法にドン引きした迦月の心情をあえて無視して決闘を再開する。
マップ上に赤点追加は来ない。
安心してワンドを迦月に向ける。
宙を舞うコイン。
それが地面に落ちると――
迦月の足元が爆発し、迦月と言う名の星になった。
星になったというのは冗談だが、5mほど上に吹っ飛ばされて地面に叩きつけられたら普通に死ねるよね。
やったのは火の上級精霊魔法≪最大強化・大爆発≫で、迦月の足元より10cmほど下に使っただけだが。なんだか普通に使うより威力が高かった様子。
スキルで≪手加減≫したんだけど、爆発ダメージによる即死は防いでも落下ダメージまでは考慮されないようで、ものの見事に一撃で終わってしまった。
迦月ってスピード最優先の成長方針みたいだし、HPは低かったにしてもなかなか酷い。もともとゲーム時代から高レベルの戦闘は油断したら即死アリだったけど。
リアは当然の結果と無表情。ティアは迦月の戦闘能力について知らないようだし、俺が強いのは知っているからこの結果は必定と思ってくれたようだ。フィリスとマリィは俺がもうちょっと手加減するだろうと思っていたようで、この結果は悪い意味で予想の範囲外だったようだ。俺も手加減をミスるとは思ってなかったし。女兵士一同はすごく微妙な顔をしていた。リアとは別の意味で予想通りだったんだろうね。訓練を見てあげた事もあるし。
そして迦月お付きのメイド二人は顔面蒼白、茫然自失。このままにした場合、落ち着いてから俺の命を狙うパターンになりそうだ。
「消えゆく魂、輪廻の環より今一度還れ≪死者復活≫、傷つきたおれたる者、この光によりその身を癒せ≪蘇生≫」
完全に死ぬ前に、いつものコンボで復活させる。
迦月はその場で復帰し、俺から距離をとった。傷ついた獣のような反応速度である。
レミットさんは復活してもすぐに目を覚まさなかったけど……死からの覚醒ってどんな条件があるのかね?
どうでもいい事に思考を費やしているけど、一番の問題は決闘が終わったかどうかである。
横を見たらサムズアップ続行を許可する審判がいた。
正面を見れば一回死んだのに戦闘意欲を失わない迦月。
ちょっとした手違いはあったものの、決闘は続くようで安心した。
今度は小手調べと言うか、初級精霊魔法の超連打で封殺することにした。
初級精霊魔法のなかには各属性ごとの≪~~弾≫という、最初から使える攻撃魔法がある。それをひたすら撃つ。
イメージは弾幕ゲーム。ただし俺から半径5mに安地は無い。その代り即死無し、たぶん20発でゲームオーバーする。当たり所によってはその限りで無いけど。
ただひたすらに撃ち続ける。消費が小さく自然回復もあるので秒間5発なら8000発は撃てる。終わる前にMP切れなど無い。
迦月は必死に近寄ろうとするが、近くなったら弾幕の密度が上昇するのですぐに離脱する。迦月が安定して回避するには15m。10mでは5発に1発は被弾し、それ以上踏み込めない。
そして迦月は焦りだす。踏み込めなければ勝てない。だから無理をして何発も被弾し、後方に下がり戦技で傷を癒しつつ回避に専念する。このままいけばスタミナ切れで回復手段を失い負けが確定する。投擲武器を使った遠距離での撃ち合いだとこちらに勝てないのですでに手がないようだ。
MP切れを狙うかもうちょっとこちらを観察して打開策を考えるべきなのだが、迦月が焦るのには訳がある。俺は撃った魔法が周囲に被害を出さないよう、ある程度進んだところで地面に落ちる様にしているからだ。迦月にしてみれば、いつ下ではなく自分の方へ魔法を曲げられるか分からないのだ。それをされる前に勝たなくては、と考えたのはしょうがないだろう。
全力全開と言いつつ余力を持って獲物をいたぶる猫のような真似をするのには訳があるのだが、失敗しない事を祈ろう。
迦月の心が折れて、ギブアップしたのは試合開始から8分の事だった。
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