決闘:カウントダウン
夜襲とか勘弁してほしい。
先刻、迦月との決闘が決まったのでその準備を終えて就寝。翌朝まで安眠するつもりだった。
しかし、深夜2時か3時ぐらいに厭な感じがしたので目が覚めた。
眠い目をこすりながら訓練場まで移動する。
マップには赤点5つ。学習しているようだけど、それでも勉強量が足りなかったらしい。質はまだ確認してないんだけどさ、推定無傷で殲滅させられたんだから少なくとも桁を上げろと言いたい。
500m四方の訓練場のど真ん中に立って、目を閉じながらマップを確認する。
マップは網膜に直接情報を送り込んでいるのか、目を閉じても使える。というか、目を閉じた方が使いやすいな、今は。
今回はモグラ叩き。出てくる奴から串刺しコース。≪氷の投槍≫を20発ほど発動待機。
今回の5人も質が低くて泣けてくる。ここまで準備する時間を与えるとか、上司はいったい何を教えているんだか。
全ての準備が終わって、これ以上魔法の発動待機ができないというのにまだ待たされている。
眠い事もあって苛々する。
包囲が完成してようやく5人が一斉に動き出した。
一回転して全員の装備を確認。恰好は前回と同じ黒子スタイル。そして5人全員近接戦闘のようで、誰も飛び道具を持っていない。開始時ぐらい使えよ! 頭が痛くなってきた。
残り5mまで引き付け、待機状態の≪氷の投槍≫を全て撃つ。
全弾命中……酷すぎる。
狙ったのは正中線上で頭、喉、胸、腹、股間の5か所。それが全部命中したわけで、全員即死。話にならない。
このままいくと、この黒子スタイルご一行が全滅しかねない。自業自得と言いたいところだが、あんまりいい気分じゃないので、決闘後に迦月に言おう。
穴あき頭巾を全部回収してから死体を焼いて灰にしたけど、血の匂いは残るな、こりゃ。
ああ面倒くさい。起きてから30分と経っていないけど、無駄に疲れた。おもに精神方面が。
寝よう。決闘に寝坊したくないし。
さすがに2度も襲撃は無かったようで、今度は朝までぐっすり眠れた。
朝食前の午前6時、決闘のため訓練場に集合する。
来たのは迦月とメイド二人、リアとフィリスにティアとマリィ、他女兵士3人。ちょっと離れたところにいる赤点2つは残党と言うか監視員かね? どっちでもいいけど。
迦月の装備は普段と同じく機動力重視の布鎧。わりと強めの、魔法耐性効果の高いもの。手にした刀は1本。予備はない。
対する俺の装備は完全魔術師仕様。対物理も対魔法も防御効果は一切考慮せずに魔法威力増幅効果のある『宵闇のローブ』を纏い、セットで装備する事でさらに魔法威力を高める『暁闇の魔術短杖』を左手に持つ。右手には使う魔法に特殊効果を追加する魔術札という消耗品を用意。頭には大量の魔法を並列使用するのに補助効果のある『星天の額冠』。両腕の籠手は一部の上級魔法の詠唱を無くす『雲耀の籠手』。両手の指にはめた指輪10個はすべて上級攻撃魔法を封じたもので、やろうと思えば最大30の上級魔法を扱える決戦装備の一つを持ち出した。
これはぶっちゃけると対アラスティア戦を考えて用意した装備で、いずれ16階層再攻略に使う心算である。ここに使う事をためらうタイプの消費アイテムは無いのであまり問題は無く、今回この装備でいくのは試運転に近い。
俺の装備を見て迦月の頬はやや引きつっている。いや、迦月のみならず、リア以外の全員があまりの大人げなさに目を見開いている。
冷静に考えれば、
ゲームを始めて半年、ようやく上級者まであと少しというプレイヤーと、
ゲームは開始時からで5年目、ベテランでもわりと上位のプレイヤー
の一騎打ちなど公開処刑でしかない。
だが最初に宣言した通り、全力全開でやると言った訳だし。手など抜かないよ? 失礼だから。
「おはよう。今手持ちで最強の装備できたけど、文句は無いよね?」
「も、勿論じゃ。そのような事でゴチャゴチャ言わん」
微妙に声が震えているのは、現在俺が普段使わないステダウン効果のある≪威圧≫スキルを使っているから。自分よりレベルが低い奴にしか効かないけど、迦月相手なら効果は抜群のようだ。ちなみにレベル差が20以上だと相手は気絶したり逃げたりする。
互いの距離を10mまで詰める。
審判と言うか、見届け人はリアが担当。おもに実力の問題で。メイドさんらもこれには異論を唱えなかった。
「このコインを上に弾く。落ちたら戦闘開始。問題無い?」
「無いよ」
「了解じゃ」
間に立つリアの言葉に二人頷く。
刀を、杖を構えた俺たちの前でコインが宙に舞った。
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