平日:教官の悩み相談室
文字数が普段の半分ぐらいと、短いです。
悩んだ末に相談相手に選んだのはタントリス教官だ。
教官は過去の経歴を見ても分かるように、人材育成のエキスパートだ。迦月の異常な成長についても何らかの回答をくれるだろう。
フィリスのところで授業をした後の教官を捕まえ、二人で話をしている。
「なるほど。刀の上級戦技に暗殺者の戦技か……」
「この学校に来る意味があるのかどうか分からないほどのレベルとスキルだし、俺も判断しかねる問題なんで。これ、12歳までに覚えさせようと思ったらどこまでやります?」
「生まれた時から遊びと訓練を同一視させ、7歳からダンジョンで生活するような毎日。まともな人間ならまずやらないだろうな。僕も昔はいろいろやったが、君が教えてくれた知識無しなら最短でも16歳を目標にする。それを12歳まで短縮すれば、人格が歪む可能性が高いのだよ」
迦月はちょっと世間知らずに見えるがそこまで非常識と思わない。生活方面でメイドさんらからフォローされることも少ないし。確実に歪むってわけじゃないだろうし、たまたま迦月はまっすぐ育ったのかな。
それはいいや。次は家の事でも聞いてみるか。
「十夜って家名は知ってますか? 真月連合のウルスラって国から来た、黒猫の獣人族です」
「真月連合は10の小国が集まった亜人族の国家だね。エルフやドワーフ、獣人に精霊の国があったはずだ。あの国の住人は基本的に人間嫌いだったと思ったのだが……アラド伯爵の影響なのか?」
「教官、国の事はわりとどうでもいいです。家名に聞き覚えは?」
「聞いた事がないな。こう見えても博覧強記という自負がある僕が言うんだ。あまり表に出ない家のはずなのだよ」
あまり表に出ない実力者の家系。公儀隠密とか、やっぱり忍者的な一族なのか? そうなる度迦月の悩みはイメージ的に「自由になりたいけど抜け忍とかになったら追手が来てやっぱり平穏な暮らしができなくなる。どうしよう?」的な展開なのが馬鹿一なんだけど。
もし自分が家の問題に介入するなら、一回ウルスラに行かないといけないだろう。直接会わなければ解決する問題も解決しない。
先ほどは話を遮ったが、ウルスラや真月連合についていくつか確認をする。
ウルスラはセイレンより東へ1ヶ月ほど先にある国で、海を挟んだ向かい側にある。航路は整っていて、定期的に船のやり取りがあるので交易も盛んらしい。人間嫌いであっても商売は別問題。そう言う事だろう。いい事だ。
30年ほど前まで戦争状態で、今は小競り合いをする国がある程度。おもに海洋資源の利権がらみなので種族間戦争自体は終わったとみていい。
真月連合は不可侵条約と侵略者への相互協力を謳うもので、人間との戦争を目的に作られたらしい。
ルースニア王国は奴隷制度が無い国になっているが、他の国では亜人の奴隷とか珍しくない。つまり、それだけのために異種族をの命を奪い、尊厳を踏みにじっているのだろう。だから人間国家と戦うために手を取り合ったんだね、わかります。
もし人間が連合へ旅行に行こうものなら裏路地で身ぐるみはがされることも視野に入れる必要がありそうだ。
日本人が北なんちゃらに遊びに行くようなものだろうね。あっちの亜人がこっちに来るのも同じだろうけど。
とにかく、タントリス教官から聞きたい事は大体聞いた。
俺に出来る事は今は何もなく、もし迦月が話し相手を求めていたらそれに付き合う。それがはっきりしただけだが、他人にこうやって悩みを打ち明けただけでずいぶんすっきりした。直接人を頼るのは、頼れるのはやはり気分がいい。
俺は教官に時間をとらせた事に礼を言う。
教官殿はこの後の予定が特に無かったようなので、しばらく剣の訓練に付き合ってもらった。
本気の戦いなら話は別だが、剣だけだと教官の方がやや強い。
二人とも本気で戦える相手が少ないので、2時間ほど刃を交わして汗を流した。
その日の夜、訓練に混ざれなかったリアが拗ね、部屋の中、無言で俺を睨んでいた。
明日、剣の練習をする約束を取り付けるまで睨まれていたので集中しきれず、やっていたアイテム制作を失敗して素材を無駄にしてしまった。
元々はリアとトレーニングできなかったのが始まりだったんだが。無駄になった素材はまたダンジョンで探さないと。はぁ。
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