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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
2章 学園生活1年目、将来の夢
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平日:黒猫娘といっしょ

迦月らは強いです

 迦月嬢に相談を受けた翌朝、学園ダンジョン前にて。

 今日はダンジョンに潜るためにリアと二人で来てみたわけだが、なぜか迦月がメイド二人を連れてダンジョン入口の前にいた。恰好はいつもの公家服じゃなくてもっと動きやすい服装だ。洋服と和服を足して二で割ったような……上手く表現できないな。とりあえず帯刀しているし、着ている服には魔力が付与されているので冒険用の恰好であると思う。メイドさんだった二人の恰好も似たようなもの。得物が薙刀と弓っていう違いはあるが。


 ダンジョンには隠れてこっそり入れない。街の重要施設なんだし、強行突破したりこそこそ入ろうとしたら警備の人に捕まりかねない。ダンジョンに入りたければあの3人に会わないといけない訳だが、相手の言動その他を考慮したら会うのはまずい。絶対について来る。

 あの3人が嫌いとかそういうわけではなく、あんまり目立ちたくないのだ。普段から厄介事に自分から首を突っ込んでいるが、自分から動いているからいいのだ、あれは。他から厄介事が来るのはノーサンキュー。


 見なかった事にして帰るのも手ではあるが、ダンジョンに潜る機会を捨てるのは良くない。会った後に面倒事になる可能性と、会わずに済ませてやっぱり面倒事に巻き込まれる可能性を考慮する。


 ……

 …………

 会う方がマシかな、たぶん。最低でも今年度いっぱいは同居する相手なんだし。


 考えをまとめ、後はリアと軽く打ち合わせをして入口に向かう。

 俺は中級剣技と初級魔法まで、リアは上級剣技までで戦う事にする。で、二人なんだし1階層から順に動いて適当なところで帰る。これなら一般的視点で見て「優秀な冒険者」レベルの評価になると思う。

 高レベルが低層荒らしをするのはマナー違反だと分かってはいるが、ここは我慢して非効率に振舞おう。



「ふむ、アルヴィース殿は遅めの開始なのじゃな。待ちくたびれたわ」

「……少人数で潜るのなら、他のパーティがある程度数を減らしてくれた方が効率がいいんですよ」


 俺たちに気が付いた迦月は開口一番偉そうな態度をとった。実際に偉い人だが。

 ちなみに俺たちが遅めに入るのには訳がある。早く入って自分たちでボスを倒せばいろいろ貰えて実入りが良いのだが、そのぶん誰がボスを倒したんだと噂されてしまうからだ。他より1時間遅らせれば他のパーティが先にボスを倒してくれるから、目立たずに済む。最初の方でボスを総取りしていたら「誰がやったんだろう」って騒ぎになったので今はボス戦をリポップ後にしている。2回目以降なら誰が倒したか分らないのが普通だし。


「ふむ。まあいい。今日は一緒にダンジョンに行くぞ」

「唐突ですね。一応理由をお聞きたいのですが」

「決まっておる。仲良くしたいからじゃ。戦士が絆を深めるには共に戦うか剣を交えるかの2択じゃろう? それはそうと、お主らは10階層を攻略してあるよな。11階層から行くぞ」

「いえ、俺たちに10階層の攻略など……」

「つまらん嘘は良い。お主らがただ者でないことぐらい見ればわかる。儂らの実力も把握しておろう? ならば15階層とて心配ない事も分かるじゃろ」

「あまり分かりたくは無いのですけどね、分かりました。11階層に行きましょう」

「うむ。それでいい」


 迦月の強引なペースに強制的に従う事になる。あまりここで言い合いをするのは人目に付くので得策ではないし、バレている嘘を重ねるのも良くない。それに彼女らが3人でも15階層を攻略しうる戦士たちである事は事実だ。たぶん全員上級の戦技を使える。かなり高レベルみたいだし、戦う事に慣れた者の雰囲気だ。3人でドラゴンを倒すのもおそらく可能だろう。


 人生思うようにいかない事の方が多い。俺たちは5人パーティという事で10階層のワープゲートをくぐった。





 現在ダンジョン14階層。

 迦月たちは強かった。分かってはいたが実際に戦っているところを見れば驚くものである。

 まず迦月。切り込み隊長とでも言うべき鋭さで敵陣に踏み込む。使う武器は打刀。日本刀の方が分かりやすいか? 予備も含めて4本を持ち込んでいる。軽装の布鎧って段階で分かるようにスピード重視で一撃必殺系。早く踏み込み相手の虚を突き一刀で斬り伏せる。使っている戦技は≪縮地≫だな。相手の認識の外を移動し直後の攻撃をクリティカルにする仙術だったか。高いプレイヤースキルを要する戦技だというのに見事に使いこなしている。

 メイドさんその一こと薙刀使いの莉理(りり)さん。彼女は攻撃的なタンクだ。前で暴れる迦月のフォローで迦月を狙い背を向けた相手を切り捨てる、リーチを使って後衛であるメイドさんその二に向かう奴の移動を妨害する、時に踏み込み相手後衛に一撃入れて魔法や遠距離攻撃を邪魔する。他にも回復・防御系の魔法が使えるので巫女さんでもあるようだ。彼女の特筆すべき点は戦況を見る目で、やや本能的に暴れる迦月のサポートをして戦況をコントロールする。

 メイドさんその二こと弓使いの(かえで)さん。彼女の役目はサポートと撹乱(かくらん)。それに精霊魔法による属性攻撃だ。よく見れば弓は魔法の補助機能も付いているので魔術師の杖の代わりみたいだ。莉理さん同様、迦月のフォローをメインにしている。莉理さんが攻撃できない場所への攻撃を主軸に、精霊魔法と付与魔法による支援を担当している。魔法よりのクラス構成なのは、前二人ができない事を伸ばした結果なのかもしれない。今の弓の腕は中級止まりだが切っ掛けさえあれば『魔法剣士』ならぬ『魔弾の射手』へクラスアップする可能性が高い逸材だ。


 3人のパーティは攻撃的ではあるものの、バランスは考えられているので長く一緒に戦ってきたことが(うかが)える。個人的にはあと一人防御よりのメンバーを足したいところだが、それだけの能力を持った奴など知り合いにいないし。そもそも信用ができるできないって話の方が重要だから、最初から紹介など意味がない。


 俺は迦月たち3人に驚いたのだが、彼女らは彼女らで俺たちに驚いていた。

 3人が攻撃的なら俺たち二人は防御的に振舞った。

 リアの上級剣技は熟練のそれなので、レベル差を抜きにしても迦月よりも強い。俺の初級魔法だって、使いどころさえ押さえれば下手な上級魔法よりも効率よく戦えるから前線を支える要となりうる。特に俺が初級の防御魔法――≪小盾≫プロテクションシールドの連発だけで前線を支え続けるのには閉口していた。



「お主らの強さ……(わらわ)の想像を超えておったわ」


 戦闘の合い間、休憩時間に迦月がそうこぼした。驚きのあまり一人称が儂から妾に変わっている。突っ込まないけど。


 今は莉理さんが持ち込んだお茶を飲んで一休みしている。

 ここまでにボス戦無し、通常の遭遇戦は10回以上している。いずれも危なげなく余裕を持って勝ったので消耗は少ない。ただ、小休止を入れないと集中力が保てない事があるので、1時間から2時間戦ったら休憩をとるようにしている。


「のう、お主らは将来セイレンで騎士にでもなるのか?」


 迦月が興味で目をキラキラさせて俺たちを見る。

 しかし期待には応えれないな。


「んにゃ。俺は料理人希望。今は資金稼ぎの最中」

「私はアルの嫁。アルが料理人なら看板娘」

「……正気か? それほどの腕を持ちながら料理人と給仕娘をすると?」

「事情アリなんでね」


 何度か一緒に戦えば確かに仲良くなる。丁寧口調はやめて普通に喋っても不敬と怒られなくなっている。

 俺たちの答えに迦月は何か形容しがたいものを見る目でこちらを見ている。

 しかし、しょうがないのだ。たまに忘れる人もいるが俺の視線恐怖症はいまだ改善の兆しが見えず、人前に立つタイプの仕事はできない。手持ちのスキルと消去法で考えれば、料理人が一番現実的な選択肢だと思う。

 まあ仲良くなったしバレてもいいと思える相手なので、それについて説明すれる。そしたら「勿体ない」と(うな)られた。


「なあ。もし、もしもじゃぞ。その視線恐怖症がなかったらお主は何かやりたい事は無いのか?」

「……考えた事が無かったな」


 何か諦めきれずに迦月が言うが、俺は気のない返事しかできない。

 希望があるのかといえば特に無いのだ。今まで選べる中から選んでやるという事をしてこなかった反動か。将来について特に考える事がなかった。

 金は大量に持っているし、稼ぐのはカモフラージュに近い。フィリスとティアの橋渡しや、強くなりたいというよりリアに勝ちたいって思いはあるけど、それは将来の夢と違うし。

 この質問に俺は考え込んでしまい会話が途切れた。


 しばらくして休憩は終わり、ダンジョン攻略を再開する。

 あの質問は、その場の勢いとなんとなくで生きてきた俺に、小さなしこりとなって残る。

 この日のダンジョン攻略は15階層まで一度もボスと戦わずに終わった。


 迦月らとは夜にまたプレゼントについて話し合う約束をし、ダンジョンから出てすぐに別れる。

 リアは何か言いたそうにしていたが、その気遣いに応える余裕が俺には無かった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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