平日:黒猫娘の贈りもの
「そろそろ5月だねー」
先日はリアと一緒に5月用の授業予定表をタントリス教官に提出した。
タントリス教官が俺やリアのスペックを考慮すれば授業内容も形通りのものより変わったやり方をした方が良いと言うのでその内容を詰めてきた。
受講生は俺とリアだけってことで授業予定を好き勝手変えることも可能なタントリス教室。素晴らしい。
リアは一般常識にごく一部ぬけがあるため一般教養の授業をあと1ヵ月がまんして受けないといけないのだが、俺はすでに全必須授業をクリアしている。おかげさまで学園に通うのは施設が使いたい時とリアの付添いだけになった。
普段は学園外というかフィリスのところで授業を受けたりする。兵士さんらまで暇な時間というか、休憩時間を使って一緒に授業を受けている。たまに俺が何か教えようとすれば全力で拒否するあたり、俺とタントリス教官の指導力の差を感じる次第である。
今は授業の休憩中で、兵士さんらと談笑しているところだ。
「5月と言えば、アレですよね」
「ええ、アレよね」
「今年は何をやるのかしら?」
「ボクは美味しいものが食べれればそれでいいです」
兵士さんら二人が『アレ』なるものについて話している。美味しいもの?
「アレってなんですか?」
興味がわいたので話に割って入る。すると二人は意外そうな顔をして俺を見た。
「5月よ? 分からない?」
「年に一回の日ですよ。もうちょっとヒント、いる?」
5月……年に一回……。あー。
該当するイベントをひとつ思い出した。
「ティアの誕生日」
「当たり~。ちゃんと覚えていたのね」
「当然ですよね。アルヴィース様はセレスティア様の婚約者なんですもの」
「婚約者違うし。まあ、美味しいものは作りますよ。ティアの分だけは」
「ちょ!? 私たちにも!!」
「そうよ! 私たちだって美味しいもの食べたい!!」
「アル、またあの肉の串焼きが食べたい」
いつの間にかリアも加わって「美味しいもの」を強請られた。
そして騒ぎを聞きつけたほかの人も自分の食べたいものを言い出したが全部用意できるわけないだろ。当日の料理はティア優先で作るに決まっている。
さっきの話はティアの誕生日で間違いなかったようだ。5月1日。ちゃんと覚えている。贈る物も決まっているので、気にするのは当日の料理ぐらいだったりする。そっちも既にメニューは決まっているけど。厨房長が決めることだし、いい食材が手に入るよう祈るだけだ。
一日の授業が終わればそのまま自由な時間である。
最近は使い魔の作成をする準備ができたのでどんな使い魔を作るかずっと考えている。
使い魔作成には
① 既存の生き物と契約する
② 道具をつくり、擬似的な魂を込める
③ 高い魔力を込めた核をつくり、魔力で体を構成する
という方法がある。
①だと動物の特徴が魔力により強化され、身体能力に優れた使い魔になることが多い。戦えるペットのようなものだ。②では道具というか、ゴーレムやオートマタのようなモノを作る必要がある。外見と性能を自分で決めることができる反面手間が大きく、玄人向けである。③は人工精霊のようなもので、②よりも少ない手間で作ることができる反面、魔力を常時リンクさせて消費し続けることになる。①や②なら普段は自力で待機中の魔力を吸収して維持できるのだが。
今回作るのは②で、戦闘用じゃなくてペット的なものを作る予定だ。久しぶりなんだから腕が鈍っていないかを確認する意味合いで、性能面は特に考えていない。サイズも15cmと超小型タイプにする。
「自意識による会話能力は当たり前、飛行機能は必須、あとは簡単な魔法を使えるように……」
素材と考えるスペックから予想される最低限の必要素材は集めてある。ダンジョンでそれなりの素材が手に入ったからだ。
そこからさらに機能を詰め込み、欲しい素材について考える。
とあるゲームで見た妖精さんは主人公への攻撃に対し防御魔法を使ってフォローしていた。細かいことは横におき、各種攻撃に対応できる防御魔法を組み込んだりしようものならサイズが足りなくなるし、汎用性の高い魔法だけで我慢するか?
攻撃力は無しにするかありにするか。使う攻撃魔法をその威力、必要性とかを考え、最低限度の攻撃力を持たせることにする。ただの一般人になら勝てる程度でいいか。
ほかにもあれこれ考えながら設計図をつくる。途中で書き直したりするのでゴミ箱には紙の束が詰め込まれていた。自費とはいえ、やりすぎてるな。節約しなければ。
あれこれやっていると夕飯の時間で、俺は設計図の束を片付けると食堂に向かった。
食事を終え、部屋でまったりお茶を飲んでいる。
使う湯呑み茶碗は前に露天で買った高級品だ。気に入っているので今は愛用している。
ちなみにティアへの贈り物はこの湯呑み茶碗と同じもの。二人で使えばペアってかんじで喜んでもらえると思っている。本当なら俺が今使っている湯呑みもまだ使わず、二人で使い出したほうがいいのだろうが気に入ってしまったのだからしょうがない。独りの時にこっそり使っているのだ。
しかしこのとき俺はマッタリしすぎていたようだ。
「邪魔するぞ!」
屋敷にいる時用の公家服――たしか直垂とかいう部屋着――を着た黒猫娘がドアを開けたのに反応できなかったのだから。
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