夕飯:夕飯は抜き
俺が一体何をした。
俺は帰るなり拉致され、ミノムシになった。
魔法を使えばロープを焼き切り脱出するのも簡単なのだろうが、それでは問題が解決しない上に悪化しかねない。それに、90%ステがダウンした状態で逃げ切るのは得策ではない。
まあ、この扱いは甘んじて受けよう。
夕飯も諦める。お腹が空いているのは確かだが、一食ぐらい抜いても問題ない。
ただ女性陣から冷たい目で見られるのは理由がわからず居心地が悪い。
俺は何をしたことになっているんだろう?
俺の困惑をよそに、夕食会が始まった……
今回一緒に席を囲んでいるのはフィリス、ティア、マリィ、リアの4人。
給仕にもう2人いるが会話に参加する様子はないので除外する。
俺は部屋の隅っこに放り出されているので話を聞いているだけだ。
「では、協定違反について、状況の整理をします」
司会進行はマリィの担当か。
「昨日の夜、アルヴィース様と旧名アラスティア様が対戦。アラスティア様の勝利に終わりました」
リアが無言で肯く。
それを見届け、マリィが続ける。
「アラスティア様は力を使い果たし、消える前に休眠し、力の回復を図ろうとした」
再度肯くリア。
「しかしアルヴィース様はそれに納得せず、アラスティア様に『契約魔法』で力の回復を行おうとした」
この言葉にリアは肯かない。
だけど否定もせずにマリィを見ている。
そんなリアをフィリスとマリィは睨んでいる。
マリィはリアの反応がないことに少し眉を顰め、それでも続ける。
「その契約魔法によりアラスティア様はリヴリアの名を得、アルヴィース様と番の神になることで今この場にいることができるだけの力を回復させた」
ここでようやくリアが肯く。
マリィはまた嫌そうな顔をした。ちょっと意味が分からないが何の意味があるんだろうね?
視線を逸らせばフィリスとティアはリアを睨む視線を強めていた。
む。2人にも反応があるって事はこの肯定と沈黙に何か意味があるのか。
「問題はこの契約によりお二方、いえ、二柱の神が夫婦になったことと、契約の際にキスをしたことになります。契約そのものについてはアルヴィース様が求められたことですのでリヴリア様は不問と致します」
うあ。
これか。
途中まではこちらの意志だったけど、キスや契約内容の強制変更はリアのやったことだからね。俺にお鉢が回ってこなくて良かった。
しかし、だったらなぜ俺はこの場でイモムシの如く巻かれた挙句転がされているんだろう……
「ではリヴリア様、反論を」
射抜く視線をものともせず、平常運転のリアは食事に手を付けつつ簡単に答えた。
「アルが望んで私が叶えた。それだけ」
「っ! そんな詭弁が通じると思っているのかな? アル君はそんなことを自分からしないし、望みを叶えるなら契約内容はそのままでも良かったんじゃないかないかな!?」
リアの返答に激昂するフィリス。
確かに、俺の言った内容そのままでも神力の譲渡はできたんじゃないかと思っている。
それにダメ出しをしたって言う事は何か問題があったんじゃないかとも思っているが。
リアは一度こちらに視線を向けた後、フィリスを見返し言い切る。
「アルの条件は呑めなかったから、あの条件」
少し説明されたが、神核の生み出す神力は自分限定である可能性があること。その問題をクリアするには俺を自分の半身として同一視するのが堅実だったことを言われた。
正直、この辺は調べて正解が分かる話ではないので相手の言う事を信じるかどうかという問題だ。
まあ、一応信じるけどさ。神力の譲渡はこちらの言いだした話だし。
ただ、俺が理性で納得してもあっちの感情が納得するかは別問題なわけで。
「キスは必要だったのかな!?」
この一言にリアの顔が赤くなる。
その態度にフィリスが追撃を仕掛けようとしたが、リアの言葉に凍りついた。
「……キスだけじゃ足りてない。もっと深くつながらないと…………」
真っ赤になったリアはうつむいて途中から小さな声で何か言っているが聞き取れない。
必要は必要でも、必要最低限だったようだ。
つまり、今後あれ以上の事をしなくちゃいけないと。
凍りついたフィリスは、その意味を理解するとやはり真っ赤になった。
「そそそそ、そんなの認められないよっ!! そういうのは!」
何か言いかけてあわてて口を閉じるがなんか問題になりそうなことを言おうとしたのは分かる。
政治家がそれでいいのかと呆れた目でフィリスを見れば、俺の視線に気が付きパニックになる。おいおい、本当に大丈夫か?
同じく呆れた顔のマリィがため息一つ。
「では、この件は必要最低限だったとして残りはアルヴィース様の責任という形でよろしいですね」
ちょっと!?
つまり今回の騒動(?)は全部俺の責任!?
あまりのことに口を挟みたくなるが、精神力を振り絞って置物状態を続ける。今会話に参加するときっと酷い目に合う。
脂汗がダラダラ流れている気がするけど、ぐっと堪える。
「では、お二人が夫婦神になったことによって生じる問題に移ります」
「ん。そこは気にしなくていい。普通の夫婦扱い」
マリィが次の話に移ろうとしたが、リアはそれを一言で終わらせた。
フィリスはまだ混乱中なのにリアはもう立ち直ったか。
この件については後で俺が個人的に異議申し立てをしようと思ったが、いままで静かにしていたティアがとうとう動いてしまった。
「正妻は私だもん」
「違う、私。譲りなさい義妹」
「い・や」
ティアは膨れて横を向いた。
なんか雲行きが怪しくなってきた。
「お兄ちゃんとえっちする勇気もない人が正妻なんて認めないもん。私ならいつでも大丈夫。だから、私が正妻なの」
「!?」
リアが慌ててこっちを向いた。
今の言葉の意味を教えろと言う事なのだろうが、俺は憐れんだ目でフィリスを見てから諦めたように首を振った。
それだけで意味を理解したのだろう、恐ろしいものを見る目でリアはフィリスを見ている。
とりあえずこの事態の収拾を頼むためにマリィを見つめる。
しかしマリィは再度溜息をついて余計なことを言う。
「子供を残すのは正妻の仕事。確かにその通りですね」
うぉい!
それは拙いだろ!!
俺は恐る恐るリアを見る。
リアは、顔を赤くしながらも力強く言い切った。
「問題ない。私が産むから」
「口ばっかりじゃないのかなー」
照れが抜けないリアにティアの追撃。いや、これ以上焚き付けたら……っ。
「だったら! 今日から子づくりしてみせる!!」
こうなるだろうがっ!!
俺はまだ11歳だぞ!? まだ早いだろうが!!
もうこの場にこれ以上留まるのが怖くなった俺は恐怖に負け、ロープを焼き切る。
逃げようと体の自由を得たはずが、俺の体は意に反して動かない。
まさか、ヒロインスキル!?
え? この場で動けないって、ちょっと?
これ、エロゲじゃないんだろ。じゃあこの場から逃げ出せてもいいんじゃないのか? このままいくと18禁だろ?
リアは困惑する俺を掴みあげるとそのまま寝室まで連れて行く。
ティアがそれを止めようとしたがなぜかフィリスがそれを止めた。
え? ちょっと?
「アル。覚悟して」
「ちょ、やめ……」
「大丈夫。私も初めてだけど、何とかする」
寝室についたリアは俺を拘束しながらも服を脱がしていく。
抵抗すら許されずに服を脱がされる俺。
最後の一枚に手をかけられ、目を閉じる。
そこでリアが覆いかぶさってきた。
いーーーやーーーーーー!!!
ぁーー?
……
…………あれ?
とうとう卒業してしまうのかと身を固くしているが、いつまでたってもそれ以上脱がされない。
しばらく待っても変化がないので目を開けて様子を確認してみれば。
オーバーヒートしたリアが真っ赤な顔のまま倒れていた。
やっぱり相当無理をしていたようだ。
安堵から大きく息を吐けば部屋の外にある人の反応に気が付く。
見ればフィリスとマリィがニヤニヤと、ティアは興味深そうに目をキラキラさせて覗いていた。
視線三人分。そしてそれは俺に集まっている。
先程までの行為は横においてもほぼ全裸な俺にのしかかる薄着のリヴリア。俺の下半身については「言葉では嫌がっても体は正直よのぅ」状態。
顔に血が集まるのが分かった。
「いやー、まるで襲われる乙女みたいだったよ、アル君」
まるでこの結果が分かっていたかのようなフィリスの言葉に俺は布団をかぶって泣いた。
死にたい。
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