終演:再誕
アラスティアとの一戦を終え、回復などを済ませる。
完敗だった。
望む形に戦場を整え、うまくいったと見せかけ油断を誘い、そこに強烈なカウンターを仕掛ける。
あのとき≪封炎の盾≫を無効化されることすら織り込み済みで、ダメージによる硬直をキャンセルする≪即戦即応≫が防御の本命。ダメージ硬直をうまく使おうとしたこちらが攻撃後の硬直を衝かれて圧倒された。
「あー、チクショー。負けたー」
「当然の結果」
大の字に寝転び不貞腐れる俺を立ったままのアラスティアは見下ろし、微笑んでいる。勝者と敗者、実に分かりやすい画だ。
微笑むアラスティアは月光に照らされ、流れるような銀髪は淡く輝いて見える。
そんなアラスティアを見ていれば負けてしまったモヤモヤも少しは落ち着き、再戦について考えてしまう。
今回負けたのは当然の結果。アラスティアの言うとおりだ。第三形態に勝つなんてのは切り札全部使ってもまだ不可能といえるレベル。高望みしすぎだ。
だが、ここまで戦術レベルで負けるとなると悔しさは半端ない。せめてもう少しやりようがあったのではないかと考えてしまう。せめて全力全開の一撃でも使っていれば、まだ違う事を考えていられたのかもしれないが。今は自分の判断の悪さに嘆いてしまう。
ならば。
次は自分から挑み勝ちに行く気持ちで戦いたい。
幸い報酬の≪戦の神珠≫は貰えたのだし、それを使って切り札補充、≪精霊軍団≫だって再編して挑めば細く頼りなくとも勝利への道筋は整えられる。
考えをまとめ、勢いよく立ちあがる。
そのままアラスティアに向き直り、相手の目を見て宣言しよう。
「次はこっちが挑戦する番だ。首を洗って待っていろ。次は俺が勝つ!」
気持ちで負けないように不敵に笑って言い切る。
アラスティアはきっとこの挑戦を受けてくれると、無条件にそう信じていた。
だが。
「ごめん、無理」
微笑む形はそのままに、目だけどこか寂しげに。アラスティアはそう言った。
「神核が壊れた。だからしばらく寝て治す。この戦いで残ってた力も使いきった。満足。寝て起きたらきっとアルはいない。だから、無理」
アラスティアは、神核が壊れて人間のように食事を必要とするようになった。俺はてっきり人間のようにこのまま生活し続けるんだと思っていた。だがそれは違うらしい。
壊れた神核を治すのに眠ってしまう。
俺がいなくなるというのは100年200年先にしか起きないということか。
「神核は、治さないとまずいのか? このまま人にまぎれて生きることも……」
自分の事情しか考えていない発言だと分かっているが、言わずにはいられない。
細い希望にすがり、感情をそのままに口にするがアラスティアには届かない。
「無理。神核が身体に神力を注いでくれないと私は消える。時間とともに神力が消える前に戦った」
「じゃあ、その神力とやらを他から補充すれば――」
「無理。神核は神しか持ってない。それに明日中に寝ないと、私、本当に消える」
神核? さすがにそんな物のレシピは俺も知らない。むしろ、作れる可能性があるのか?
他に手は無いかと必死で考える。
手が思いつかない。
――再戦できなくなる。
厄介事の種がなくなるというのだから歓迎すべき事態だと思う。
――まだ何かできたわけじゃない。何もしてあげてない。
アラスティアはこれで満足しているし。
――自分の中の、何かが納得していない
自分の中の感情がグチャグチャになって、冷静さを失う。
報酬としてもらった≪戦の神珠≫。それに目をやる。が、使えないと切り捨てる。これは神々と契約を結ぶためのアイテムであり、神々に力を与えるアイテムではない。
もしできたとしても、恒久的とまではいかなくてもそれなり以上の期間、神力を補充するすべがなくては意味がない。
……
…………契約?
頭の中に一つの仮説が思い浮かぶ。それをベースに内容を考え、成立する可能性が高いと判断。一つの条件さえ満たせば!
「アラスティア! 神力って奴に個人差とかはあるのか?」
「? 知らない。私、他の神様と会った事がない」
頼りない回答。しかし、否定ではない。
ぶっつけ本番になるが、やってみる価値はある。
神珠を二人の間に置き、アラスティアと指をからませるように手をつなぐ。
そして神珠に魔力を注ぎ契約魔法陣の作成。簡易な陣だが見知った相手との契約だからなんとかなる!
突然の行動に驚くアラスティア。
だが、構う事は無い。これは俺個人の勝手な想いだ。
俺のクラスの一つは召喚魔法の使い手の中でも神々との契約を可能にする『神喚者』。そのスキルを使って祖魔神と契約を結ぶ!
「我アルヴィースは、汝アラスティアに盟友たる誓いを此処に立てる。誓いの名のもと、我の持つ神力を半分、汝に捧げる。我より汝に求めるのは、汝が願うようにある事。もし汝がこの誓いを受けるのであればこの言葉は聖なる約定としてこの身この魂に刻み込もう――」
契約内容は適当だ。ただ、すっかり忘れていたが亜神たる俺にも神力はあるはず。ならばその神力とやらをアラスティアに譲渡して、維持に使わせればいい。期間を入れない契約だけに、その拘束は一生ついて回るが気にする事は無い。神力の存在を知ったのはつい最近だし、実際あるのかないのか分からないようなものが減ってところで気にはしない。
今は、この納得できない終わりを回避する事に集中する。
後の事なんて知らん!
「アルは、馬鹿?」
「壊したのが俺なら責任を俺がとるのは至極真っ当。先に責任を俺に求めたのはお前だろうが」
嫁とか妾とかその手の冗談は回避させてもらうが、納得いく結末だけは譲らない。
「やっぱり馬鹿」
一瞬下を向き、何か吹っ切ったようにアラスティアは顔を上げる。
「我アラスティアは妻として汝の誓いを受ける。今この時この場より祖魔神たるアラスティアの名を捨て、新たな夫婦神として汝を信仰しよう」
ちょっとーーーー!!!!
変なフラグキターーーー!!!!
あまりの宣言に手をほどこうとするが、現在≪超絶化≫の能力ペナルティ中。逃亡は拒否された。
つーかエヴァってペナルティメーカーが言ってた名前!? アレと同格だったのこの人? そんな神様が名前を捨てるとかこの後どうするのさ!
パニックに落ちいた俺にニヤリと獰猛な笑みを浮かべる(旧)アラスティア。
そのままキスをされて、なにか自分の中の大切なものが無くなった気がした。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。
アラスティアの方が強いので、契約内容はアラスティアにとって有利に書き換えされましたとさ。




