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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
2章 学園生活1年目、将来の夢
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春夜:桜と銀は再び争う

 正直、こちらのスキルレベルの平均値(ボリュームゾーン)は低い。

 ほとんど、中位の戦技や中級の魔法が使えるだけで一人前、上位上級に至ってはごく一部のトップレベルの人間しか使えないことになっている。俺の使える最上級魔法は神話か何かの扱いだった。


 キャラクターレベルについては、高いものならこの街にも90超えが何人かいるというのに、なぜこうなるのか。

 いくつか推論はあるが、クラスチェンジに関するまともな知識がないのだと思う。

 最上位剣技を使うには『剣聖』になる必要があるが、どうやって剣聖になるのか知らなければいけない。闇雲に頑張ってもまずなれない程度に条件はめんどくさい。

 90レベル以上のキャラクターが上位剣技を始めとしたいくつかのスキルを修め(カンストさせて)最上位剣技の使い手(アラスティアとか)と戦い生き残り、最上位剣技の存在を正しく認識することで選択肢が出てくる。正しく認識するには、相手が使った最上位剣技ごとに違う条件スキルを修めていなければならない。見た剣技が一つでも構わないのだが、相手が何を使うかは運任せに近い。使わない事もあるし、狙っていた剣技と違うものを使われることも多々ある。全部の最上位剣技をフォローするのは、なったばかりの90レベルには無謀だったりするので1個2個に狙いを絞るのだが、なかなか酷い話だ。

 条件を満たす前に最上位剣技の使い手と戦っても意味がなく、一つでも条件スキルが足りなければ意味がない。ネットで情報のやり取りをしているプレイヤーならともかく、こっちの人間が正しい情報を知り、伝えるのは難しいだろう。まともに検証もできないだろうし。


 しかし、いつの時代にも異端者というか他の連中とは考え方の違う人間がいるものである。

 彼らはスキル習得の条件、つまりはクラスチェンジの条件を考え、検証することに情熱を燃やしていた。

 その為の方法として学園教師を目指すというのは自然な流れだと思う。才能の差だとか何とか言って教え子を誘導し、覚えるスキルを自分の研究のために最適な形に持っていく。そうすればサンプルを無理なく自然に、大量に手に入れることができるのだから。


 最上位剣技を覚えるためにはまず上位剣技を覚えさせる必要がある。それぐらいの推論はすぐにできる。だから上位剣技を覚えるための条件特定から実験はスタートした。上位剣技を扱える人間はそれなりにいるて大雑把な条件が分かっているものの、完全には特定できていないからだ。

 中位剣技を使える『剣士』へのクラスチェンジ条件なんてそうたいしたものではない。レベル20以上、下位戦技(・・)をカンストさせること。それだけである。

 上位剣技を使える『剣闘士』へのクラスチェンジ条件は50レベル以上、中位剣技のほかに武器系の中位戦技2つ、武器系ではない戦闘系戦技のいくつかをカンストさせることだ。

 ネックはある程度自由度があること。調べる側はその自由度に悩まされ、時間をかけることになる。



 なぜこんな話をするのか。

 それはこの検証をしていたのが我が教官たるタントリス氏だからだ。

 検証時自体はそこまで大きな問題でではない。ただし、学生に許可をもらっていた場合は、と但し書きが付く。

 無断でそんなことをやったタントリス教官は当然のごとく糾弾され、生徒は彼から離れていった。クビにならなかったのは彼の実力と、ノウハウが生徒の育成に役立つ可能性を考慮した温情処置である。

 まあ、生徒たちにしてみれば実験体扱いされるのは忌避すべきことなので、彼にできる事は考えや方法論を他教官へアドバイスするだけに止まった。そしてそれは有効性を証明する。

 間接的にではあるが一定の成果を上げるタントリス教官。多少の評価は得ることができるためクビにはならず、しかし直接教える生徒はいないという、真綿で首を絞められるような日々が続く。

 そんな折に現れたのが俺、アルヴィースだ。

 せっかくの学生ということで大切に、じっくり教えようと基礎的な事から順番に教えるつもりだったらしい。

 中身はこんなのだったけどね。

 おかげで、授業内容の変更をしたいとお願いしただけでここまで説明され、引き留められた。彼は研究者であると同時に、心から教官である事に拘っていた。


 で、事情を知った俺は彼に手持ちの知識を与えることにした。とりあえず上級剣技の習得に関して。

 生徒の質が上がれば俺の評価は相対的に低くなる。年単位の計画になるが、別に誰かが損をする話ではない。俺が直接指導するわけじゃないし、そう目立たないだろう。そんな軽い考えだった。


 甘かった。

 タントリス教官の持つ知識と照らし合わせ、俺の情報が事実であることは納得してもらえた。俺自身は中位剣技までしか使えないにもかかわらず、だ。

 そうなると教官はそういった知識を持つ俺に、他にも知っていることはないかと期待する。元々知識を求める研究者気質を持つ教官だ。容易に想像できることであり、しなかったのは痛恨のミスである。

 で、他の情報も根掘り葉掘り聞かれた。あんまりたくさんの情報を教えるのは問題なのでのらりくらりと躱しているがいつまでもつか。

 そんなわけで今日の授業では今はどっちが教官か分からない状態だったり。ほかの生徒がいなくてよかったなぁってしみじみ思った。

 今日は1日座学だったが、前より長く感じたのはしょうがない。

 明日明後日は授業を入れていないので、ゆっくりしよう。ダンジョンに潜るのはキャンセルだ。ダンジョンに潜るのは、そこまで焦ることじゃない。どうせたいして宝箱を見つけれないだろうし。





 一昨日のアラスティアとの出会いも含め、人と新しく繋がりを持つというのは新しい厄介事を増やす側面もある。かかわる人数が増えれば倍率ドン、で増える。

 でも、人と繋がりを持つのが俺がここにいる理由のひとつで、それは俺が求めたことでもある。多少の厄介事は受け入れなきゃいけない。それは分かっている。

 だが、もう一度「でも、」と言いたい。だから言う。

 でも、許容しきれないこともあると思うんだ。

 疲れて帰ってきたら、なぜか睨み合う犬耳幼女メイド(ティア)と、銀髪元魔神さん(アラスティア)

 またかよ。俺の平和よどこに行く。早く戻って来い、と心から思った。




 一昨日を彷彿とさせる光景だった。

 変わったのはフィリスではなく娘のティアだということ。後ろにマリィさんが控えていること。

 相変わらずマードックさんは逃げ出し、フォローしてくれそうな人はいない。


 二人は俺に気が付くとこちらを見て思い思いの行動に出る。


「兄様っ」

「くっ!」


 ティアは俺に抱き着き、アラスティアはこちらに踏み出しただけで止まってしまった。アラスティアを見てニヤリと笑うティア。チョイ待て5歳児。その年でそこまで黒いのは如何なものかと思うぞ。

 マリィさんは涼しげな表情でそれを見守り、アラスティアは出遅れたことに、いや、慎みを持って抱き着かなかったことに悔しそうな、羨ましそうな顔をする。なんていうか、俺のヒロインと勘違いしてしまう反応だ。


 不思議なんだが、なんでアラスティアは俺に構うんだろうね?

 戦って倒したわけだし、実力を認められたというだけならわかる。セクハラ野郎扱いされているんだし、距離を取るのが普通ではないだろうか。

 さすがに最終ボス彼女な展開はないだろうし、アラスティアがヒロインという線は消していい。

 嫁とか妾と発言しているがエロス方面には厳しく、本当に手を出そうものなら殺されかねない。意味も分からず言っているのだろう。最初のあれは保護者を求める、金銭的な意味での発言だと思うわけだ。


 伝手など無くても冒険者で戦闘ありの依頼を受けていれば生活には困らないはずだ。ダンジョンに潜るのでもいい。とにかく、実力を思えば稼ぐ手段だけならいくらでもある。それはもう教えた。というか、ある程度以上の常識はすでに持っていた。

 しかし、神核を破壊した責任を盾に、彼女は俺のもとに留まろうとする。なかなか不可解な話だ。



兄様(にいさま)。今日のお夕飯は何ですか?」


 抱き着かれ睨まれ観察されて。身動きできない俺にティアは上目使いで聞いてきた。

 ちなみに、喋り方とか一人称、俺の呼び方はフィリス監修のもとまた変わっている。今は甘えん坊の娘さんで、効果がなければまた変わるだろう。最終的にどうなるか実に不安である。


「ステーキとサラダだよ。スープは、また明日の朝かな」


 頭をなでながら答えれば目を細めてされるがままになっている。

 一応、ティアは表情をある程度意識すれば再現できるようになっている。今は嬉しそうである事を教えるために目を細めている。表情の制御とか、特に意識しなくてもできるようになれば、見た目は普通の娘さんになるだろう。元々感情が無いわけではなく、昔俺とのやり取りでは表情を変えずに雰囲気だけで感情を見せていた。問題は表情筋が動かないだけだったし。


「ロリコン」


 ぼそっとアラスティアが呟いた。

 それは違うと否定しようとしたが、俺より早くティアが反応した。


「それは違うよっ。兄様は、義妹を可愛がってるだけなの。兄が妹を可愛がるのは普通の事なんだよ」

「似非妹が言う事か」

「兄様は母様が保護者だからあってるもん!」

「くっ、さすがはあの女狐の娘……っ」


 ちなみに俺の保護者はマードックさんである。

 とりあえず、料理を作ると言ってこの場から離脱。予定より人数が増えたが、マードックさんがいなくなってティアとマリィが追加されただけだから、肉の切り分けを少し変えれば済む話だ。ティアはそこまでたくさん食べないからね。小さいし。


 夕飯ができたらできたで二人は事あるごとに言い争い、マリィはそれを静観し続けた。

 結果、俺が間に入る事になって酷い目に会うのだが、あまり思い出したくないのでそこは割愛する。

 ティアとマリィはそのまま泊って行き、俺の部屋で昔のように寝ることになるのだが、アラスティアからは「ロリコン」「種馬」と不本意な呼ばれ方をするようになる。事実無根の類であり、俺は潔白だ。

 どうしてこうなった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


6月17日 誤字修正

検証時代→検証自体

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