村はダメだよ、閉鎖的で
主人公は魔法を無詠唱で使えます。
今度は2ヶ月経った。
現在町に向かって移動中。荷馬車の隅っこに座っている。
途中には小さな村がいくつもあったが、長期間住むことができなかった。
理由は簡単。
常に視線に晒されるからだ。
若いよそ者が越してきた。身なりはいいし有能だ。なんでこんな奴が流れてきた。きっとどこかで悪さをして流れてきたに違いない。
彼らの考えは一律こんな感じだ。≪心読≫の魔法で確認したから間違いない。
警戒しなきゃいけないと、誰かが常に見張っている。
そして視線に晒され続けることに自分は耐えられなかった。いやもう、本当に勘弁してほしい。
川で魚を獲ってきて振る舞っても信用されない。農作業を効率よく進めても、こっちのやっていることが分からず勝手なことをするなと言う。便利なモノを作れば気味悪がれ。外見が10歳の子供がそんなとこをし続ければ不気味でしかないという評価に落ち着く。
そんなこんなで自分にしては頑張ったけど、心が折れた。村はだめだ。都会に行こう。
都会なら他人に多少無関心になっていくだろう。自分も注目されないに違いない。目立つことを控えればいい。それしかない。
というわけで今は街道を商人の荷馬車に揺られながら進んでいる。
一人旅では街に入るために色々と手続きがいる。だから途中で旅商人に自分を売り込んで乗せてもらったのだ。見た目はともかく、魔法が使えて火や水を自在に出せるのが良かったらしい。雑用として雇ってもらえた。
対人恐怖症? 人数さえ少なければ発症しないよ。このキャラバンは護衛含めて総勢10人の小規模キャラバンだった。じゃなきゃ無理だって。
とりあえず大概のことはスキルでできるからキャラバンでは便利に扱われている。街までの雑務は街に入る手続きをしてもらうので忙しい割に現金収入はない。でも町に入ってからポーション類を売却すれば現金は手に入るし。これに問題はない。
だが気になる、後々問題になりそうなことが一つ。
商人のおっさんがやたらと話しかけてくるのだ。
この禿げたおっさんは見た目40歳ぐらいか? 恰幅のいい柔和な顔の人だ。あっさりこっちを雇ってくれるほどに気前がいいかと思えば、小銭一枚にこだわりを持つ程度に厳しさもある。商人としては強かだけど、人としては信用できるように見える。≪直観≫がそう言ってる。
おっさんはこっちの情報を根掘り葉掘り引き出そうと仕事の合間に近づいてくる。悪意とかだけじゃなくて、こっちを利用しようとか便利な小間使いを手に入れたとか打算的な感じがしない。
話しかけてくる理由がわからないけど、適当にでっち上げた経歴だけは教えておく。小さな村の出身で、両親が元冒険者。魔法は親に習ったとか、両親が死んで肩身が狭くなったから村を出てきたとか何とか。村の名前とかは「知らない」の一言で済ませた。親の話に合った冒険者に憧れて、真似をするつもりとか将来の話まで聞き出された。この辺は考えていたけど話すつもりはなかったんだけどね。
そういえば話術関係のスキルが追加された。
≪交渉術≫≪誘導尋問≫≪虚言≫ってスキルが追加さた。軒並み0レベル。リアル自分はゲーム内では結構しゃべってましたよ? それでも0レベルですか。
かなり凹んだ。
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