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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
2章 学園生活1年目、将来の夢
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春夜:追憶と悲喜劇と女の争い

R15?

 悲劇と喜劇は背中合わせの鏡である。

 当事者にとって悲劇だろうと、傍から見たら喜劇となる。


 一週間前の話だ。

 あれは、花見の席でのことだった。

 メンバーはフィリスとティア、マリィだけではない。兵士一同も参加する大規模な花見だった。

 白楼族にとって桜の花を愛でるのは1年で最も大切な行事だという。この日ばかりは無礼講で、振舞われる酒食が族長の権威を示す。その準備には当然のように俺も駆り出されたので、質も量もかなりのものだという自信がある。

 最初は和やかな雰囲気だったが、酒が入れば乱痴気騒ぎも止むを得ない事だ。

 俺は子供の権利を利用して酒を飲まずに素面で桜を見ていた。しかし、それはそうそう許される事ではない。すぐに捕まり、酒を飲まされた。

 この身体は酒に弱いらしく、俺は全身から力が抜け、動けなくなってしまった。魔法も使えず、されるがまま。さすがにまずいと思ったマリィに介抱されながら横になっていた。

 そのまま終われば問題なかったんだ。いや、そのまま寝てしまえば、俺は知らずに済んだんだ。


 半ば意識を失いかけていたが、俺の耳は確かに聞いた。


「へー、それじゃあアル君が入ってるの、知ってて入りに行ったんだ」

「ええ。見られて困るものでもないし」

「でもさぁ。それをオカズにされたんでしょ」

「それも気にする事ではないわ。むしろ、私が魅力的ってことですもの」

「うわ大胆。私だったらちょっと嫌かな」

「んー、私はOKかなぁ? あれぐらいの男の子に意識されるの、ちょっといいかも」

「でもさぁ。一回とか二回とか。回数で比較しちゃいそうじゃない? ほら、「私の時は2回だったのよ」って」

「あ。そーゆー見方もあったね。確かにそれは嫌かな」

「匂いの濃さで正確な回数が分かるわけじゃないでしょうに。そこまで気にする事かしら」

「えー。言ってもさぁ。やっぱり気にしちゃうもんねー」

「ねー」



 彼女ラハ何ヲ言ッテイマスカ?

 分かっている。

 やっちゃったことだ。

 彼女らが言っていたように、ここの生活はラッキースケベなんて比較にならないぐらい性的な刺激が強い。だから俺も息抜きをしないと耐えきれず暴発してしまうだろう。だけど、その息(笑)抜きがなぜばれる? (にお)い?

 何それ犬じゃ……犬かっ!?

 白楼族、耳の形から犬系だとは思っていたけど、嗅覚も犬並みか!?

 ってことは、今までの全部把握されてる!?

 フィリスが風呂に入ってきた後とか、マリィやティアといっしょにお風呂に入ったり寝てた記憶が(よみがえ)る。とうぜん、それらを使った(・・・)記憶も。

 思えば、朝は微妙な態度の人もいた。もしかしてそういう(・・・・)事か?



 気が付いたら俺は逃げ出していた。酔いなどとうに醒めている。

 フィリスや女兵士さんらが慌てていた気もするが、それを振り切り俺は駆け出した。

 気が付くとマードックさんのところにいて、大した事情の説明もできぬ間にまた世話をかける事になった。

 そして時は過ぎ、学園に通うようになったのだった。






 現実逃避から意識を戻せば、家の中は混沌と化していた。

 マードックさんは早々に自室に篭り、関与しない姿勢を明確にしている。

 机を囲み、椅子に座る俺。立ち上がりにらみ合う女伯爵(フィリス)元魔神(アラスティア)

 誰か助けろ。そして俺はベッドで寝たい。

 救世主はどこにいるのかな。

 俺は自力解決の可能性に見切りをつけ、会話の矛先が自分に向かないよう、静かに耐えていた。



「どちら様なのかな?」

「それはこっちのセリフ。あなた誰?」

「……ふふふ」

「……フフフ」


 二人はにらみ合ったまま笑い出す。互いに譲る気がない。

 美女二人がなんで言い争っているんだろうね。

 いや、これはチャンスでは?

 俺はそのまま≪消音≫(サイレンス)を使って自分の周囲から音を消す。そして二人の意識が俺から外れていることを目視で確認、ゆっくりと逃げようと


「アル君、もうちょっと待っててね。この女を追い出したら少しお話がしたいの」

「アル、この女が帰ったら説教。だからステイ」


 椅子から数センチ腰を浮かせたところで捕捉された。

 ヤダもう助けて。


「私はフィリス=システィナ=アラド伯爵。この街の領主よ。あなたがこの家の人間でない事は知っているわ。早くお家に帰りなさい」

「事情も知らず言う事じゃない。あなたが帰れ」

「あら。名前も名乗らずずいぶんな口を聞くわね。不敬罪で捕らえるわよ」

「フ。それがあなたの限界。アルは私に借りがある。だから私はここにいてもいい」

「縁も義理も貸しも借りも、今まで一緒にいた私の方が多いの。残念ね。でもそう。あなたはここにいてもいいわ。私たちは帰るから。行こ、アル君」


 フィリスが俺の肩に手をかければアラスティアが反対の肩に手を置く。

 至近距離で額を突き合わせるようににらみ合う。怖いよ、二人とも。


部外者(・・・)さんには退いていただきたいのですが」

「アル。この女をどかして。早く」


 アラスティアが俺に話しかけたタイミングでフィリスの顔に微笑みが浮かんだ。

 そして、寝返りを打つ。


「あれ? アル君はお疲れみたいですね。今日はもう寝たい?」


 今頃気が付いたという感じで言っているが、何という(わざ)とらしさ。しかし、セリフの内容だけなら俺にとって好都合である。


「ああ、今日は疲れててね。寝させてもらう」

「おやすみ、アル君」

「おやすみ」


 そそくさと立ち上がって寝室へ逃げる。

 後ろで見捨てられた形になるアラスティアが何かを言おうとしたようだが、フィリスがそれを食い止めているようだ。悪いが今日は厄介事ばかりでお腹一杯なんだよっ!


 今日は本気で疲れた。ベッドにもぐりこみ、目を閉じる。

 ……ベッドからフィリスの匂いがしたような気がしたが、気にしたら負けだと思う。

春夜(しゅんや)とは、花が香り 月は朧に 美しい音楽を耳にする 春の宵は値千金 って意訳の春夜詩のことです。

花は桜、白楼族のフィリス。月は銀月、アラスティアの銀髪。美しい音楽は二人の言い争う声。

とんでもない春夜詩ですね。


読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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