戦闘中:アラスティア②
アラスティア戦は100レベルプレイヤーとのPvPで、相手だけステ2割増しという扱いになります。
慣れれば、戦闘パターンさえ知っていれば何とかなります。
アラスティアを見る。距離は詰められ大技の初期体勢。
やばい、抜刀術のような、腰の左に剣を納めたようなその構えだと!
「切り裂きなさい、≪秘剣・雪花≫」
物理法則とか関係ないよね! どっから攻撃してるんだとか言っても意味ないよね!
≪秘剣・雪花≫は全方位攻撃。縦横無尽に斬りつけられるイメージ。「その技を使うなら刀を使え!」と多くのプレイヤーに言わせた、最上位剣技の中でも回避不可能な、≪連撃≫系最強の技。
アラスティアの姿が霞み、視認不可能な領域に入る。俺の周囲を高速移動しながらアラスティアにしては軽い一撃入れる。軽めとはいえそれを100回。止まることなく位置を変えてくるために盾による防御は意味をなさないし、鎧も全身鎧じゃないから死角から隙間へ攻撃されてしまう。
この戦技に対する対策は少ない。
「≪護りの場≫!≪鎧独楽≫」
ダメージを減らす。それだけである。
できれば≪護りの場≫を多重起動させたいけど、そこまでやる余裕がもうない。
全方位防御魔法に全方位迎撃戦技で少しでもダメージを減らす!
俺の周りに防壁を張られ威力を減衰する。
盾をかざし高速回転し、一つでも多くの攻撃を弾く。≪鎧独楽≫は部分鎧を使っていても全身鎧のごとく露出部分をかばい、さらには盾の防御力を加算する汎用戦技。身体を独楽のように回転させなきゃいけないので、移動ができなかったりそれなりのデメリットもあるけど、この状況ではこれが最善手。
ほぼ全力の防御をするが、それでも弾ききれない攻撃が身体を切り裂く。HPがガリガリ削られる。
≪小回復≫連発と≪生命賦活≫でHPを回復させつつ耐え続けると、HPは残り2割。なんとか耐えきった。
≪護りの場≫の効果を切り≪蘇生≫で一気にHPを安全域まで回復させる。
≪雪花≫のあとの硬直は割と長い。硬直もそうだが、これで決まったと思っていたのか、アラスティアの表情が驚愕に包まれていた。その驚きの助けもあり、回復してなおこちらの先制を可能にする時間を手にした。
さっき『千桜走破』が直撃したのに俺へ一撃を加えたことから、行動パターンが予想とずれ出している。スパアマなんて向こうでは持っていなかったというのに。
それでもゲームで有効だったコンボを試すことにする。
アイテムボックスの中から『氷精石』をまとめて5個取り出しポーチに移動。これはこちらに来てからチマチマ作り続けていた物で、氷の精霊魔法の強化に使う。
技後硬直を使い、削れるだけ削りたい。
≪氷嵐≫を発動待機。
≪氷嵐≫を≪高速5連撃≫にかけ合わせる魔法剣技、≪氷爆5連≫、その強化版。≪氷結の庭≫。
『氷精石』を使いながら≪氷嵐≫を起動・付与。強化された≪氷嵐≫は剣を覆い新たな刃を作り上げる。俺の使っている剣は長剣で刃長60cmだったのだが、≪氷嵐≫の刃はケタ違いの5m。両手剣(2m)どころじゃない巨大な武器となっている。
土属性で組み上げると重量バランスが変わって取り回しも考えないといけなくなるけど、これは魔法で組み上げたファンタジー武器。使い勝手は長剣のままだ。
「≪氷結の庭≫」
技の名前を呟き、発動させる。
わざと技後硬直が解けたタイミングで初撃を決める。氷属性の一撃なので、僅かだがアラスティアに氷がまとわり付く。きれいに攻撃が入ったからHPが少し削れる。彼女の表情がまた苦痛に歪む。うん、素直な表情だな。
≪氷結の庭≫のベースは≪高速5連撃≫のため、そのまま連続で攻撃を行う。2撃目。発動待機状態だった≪氷嵐≫を追加で付与。アラスティアに先ほどよりも大きい氷が付着した。
3回、4回と攻撃ごとに≪氷嵐≫を付与する。その度にアラスティアに氷はまとわり付き、行動を阻害する。
最後、5回目の攻撃は唐竹割り。アラスティアは避けようと後退するが氷が邪魔で避けきれず、胸甲に剣が当たる。インパクトの瞬間に≪氷嵐≫5回分をまとめて開放すれば俺たちを中心に包み込むような氷の花が咲く。≪氷の棺≫じゃないから俺たちを包む氷花が砕けて消えることはない。『氷精石』で強化した魔法の氷だけに、アラスティアでも簡単に砕く事は出来ない。
大技だけに無茶な魔法付与をしたから、剣にひびが入る。アラスティアの胸甲は完全に破壊された。収支でいえばプラス。準備はできた。
この技、最初から≪氷嵐≫5発を剣に付与した場合は最後の氷花が弱くなる。かといって、一撃系の技に組み合わせれば途中の氷による行動阻害が発生しなくてラストにつなぎにくくなる。あと、バランスを変えると剣への負荷が大きくなるのか、剣が折れる。
今装備している剣はなかなか貴重な剣なので、壊れる前にアイテムボックスにしまう。
≪氷結の庭≫によりお互い氷漬け状態になった。この状態だとまともに動けないし徐々にダメージが入るが、そのまま次の魔法詠唱に入る。俺の頭部装備は祖魔神の仮面。仮面が付いている。つまりは、詠唱するスペースが殺されていない。アラスティア自身は仮面無しなのでこれは俺だけのメリットである。
「光射す世界に降りたる闇は安寧と、自由と、解放を齎す。白き光が暴き世界を黒き闇は再び覆い隠し、全てが還るは昏き混沌。
還り潰える者を導くは一条の光明。無知と無垢を破り、黎明の鐘を鳴らす東雲の光。
終わり始まり繰り返す、無限の円環打ち砕く、異法の神より賜りし、無すら切り裂く剣をここに!!」
長い詠唱を終えると、俺の手に先ほどの剣とよく似た形の、黒白半々の刃を持つ剣が顕現する。
太極図を無理やり引き伸ばし、刃の形を無理やり押し付けたような異形の剣を前に、アラスティアの目には恐怖が浮かぶ。その感情を前にしても、俺に躊躇う気持ちは出てこなかった。
召喚魔法には、
1.何かを喚んで戦わせる、ポケモ●みたいな使い方
2.相手の力を使わせてもらう、F●シリーズのような使い方
3.加護という形で特殊能力を貰う使い方
がある。
召喚魔法は強い事は強いのだが、通常の詠唱とは扱いが違い、詠唱の短縮や破棄ができないのが難点である。
また、触媒が必要だとか使う場所を選んだり、何らかの条件を満たしてないといけなかったりする事が多い。今回は「ダメージを喰らい続けながら詠唱する」というドMな条件を満たす必要があった。あんな長々とした厨二呪文を詠唱するだけで精神的にダメージが入る気もするが、実際にHPが減らなければ使えない。かなりイタい。
今回は3番の加護を貰う使い方。
防御力無視に魔法破壊、HPダメージに比例して上昇する攻撃力。他にもかなり無茶な特殊能力をずらりとセットで付与された剣を借りる最上位召喚魔法の一つ、≪ゼロの魔剣≫。
これで決着をつけようと劫火を纏い、氷を融かしながらの最後の一撃。
HPを削りながらの詠唱で残りHPは5割ぐらいになったが、この剣は振るうたびにHPを削る。使用中のHP回復はできない。戦技も使えないし、魔法剣の対象にもできない。最上位魔法だけに消費したMPだって半端じゃない。
外せば終わりの一撃は、すでに剣を無防備な胸に剣を突き立てた状態から始まる。
攻撃方法は刺突。
俺が氷を融かし始めたことでアラスティアはようやく氷の縛めを砕くがもう遅い。
≪ゼロの魔剣≫がアラスティアの胸に突き刺さり、残りHPを削りきった
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