山篭り生活、失敗する
ヒロインはまだ出てきません。しばらくお待ちください。
異世界転移から一ヶ月。特に大きな問題もなく、静かに生活できている。
問題らしい問題はないのだが、困った事実がいくつか判明した。
まず、若返っていた。
ステの変更はなかったけど、小さくなっていた。
装備品一式に「自動サイズ調整」の特殊能力があったので気がつくのが遅れた。
気がついた理由は小用。深く考えると泣きたくなる。
身長は120~130cmだから10歳ぐらいか? 鏡がないから確証はないけど、黒髪だからたぶんリアル自分の子供の頃だろうね。ゲームの自キャラは銀髪にしてたし。
二つ目。動物が服従のポーズをとる。
狩りで肉をゲットなどと考えて森をうろついたら、デカイ熊に出会った。「今日は熊鍋だ」と武器を構えようとしたらすごい勢いで土下座された。ほかの動物もお腹を見せたり、貢物を用意したり。こんな動物たちを殺せと言われてできるほど人間捨ててない。肉は早々に諦めましたよ。
理由は……種族、亜神だからね。本能で従うべき相手だって理解したみたい。人間に会ったらどうなることやら。
三つ目。資材不足。
資材とは主にマジックアイテムの制作に必要な触媒のこと。
現在入手できるのは低位の植物素材、同じく低位の鉱物、自作の魔石・精霊石ぐらいだ。この程度だと簡単な初心者レベルのアイテムなら大丈夫だが、中堅者レベルのマジックアイテム、例えばゴーレムなどを作るには心許無い。
ここはごく普通の山らしく、魔獣などは見かけない。せめて魔獣が出れば素材剥ぎ取りが出来たのに。
あとは、これは問題というべきか不明だが、見慣れない、新しいスキルが追加されていた。
具体的には≪算術≫や≪異界知識≫とかが追加されていた。何かしたら、それに関わりそうなスキルが追加される。システム的にはそんな感じ。
追加されたのはだいたいはリアルの知識関係でスキルレベルは3~6ぐらい。ゲームの時の説明だが、カンストがレベル10だけど、3~6は趣味の範囲~プロの仕事ってところ。取得直後からそれなりのスキルレベルってことは、リアルの自分が影響してる可能性が高い。
山に着いてからの話をしよう。
まずは≪建築≫で山にログハウスを建て、≪家具作成≫で内装を整えた。道具はアイテムボックスにあるし材料はそこら辺の木を伐採した。あと、近場には≪人≫魔法の≪結界作成≫をしておいた。食事は≪狩り≫や≪釣り≫、≪採取≫で材料を集め≪料理≫。近くの動物、犬と鳥を≪テイミング≫してペットにした。≪召喚≫は触媒がないから今はできないのが残念だ。回復アイテム類は≪ポーション作成≫で増やした。
できないことも多いけど、生きていくだけなら何年でも問題ない。
ただ、最近ゴーレム――人型に近いから正確には自動人形だけど――を作成したくなったり。
ペットをモフる時間が増えていたり。
他人が恋しくなっている。誤魔化せないぐらいに。
独りきりはキツイらしい。
対人恐怖症だというのに。
他人の善意や好意すら素直に受け取れないくせに。
――何より。善意や好意が容易に反転することを知っているくせに。
人が怖くて人の中にいたくて。空気のようにになりたくてなりきれなくて。善意を受け取るのができないのに悪意にさらされるのが嫌で。生きていくのが辛いのに死ぬのは怖くて。
自覚はあるけどぐちゃぐちゃな性格をしている自分が治らない。本当にどうしようもない。
こんなことを考えるのはきっと、「生活基盤を整えた」だけでやることがなくなったのが原因だ。やることがないとろくなことを考えつかない。リアル世界ならゲームでもやって暇を潰せたのに。
グダグダと色々考えたのに、どうすればいいかなんて分からないけど。逃げ場は確保したってことで。
この家に人が来ないように最低限の備えをここでして俺は人里に向かうことにした。
後で知ったが、この避難場所は迷いの森に認定されていた。おかげで常に冒険者がうろついている。どうしてこうなった。
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