オープニング:ニートに恋愛ゲームはイジメです②
えー、現場のアルヴィースです。
現在俺は一人で鍛錬場に突っ立っています。
フィリスはあのあと真っ赤な顔のまま、逃げるようにいなくなりました。
さて問題です。
俺は、何をどうすればいいんでしょうねぇ!?
完全に思考が停止した。
視線による強制停止よりももっと強烈で、意識が飛ばないぎりぎりラインを見極めたような一撃で、俺は身動きできなくなりました。
ええ、ファーストキスってやつですよ!
27年間彼女なし。つまり年齢=彼女いない歴ですよ!
そ・ん・な・俺・に、どないせいっちゅーんやねん!!
キャラの一つや二つ壊れるよ!
むしろこんにちは新しい俺、さようならさっきまでの俺。
ああいけない。完全にバグってる。しかも自力復活不可能じゃね? ヘルプミープリィィズ!
そこまで完全に壊れた俺を救ってくれたのは、フィリスに気を利かせて周辺で警護にあたっていた護衛さんたち一同でした。
眠れない夜が、始まる。
一夜明けて、おはよう、今日の俺。
現在、昨日に続き絶賛混乱中。
あのあと、護衛さんは走り去ったフィリスを見て「俺が何かしたのでは」と詰め寄った。
これは誤解なんだしすぐに分かってもらえた。
でも、お互い疑問が残って色々話し合った。
護衛さんら一同らに話した内容、逆に教えてもらった内容、そこから導き出されるいくつかの推論。
昨日一晩で状況が大きく変わったと思う。
いくつか疑問に思っていた内容に結論が出たけど、それよりもさらに不可解な謎を抱え込むことになった。
この屋敷に男がいない理由。
ティアの変わらない表情。
旦那はなぜ死んだのか。
ティアをあっさり嫁に出すフィリスなりの理由。
元冒険者が、今は伯爵なんてやっている事情。
筋道が通っているようで、ちぐはぐな行動。
なんで14歳でティアを身籠ったのか
いやもう、もっと早くから考えるべき問題だったと、ようやく理解した、させられた。
既にいくつものヒントはあったし、そこから推測することは可能だった。
だけど、何も考えず、見逃した。
自分の馬鹿さ加減には呆れるばかりで、こいつは一発殴った方がいいかもしれない。
まあ、知ったところで今更な話ではある。
すでに終わった出来事だけに何もできないし、これからのフィリスを支える力も権利も自分には、ない。
これからする事は自己満足で、フィリスには辛いことかもしれない。
でも、知って、もっと仲良くなりたいと思ってしまった。
だからちゃんと聞きに行こう。
この世界に、何歳のときに来たのかを。
「にゃはは。気が付いちゃったか」
フィリスは力なく笑う。
知られたくはなかったよ、と。
「私がこっちに来たのは12歳になったばかりで小学生。アル君は27歳だっけ? アル君はそうだから、このゲームの客層が20代だから、言わなきゃバレないって思ったんだけどねー。余計なこと、教えちゃって、もー。しょうがない子達だねー」
「ってことは、やっぱり……」
「そうだよ。望んだ結婚じゃなかったし、産みたくて産んだ子でも無い。全部無理やり。私にとってあのこは地獄のような日々の残りカスみたいなものだったってわけ」
二人きりの部屋に、フィリスの疲れきった声が漏れる。
聞いた質問への答えは予想通り。
素直に教えてくれたことにも驚いたが、予想通りであった事にもやはり、驚いてしまった。
フィリスは最初に言っていた。
基本ハーレムで、一夫多妻が当たり前。理由は出撃で男が死んでしまい、男女比が崩れてしまうから、と。
つまりそれは結婚自体は20歳でもそれ以降でも普通にするし、それ以前が少ないということでもある。ゲームなんだし、現実世界にある程度は準拠するのだ。常識は。
そしてフィリスは13で結婚、14で妊娠、15で出産している。こちらが異常なんだ。
そして望まぬ娘を愛せるか、と聞かれて「はい」と答える事は、簡単ではなかった。
何があったのか、何をしたのかは聞かない。
でも、ティアが大人びている事、フィリスの発言に忠実であること、無表情なのは、そういう何かがあったんだろう。
逆に、今のフィリスがティアの自由意思を認めているのも、それが原因だと思う。
だけどティア自身、浚われた時に「フィリスは公私混同せず、自分を見捨てる」と考えていた。この母娘の間にある溝は、きっとまだ埋まっていない。
お互いがすれ違い、普通じゃなくなってしまったわけだ。
今は死んでしまった男に、嫌悪と憤りを感じる。
さすがにこれをそのまま見逃すのも癪だし、あとで喚んで殴ると決めた。そうしなければ気が済まない。
どうでもいい下種の事はいったん横に置き、俺がこれからフィリスに何ができるかを考えよう。
といっても、できる事は限られているし、話の中身は予想通りだからやることは決めている。
俺が主人公でフィリスやティアがヒロインなら、
俺は主人公らしく二人を助けようじゃないか。
俺は戦闘専門のゲーマーで恋愛ゲームなんてやったこともない。
リアルはひきこもりでニートのごく潰し。
対人恐怖症を患い、視線だけで暴走する危険人物。
だから彼女一人作れない魔法使い予備軍。
どうしようもないダメ人間だが、泣いてる女の子を助けたいって気持ちぐらいあるんだよ。
ニートに恋愛ゲームはイジメでしかないが、
主人公、やってやろうじゃねぇかコンチクショウ!!!!
ようやく1章が終わります。
幕間を挟み、学園生活になります。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。




