クエスト:誕生日プレゼントを用意しろ②
アイテム制作専用クラスはありません。どのクラスでも頑張ればなんとかなります。
まずはインゴットの作成である。
手持ちは最上位のドラゴン素材にあんまり使う気にならない宝物剣。異世界へ来る直前に拾ったもので、あまりランクの高くないものだ。
ドラゴンの素材のうち、骨とウロコを粉にしたものを用意してきた。
宝物剣はこの場で宝飾品を外して金属部分だけにする。ミスリルにルーンメタルで出来ているから、魔法への親和性と強度の確保がメインになるか。
なぜか宝物剣を取り出した段階で驚かれ、宝飾品を外す段階で悲鳴が上がった。なんなんだろうね。たかが1万Gもしないような安物相手に。
さて、素材の準備ができたら炉の状態を確認する。
火の入った炉に手を突っ込み、温度を確認する。
ちょっとぬるい?
「すみません、ちょーっと温度上げていいですか?」
手を炉に突っ込んだまま振り向いて声をかける。後ろで俺の行動を見ていた二人、アウラさんとおっさんは目を見開いて固まっていた。
「いや、炉の温度上げていいですか?って聞いているんですけど」
炉に火を入れるということは、薪などを消費するということである。あんまりのんびりすると、無駄に燃料を消費することになるからさっさと返事が欲しいのだが。
「……ああ、少しぐらいなら、構わないが…………」
おっさんが搾り出すように返事をした。
しかし、「ちょっと」か。つまり、それは炉の耐熱限界が低いということである。
普通の鉄を扱うのなら1000度も出ればいいのだろうけど、ミスリルはともかくルーンメタルはこの3割以上の熱が欲しいところである。ルーンメタルの生成に必要な基本温度は2000度。今の炉は1400度ぐらいなので、可能なら4割以上の熱量が必要で、3割増し1820度では下限ギリギリ。
しょうがない。ちょーっと頑張りますか。
まず、炉の材質を変化させる。≪上位錬金魔法≫で耐熱性能を高める。材質変化なので恒常的に効果がある。
≪エンチャント≫で≪完全火耐性≫を付与する。こちらはインゴットを作る間だけの簡易的なもの。効果があるのはせいぜい1時間である。
炉の温度上昇ってことで、風と火の≪精霊魔法≫を同時展開。使うのは基本の≪発火≫≪送風≫ではあるが、もともと炉の中にあった燃料を消費して一気に火が強くなる。長々と維持するの必要があるので、あんまり凝った魔法は使いたくない。本当なら火の精霊石を使うのだが、今は自作以外に入手方法がない貴重品なので断念する。
炉の温度が必要十分なレベルに達したらパウダーを投入。炉に変化はない。安定したことに安堵し、次のステップに移る。
ルーンメタルを投下。炉の中のルーンメタル相手に魔力付与を行い、しばらくこの状態を維持。
30分も経つと、魔力に反応してパウダーがルーンメタルを吸収する。このパウダー、一緒に焼べた魔力を帯び溶解した金属を吸収する特徴がある。吸収可能なのは1種類だけで、一度に2種類焼べた場合はなんの反応もない、不可思議素材である。
全部吸収されたことを確認し、次にミスリルを投下。
今度は魔力を付与せずに、パウダーと混じりながら溶けたミスリルを炉から取り出す。
炉の出番はこれで終わりである。
取り出してすぐに≪上位錬金魔法≫を使う。≪イメージ設計≫で自分の中にあるイメージ通りの形状に整える。今回は腕輪にしようと思う。指輪以外で、材料を考えればこれがベストだろう。
形状が変化していく間に、最初に外した宝飾品の中から使えそうなものをはめ込んでおく。大粒の宝石を5個ほど選んで取り付ける。色違いなので、互いの美しさが際立つだろう。
余談だが、ここではめ込んだ宝石にはもれなく≪完全火耐性≫を掛けてある。そうしないと、熱で宝石が傷んでしまうのだ。宝石は素手で触らない、火に近づけないのが基本である。前者は真珠、後者は炭素ベースの宝石の話であるが、どの宝石にも守ったほうが良い。
≪イメージ設計≫を使用したが、最後の仕上げは≪彫金≫で行う。
魔法による形状変化は、外見を整え基本性能(能力値アップなど)への補正効果はあるが、追加スキルや追加魔法には結びつかない。それらは≪彫金≫の範囲だ。
今回の腕輪はサイズから2個分の追加スキルを付与できる。
一つ目、≪自動回復効果≫を付与するために縁に植物の蔦をモチーフにした枠を彫る。
二つ目、≪護りの場≫の効果を付与するため、甲殻ベースの絵を打ち出す。大小合わせて範囲防御までランクを上げる。
久しぶりに全力でアイテム制作をしたので、インゴットの制作開始から4時間もかかってしまった。手早くやるより、手間をかけ気持ちがこもったアイテムのほうが喜ばれるだろう。
今回の出来は満足のいくもので、オークションなら100万Gを狙えるだろう。原価のうち金属は1万G未満でも、最上位ドラゴンの素材を使ったからそれだけで60万G以上の価値がある。あとは技術料であるが、わりとスキルをカンストさせた作り手は多いので、そこまで高くはならない。
なお、ドラゴンのウロコは最低10枚以上ないと値崩れする。これは消費枚数の一番少ない小盾を基準にしている。売るときは仲間内で数を調整して売上を再分配するか、今回みたいにアイテムの補助材料に使う。
長時間ぶっ続けで作業していたが、後ろで見学している二人は何も声を上げなかったし、動く気配もなかった。
振り返れば二人とも完全に固まったままだった。
おっさんはどこかぎらついた目をしていて、アウラさんはなんか頬が紅潮している。何か怖い。
「出来上がりましたけど……」
どう言えばいいのか分からずに二人に声をかける。借り物の炉は既に火を落としてあるし、片付けが終わったら帰りたいなー、と思う。
反応がないので、さっさと片付けをして帰ろうとすると、
ガシッ! ガシッ!(おっさんとアウラさんに肩をつかまれ) グイッ!(持ち上げられて) プラーン……(連行される)
片付け、ちゃんとやりましたよー。お腹がすいたからご飯を食べたいんですけどー。これって拉致じゃないですかー。
……タスケテー。
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