クエスト:誕生日プレゼントを用意しろ①
恋愛ゲームの暦にオリジナリティっていらないですよね。
雰囲気よりもわかりやすさ優先です。
クリスマスとかバレンタインのようなイベントを消すのはもったいないです。
フィリスのところに厄介になってから、3週間が経った。
いままで全然気にしていなかったけど、こちらの暦は閏年も含めて地球準拠。各種イベント(クリスマスや正月、盆にひな祭りなど)も形を変えてやるらしい。
もちろん、恋愛ゲームなのでバレンタインデーとホワイトデーは完備されており、海外の似たような風習、ブラックデー(4月14日にバレンタインデーとホワイトデーに縁のない男女が黒い服装でジャージャー麺を食べる韓国の風習)にローズデー&イエローデー(5月14日に恋人同士がバラを送り合い、恋人がいない人はカレーを食べる。やはり韓国の風習)まである。
攻略狙いなら誕生日イベントとか気合を入れる必要があるけど、俺にゃぁあんまり関係ないなぁ。
関係ないけど、よその国から来た留学生とかだと、逆に誕生日を迎えた人が祝うのが普通ってパターンもあるので侮れない。地球だとロシアの誕生日だったか、それ?
現在10月3日で、フェリスの誕生日が10月26日、ティアが5月1日、マリィは2月14日である。俺の誕生日は、8月15日。こっちに来てから歳をとっているわけで、今は11歳ってことにしておく。
何気にティアと出会った日が俺の誕生日だったのは、偶然じゃなくて何かの奇跡だと思うよ。
フェリスも気がついたみたいで、滅茶苦茶ニヤニヤしてたのがウザかった。「誕生日プレゼントはティア自身だよ~。返却不可だからね~」とか、本当に親の発言かと。少し全力出して〆た。こめかみをグリグリされ泣き出したので、ちょっと和んだ。
さて、こんな話を聞いたわけだが、フェリスに何か贈るのも吝かでない。
今の俺はフェリスの屋敷で料理人兼未来の旦那様(違)をやっている。つまり、料理やお菓子を作るのは職務であってプレゼントに向かないかもしれない立ち位置なのだ。
女性へのプレゼントって、やっぱり貴金属関係? 装飾品? いやでも、何か誤解されないか? しかし花束っていうのも芸がないし。
……装飾品、作るか? 自分で。
一応、≪彫金≫スキルはカンストしている。しかし、ここだと炉がないので炉を用意するところから始めないといけない。
誰か詳しい人っていたかなぁ?
適当に、近くの人を捕まえて聞いてみるか。
マリィは今回除外する。相談したら内容が筒抜けになりそうだから。こういうのはやっぱり秘密裏にやるから楽しいのだ。
そのかわり、この間から少しだけ仲良くなれた新人さんに話を振ってみる。
兵隊さんの武器はどんな管理方法なのかね? 武器防具屋ヘの伝手はあるかな?
「うーん。伝手、かぁ」
「無理っぽいですかね?」
「さすがに子供に貸してくれるような店は知らないかなぁ?」
「やっぱり、年齢がネックですかー」
「でも、一応聞いてみるわよ。作ってるトコを私にも見せてくれるなら、だけどね」
「……了解」
新人さんことアウラさんは、一応だが伝手があるらしい。なんでも、訓練兵時代からの馴染みの店だと言っている。
訓練兵の武具は支給品だけど、管理は自己責任らしい。なので、修理依頼に毎週通っていた店を紹介してくれるという話になった。
最初に渋ったのは多分ブラフで、実際はかなり融通が利くみたいだ。たぶん、店の人は可愛い女の子に弱いに違いない。ほかの新人さんも美人だけど、頭ひとつ抜けて“華のある”人だし、可愛がってもらっているのだろう。
アウラさんの見た目は美人系じゃなくて可愛い系の人。お団子頭がトレードマークの元気な娘だ。今の俺よりは大きいけど、身長がほかの隊員さんより小さい145cmぐらい。そのかわり自己主張の強い胸の持ち主で、本人はバランスの悪さを嘆いている。
そんなアウラさんご推薦の店に、二人で休みに行くことになった。
「じゃーん。ここが私の行きつけ、『レオナール武具店』よ」
アウラさんの案内で来たのは、大通りの東よりにある小さいが小奇麗な店舗だった。
店はガラス張りで中が見え、剣を中心に半面を武具、金属の部分鎧を半面に置いている。しかし、小さい店なので品揃えについては今ひとつ不明瞭で、外から見えるのはこの店の基本的な値段設定を見せるためのようだ。
「レオおじさーん、いますー?」
アウラさんは躊躇せずに大声で店の奥へと呼びかける。店番の少年らしき男の子がオロオロしているが、いいのだろうか?
アウラさんは店員限定なドアから勝手に奥に進む。俺はさすがに従いていくとマズそうだし、店舗側に残る。店番君と顔を合わせ、互いに苦笑する。いつもあんなんなのかね? 仲が相当よろしいようで。
しばらくすると、奥から声が聞こえる。
「おお、アウラちゃんじゃないか。最近来てくれないからおじさん寂しいよ。で、今度は何の用だい? 武器の修理か? それとも、何か買っていくのかい? もちろん、ただ遊びに来てくれただけでも嬉しいんだがね」
「今日はね、ちょーっと無理かもしれない相談に来たの。おじさんしか頼れそうな人が思い浮かばなくって。ね、おじさん、アウラの頼み、聞いてくれないかな」
「おお、アウラちゃんにそこまで言われちゃ断れないよ! おじさんに任せなさい!!」
「きゃーっ、おじ様さすが! 頼りになるわ!」
なんか、すごい会話が聞こえてきた。
どこぞのキャバクラか援交みたいに聞こえるのは、俺の心が汚れているからだろうか?
声からして50ぐらいのおっさんが、20前の娘になんてことを言っているんだ。めっちゃ浮かれてるよ。
「でもねぇ、今度の頼みはおじ様でも難しいかもしれないの」
「……ほぉう。ってえ事は、仕事絡みかい。俺の腕を知って、難しいって言うのか?」
「ううん、おじ様の腕の話じゃないの。おじさまにお願いしたいのは……」
「続けな。俺しか頼れねぇとまで言ってくれたんだ。大概の無理は答えてみせらぁ」
「お店の炉をね、貸して欲しいの」
声しか聞こえない状況であれだが、仕事絡みって流れになった途端、おっさんの声の質が変わった。
プロだな。
「へぇ。何をするんだ? 俺がやったらまずいのか?」
「大切な人へのプレゼントだって。人任せにできないの」
「……ま、アウラちゃんの頼みだしな。こっちが見てても良いってんなら貸してやるさ。どんな奴だ?」
「一緒に来てるわ。こっちよ」
お。こっちに来るみたいだ。
それにしても、聞こえてくる会話の途中から店番君の顔が思いっきり変わったのが面白かった。
推定年齢10歳程度の子供が金属加工をやりたいなんて言えば、普通何事かと思うよな。
「アウラちゃん。どこにいるんだ、その炉を借りたいって奴は」
店まで出てきた熊みたいなおっさん、店内を見渡し開口一番そんなことを言った。
まあ、俺を見ても子供が武器を見に来ている、程度の認識だろうね。普通は。
他に客の姿はないし、不思議がるのも無理はない。
分かってもらうために声をかけよう。
「あ、借りたい奴ってのは俺です」
「アウラちゃんよ、マジか?」
「マジです。本気と書いてマジって読みます」
「……嘘だろう」
「さっき、貸してくれるって言いましたよね」
「ああ、確かに言ったけどよ、これはねぇだろ」
俺の申告におっさんは脱力し、アウラさんは楽しそうに笑ってる。
白楼族は全体的にSな人が多いんだろうか。フィリスがチマチマ俺をからかうのに似ている。
「まあ、変なこともするけど、よろしく頼みます」
俺のことを確認せずに言質を取られた段階で、おっさんは俺に炉を貸す以外の選択肢がない。アウラさんに嫌われるのを覚悟すればその限りでもないが。
でも、それは無理そうだよな。さっきの会話を聞いてたら、かなりご執心みたいだし。
おっさんには悪いけど、ちゃっちゃとインゴットを作りますかね。
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