クエスト:新人兵士と仲良くなろう
少し短めです
4日かけてセイレンに帰還した。
安全を考慮し、フィリスのところに居候することにした。マードックさんへの挨拶をする前に、フィリスとはいろいろ話をしておいたのだが。
フィリスは考えの足りない部分についてじっくりねっとり泣くまで追求してくれた。あの二人とは方向性の違う責めに、俺の(精神的な)HPは0になったよ。
言葉攻めが終わったあとは妙にツヤツヤしているから、あれは趣味みたいなものかもしれない。フィリスとの関係は見直そう。同郷の相談相手、他にいないかなぁ。
言い訳タイムが終われば今度は時系列に沿って何があったか、事細かに話す。フィリスがわからないところは質問に答えつつ、一番重要な部分に話が及ぶ。
「と、言うわけで最後に俺の厄――たぶんトラウマによる暴走をどうにかしていったわけだ」
「じゃあ、暴走はもうしないってことでいいのかな?」
「わからん。試してないし」
今後重要になる、暴走について話をする。
フィリスは顎に指を当ていかにも「考えています」ってポーズをしている。
俺は出されたお茶を飲んで、あさっての方へ視線を動かす。
二人とも神様に言われたから大丈夫と考えないあたりは、まあ当然である。
直接会って話をした身としては、あれが神であることは疑ってない。が、その祝福? については全然信用してない。奴もなんだかんだで自分のやったことについては直接的な言い方をしなかったからなぁ。神様ってのは抽象的な表現を好むのかね?
これについてはいくら考えても、やるしかないって結論なんだけど。悩んだふりは様式美ですよ。
「では」
「しょうがないし」
「実験ですね」「実験だな」
危険だからと目をそらせない部分に着手しましょうか。
死なれたらまずいひ人は外して、知り合い監督のもと、死んでもそこまで痛くないのと一緒に郊外にやって来た。
馬車で移動したとき、一緒に乗った白楼族の新人娘5人はこちらに恨みがましい視線を向けていた。気持ちはわかるけどさ、そのプレッシャーで俺が暴走するかも、とは考えんのかね。この小娘共。
移動中の2時間程度、全く口を開かずにこちらをチラ見したりするのはやめて欲しい。マリィとは別の馬車なので、俺も話す相手がいない。気を紛らわせるには、小娘共がなんとなく気になって集中できない。
何か鬱陶しい時間が過ぎ、目的地についた頃には俺の精神はずいぶんグラついていた。
くそぅ。寝た振りでもすればよかった。
街からある程度離れた平原。ここで“実験”を開始する。
全員に俺が暴走したら目を閉じるように言ってある。暴走時の攻撃対象はこっちを見る人間なので、目を閉じるだけでなんとかなる、はずだ。
俺自身は拘束具でガチガチに縛り動けなくしてあるが、魔法を使えば意味はない。気休めなのだが、やらないよりはマシだ。
「じゃあ始めてくれ」
それまで俺から目をそらしていた面々が順番にこちらを見る。
10人を超えた辺りからプレッシャーを感じ、15人目で脂汗がにじむ。20人目、マリィがこちらを見た瞬間、頭の中は真っ白になり俺は意識を失った。
「トラウマはそのままに、俺の意識を失うように調整したのか。すごいな、あの神様」
都合5回ほど気絶し、暴走はしないことは確定情報とした。
暴走はともかく、トラウマを消すのは本人の努力に任せるのは好感が持てる。なんでもかんでも神様に頼りきりってのは悪いし、情けない。
新人連中は見られるだけで気絶する俺を見て、情けない子を見るようなのが半分、少し安心したのか優しげな顔をするのが半分になった。
これからフィリスに世話になるのだから、彼女たちとも交流したほうがいいだろう。
とりあえず、お菓子を作るとしよう。3人に作るんだから、他の人の分を増やすぐらい、それぐらい……昔もやらされたよなぁ…………。
なんか、昔の試練を思い出してしまった。連続ログイン時間オーバーでログアウトするまでお菓子を作り続けた記憶は、もう一回封印しよう。
気を取り直す。彼女らには今日の夕飯を作ることで、仲良くなるきっかけ作りに挑戦しよう。
ティアやマリィが肉好きだったから、白楼族は肉が好きな種族なのかもしれない。肉料理と嫌味にならない程度の野菜サラダなら気に入ってもらえるかもしれない。美味しいは正義。なんとかなる。たぶん。
肉野菜炒めよりも、BBQ的な焼肉に、野菜付け合せがいいかな~と考えながら、セイレンに行く馬車に乗った。
帰りの馬車は、行きと比べて雰囲気もマシになり、少しは会話もできた。
俺の実力について少し疑われたが、信用するもしないも自由だし、「見てから決めればいいと思う」と返した。
「それもそっか」と笑って返してもらえたときは、何か達成感があったよ。
今日の夕飯は頑張って作ろう。なんかやる気がでた。
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