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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
1章 入学前、出会いの嵐
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エンカウント:???

タイトル詐欺はまだ続きます。

 村は既に戦場である。

 悲鳴と叫びが響きわたり、血を流し倒れる人もいる。


 襲っているのは人ではなく、魔物。獣の身に魔力を宿し、知性を得てはいないものの、いくつもの魔法と特殊スキルを有する、人間種の脅威。

 狼をベースに炎を操る(すべ)を得た、そのまんまの名前を持つ魔物、『ファイヤ・ウルフ』。それが取り巻きの狼を率いての登場だ。

 レベル帯で言えば20レベルに相当し、取り巻きまで含めれば、安全に討伐するなら25レベルの6人パーティをぶつけるのが妥当なところだろう。一般人(5レベル以下)が太刀打ちできる相手ではない。



 魔物は公式の設定をそのまま採用されているなら、何らかの形でできた『魔力のたまり場(スポット)』の影響を受けて原生生物が変異して生まれるという。どこぞのダンジョンゲームのごとく、ダンジョンが生み出すようなケースもある。ダンジョン=『魔力のたまり場(スポット)』だから、そこで生活している生き物はみんな魔物になるのだとか。人間もそれが理由で長時間ダンジョンに潜ってはいけないことになっている。

 今回は犬かそこらがベースになったのではないかと推測できる。魔獣は配下を召喚する能力を持つことが多いから、もともと群れがあったわけではないはず。



 ≪高速飛行≫(ソニックバード)を解除し、≪浮遊≫(レビテーション)に切り替える。

 高度は維持したまま、地上50mで待機。

 戦場を俯瞰すると共にマップを併用して排除対象をロックオン。群れの総数は獣50と魔獣2。時間がないので即時殲滅を最優先に、保護対象への配慮を次に、使える魔法を即決する。


「光、無数の槍となりて敵を討て≪殲滅の光槍(ゲイボルグ)威力低減(エクス)広域化(テンシヴ)≫」


 簡易詠唱で使うのは光属性の上位精霊魔法、≪殲滅の光槍≫(ゲイボルグ)。必中と即死効果を持つ最上位バージョンも存在するが、そっちは使えないしオーバーキル(やりすぎ)なのでどうでもいい。

 ≪殲滅の光槍≫は上位魔法だけに最低限ではあるが詠唱が必要になる。しかし、特殊効果のひとつが「範囲内にいる敵以外にダメージを与えない」という魔法なのでとても重宝する。主に、囮ごと敵を薙ぎ払うときとか。

 あとは魔力の追加消費で範囲拡大する。威力が犠牲になるけど、もともと50レベルモンスターまでならだいたい必殺だから問題ない。


 俺の目の前に光でできた槍が顕れる。

 手に取り、狼たちの中央に向けて投擲すれば、槍は無数に解れて降り注ぐ。一つ一つが狼やファイヤ・ウルフを一撃で仕留め、戦闘とも言えない鏖殺で幕を閉じる。

 こちらに来てから初めてのモンスターポップだけに焦ったが、レベル差があるのでぶっちゃけ作業以下でしかなかった。


 マップを確認すれば点滅する青マーカー(瀕死の村人)がいくつか。

 さて、今度は治療に移りますかね。

 ポーションを持ち込んであるから、危険な状態の人以外は渡すだけでいいかな?

 俺はゆっくり地上に降りた。



 降りた先で数人の冒険者らしき人がこちらに来た。魔法の明かりを手にしているのではっきり見える。一様に鎧を身に付けているが、全員戦士職かな。バランス悪いな。

 あ。ウォレスさんがいる。あっちも気がついた、か。いや、前にいっぺん会っただけだし覚えてないか?

 冒険者の一団の中からリーダーらしき人が前に出た。30過ぎのデカイ筋肉ダルマ的戦士だ。

 鎧を見れば返り血を浴び、細かく破損している。彼らが村を守るために戦っていてくれたから、俺も間に合ったんだろう。


「すまないがちょっといいか?……君が魔法で助けてくれた、ということで間違いないかな?」


 今の装備は隠密行動ではなく高速移動のために風の精霊加護を付与された物で揃えている。よって、顔を隠していないし、年齢はなんとなくわかるだろう。子供のような外見の俺に、それでも助けてくれた相手だからと高圧的に出ないのは好感が持てる。見た目に反して丁寧な人だ。


「そうですよ。細かい話は怪我人を治してからにしませんか?」


 次の優先順位は死者を出さないようにすること。最低限の治療をしたら次は消火かな。予定をサクサク立てていく。

 冒険者さんには悪いが、相手をするのは思考の片手間になっている。


「あ、これ回復薬です。治療の手伝い、お願いしますね」


 たぶん村のために戦ってくれた人たちだし? 治療にも手を貸してもらおう。村の人に渡してもいいけど、目の前の人から順に扱き使えばいいだろう。

 瀕死の人が8人なので、アイテムボックスにある下級のHPポーションをとりあえず20個取り出して押し付ける。どこから取り出したのか理解できなかったようだが、すぐに「分かった」と短く返して仲間と共に散っていった。優秀な冒険者なのだろう、説明が少なくていいのでとても助かる。

 俺は俺で彼らの手が届かない、気が付きにくい人の救助と治療を開始する。

 さて、逃げる準備もしますかね。



 人間、心に余裕がなくなると視野狭窄に陥るものである。

 今みたいに救助や治療を必死になっているうちはいいけど、ひとたびこれからを考えてしまえば俺に対し集団で何か仕掛けてくる可能性が高い。助けたからといって、必ず感謝されるとは思ってない。たまにいるんだ、「なんでもっと早く来なかったんだ」って言うのが。一人出ると周囲に感染するし。なら自分でどうにかしろよと言いたい。

 なので逃げるなら混乱してる今のうちがベストである。

 今は引きこもり生活中だから、騒がれても痛くないし。


 考えながらも治療はする。

 さっきまでケガで泣いていた小さな女の子が、瞬時に怪我が治って驚いている。かすり傷みたいなものだったが、ついでである。「ありがとう、おにいちゃん」と言って離れていった。

 マップを確認すれば俺が治そうと思っていた相手には冒険者が助けに行った。

 ほかの場所もだいたい治療は終わったと見ていい。瀕死(点滅状態)は解除されたのなら、あとは知らん。大怪我の一人や二人はいたかもしれないが、渡したポーションで対応して欲しい。

 消火については村人が頑張ったのだろう。俺の出番を待つ間もなく、もうほとんど鎮火している。



「もう、行くのか」


 撤収しようと行動に移す寸前、ウォレスさんが話しかけてきた。


「ええ、もう手助けも必要なさそうですから」

「街には、セイレンには戻らないのか」

「……今は、まだ」


 今は。そう言っても、また街に戻れる保証などない。俺が爆弾のような存在だというのは変わらないのだから。

 それに、トラウマで暴走することがなくても、一定以上の戦力をもつ個人というのは危険すぎる、というのもある。

 ウォレスさんは頭をガシガシ掻きながら納得いかないといった顔をしている。


「俺に難しいことは分かんねぇよ。だが、マードックの野郎とか、お前に戻ってきて欲しいって奴がいるんだよ。それだけ覚えとけ」


 それだけ言ってウォレスさんは背を向けて、





 俺はウォレスさんを右手で地面に押し付けた。





 とっさの判断とはいえ、上出来の部類である。

 ウォレスさんは事状況を理解できていないのだろう、俺に怒りの視線を向け、怒鳴ろうとする。

 が、彼もすぐに理解した。


 すぐそこにあった建物が丸く刳り貫かれ(・・・・・・・)、俺の左腕がねじ切れて(・・・・・)いることに。



 HPは3割削られてしまったが、この程度なら上級回復魔法一回で治療可能範囲である。

 MPは4割程度しかないが、まぁなんとかなるだろう。

 ゲーム中とは比べ物にならないほどの痛みはあるが、意識を失うほどでもない。左腕も今は気にしない。

 というより、自分の状況なんて考える余裕はどこにもない。


 何せ、目の前に熟練者以上の、単独討伐なら100レベルがきっちり装備とアイテムを整えて挑むような、



 ――魔神がいたのだから。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

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