ターニングポイント
名前をもらったばかりのアルヴィース。思い選択を強いられます。
今回は少し長めになっています。
悪夢のような夜が明け、日が昇る。
いつもの時間に起きたが、こちらで厨房を借りることはできなかったので、朝食までの時間つぶしに昨日の話をまとめてみた。
・ヒロインは7人以上。人数は主人公の能力値合計に比例する。
・ヒロインはそれぞれが「属性」を持ち、対応するスキルを有する。
・主人公側にスキルはないが、
・属性は一人一つである。
・ヒロインの属性は重複しない。
・ヒロインのスキルはイベントのオート進行。回避できない。
・学園に通うのは12歳から18歳まで。
・フラグの回収状況によってはヒロイン降格もありうるが、発生時に主人公へペナルティが加わる。
・エンディングはハーレムエンドを正義とする。
・二つ目以降の条件は、例外が存在する。
・本気になったヒロインからは、逃げられない。
うん、かなり酷い。
特に最初のが。
別ゲーでレベルカンストしたキャラを引き継いでいるから、最悪を想定すべきかもしれない。この街から逃げるとか。
属性については、フィリスが「姉」か「未亡人」、ティアが「妹」か「無表情」らしい。フィリスの「姉」は年齢を考えろと言いたい。言えないけど。
二人はセットで「母娘」属性が確定とか、やはり運営に小1時間ほど(略)。
他にも「実妹」「義妹」「となりの家のお姉さん」「幼馴染」「転校生」「委員長」「王女」「生徒会長」「教師」「男装女子」「戦闘狂」「魔法マニア」「ツンデレ」「ヤンデレ」「合法ロリ」などがあるらしいが、一部ヒロイン属性と思えない単語が混じっているのはなんでだ?
スキルについては、共通スキルに加え、その属性にふさわしいイベントを起こす為のものがあるらしい。
時折、物理法則・魔法効果を完全に無視することもできる。具体的には、昨日風呂に入ったとき、扉を≪施錠≫で封鎖したにもかかわらず、「背中を流しに来たわよ~」の一言で≪魔法解除≫された。
「双子」とか「3人娘」など、数人で発揮される属性だと、スキル効果はすごいことになるらしい。どうすごいかは秘密にされたが、きっとろくでもない。
主人公へのペナルティについては、不幸になるとしか言いようがないらしい。「私は頑張ったもん」とフィリスは言っていたが、掲示板では、「犬(猫)のふんを踏んだ」「靴が壊れた」程度の軽微なものから、「授業で大怪我をした」「ダンジョン実習で設定外のモンスターに殺されかけた」といった致命的なものが確認されている。
大したことがないと思うのは間違っているだろうか?
ハーレムについては「それなんてエロゲ?」とリアル?で言う羽目になった。
国の軍隊に入れるのは男のみ。戦争はしてないけど、いつも魔物被害で死者がそれなりに出る。そのために30歳以上の男女比は1:5になる。
結果、男が複数の女性を娶る一夫多妻制を導入することでバランスを保っているとのこと。
しかし、こっちの結婚年齢って基本15歳からで、10代で子作りするのも当たり前。フィリスも13で結婚、14で妊娠、15で出産してるじゃないか。ハーレムにする意味があるのかどうか、是非聴いてみたい。
例外があるのは構わない。まあ、そんなものだろう。
最後の一つは大問題だ。
フラグ回収が終わったヒロインは、「主人公サーチ」「限定的瞬間移動」「思考察知」「敵警報」などの特殊能力を獲得する。
突っ込んだら負けのようなこれらを駆使して、侍ることが多いというのだ。後半戦は取巻きを宥め、誘導し、時に隙を付いて他のヒロインのフラグ回収をするのが楽しいのだとか。……何か違わなくないか?
感想は横に置き、常にべったりされる生活は勘弁して欲しい。
俺の場合はトラウマモードになりかねないからなぁ。
とりあえず俺は「フラグ回収なんてしない」と朝日に誓った。
朝食を食べ終え、挨拶を済ませて次回から普通に会えるように手続きをし、俺は家に帰ってきた。
いや、家に戻ろうとした。
家の前、めっちゃ人がいるんですけど。
玄関先でマードックさんが囲まれ、その後ろにティアの姿が見える。ついでに知らない白楼族のお姉さんもいる。
囲んでいるのは見知らぬ女性とその家族? 怒っているという訳じゃなく、何かお願いしている。
マードックさんは彼らに困惑し、周りの人を宥めているように見える。
状況がつかめないので、≪聞き耳≫で声を拾ってみると……
俺の所為ですね、はい。
この間、ティアの護衛を助けるまでに何人もの女性を助けた。
正直、タイムアタックの途中ってことで、いちいち相手をする気のなかった俺は助けた人を居住区の近くにあった孤児院前まで運び、いくばかの金銭を渡しては次に向かうといったことを繰り返していた。まともに数えてはいないが、10回以上往復した気がする。
あそこにいるのはその時の人や関係者のようだ。俺に礼を言いたい、会わせて欲しい、と言っている。
なんでこうなった? 彼女らには顔を見せていないのに。
ちょっと考えればその答えはわかる。
白楼族のティアを連れ回したことだ。
あの時、ティアをずっと抱えたまま動き回っていたのだ。
白楼族
↓
領主様関係
↓
超有名
この図式が成り立ち、白楼族であるティアは超目立つ。
昨日の午後はティアを放置したので、きっとティアが外に出たときにウチがバレたんだろう。
あとは噂と同じ速度で街中に俺のやったことが広まった、と。
下手すれば昨日の夜から来客があったかもしれない。
とにかく、考えが足りず慌てすぎたのだ。
……マズイ。
今いる人数はざっと30人。
もし今出ていったら確実にトラウマが発動する。
とりあえず、最悪を回避するためにマードックさんの視界に移動、両手を合わせて謝るジェスチャーをしてからフィリス邸に引き返すことになった。
昨日の今日どころかついさっき出ていった客がまた来たにもかかわらず、フィリスは俺を快く迎え入れてくれた。
マードックさんのところには人をやって俺がこちらにいること、周りの人に俺のトラウマについて説明してもらうことにした。
トラウマについてはあまり説明したくなかったが、助けた相手だし、多少は気を使ってくれると信じよう。
俺の暴走は、人が死にかねない。むしろ、今なら高確率で死ぬ。前回やらかした時は、机を片手で振り回して視線を向ける人間全てを排除しようとした。怪我人が10人以上出て、警察沙汰になった。心身喪失による情状酌量の余地とか言われて無罪になったけど、記憶に残る光景を思い返せば、死刑になっても不思議ではないと思える状態だった。
「多数の視線に対する恐怖」は今でも鮮明に思い出せる。
誰かといたい、つまりは視線を向けて欲しいという感情があるにもかかわらず、あの時と同じ人数、20人以上の視線に関してはフラッシュバックを余儀なくされる。
昨日の戦闘で俺のことの一端を知るフィリスは、多少の躊躇いをみせたが、このことも引き受けてくれた。
当面の対応が終わって、ようやく一息つく。
「これから……どうするの?」
フィリスの顔は、戸惑いと憐憫の情が透けて見える。領主だというのに実に表情豊かである。
フィリスの言葉はこちらへの配慮もあるが、避けては通れない問題を突きつけてくれる。
あの時見捨てなかったこと、助けたことは後悔していない。
だが、結果として俺はこの街で生活しにくい状況にある。
言えばフィリスは俺を匿ってくれるだろう。
しかし、そこまで世話になるのは嫌だ。
マードックさんは俺を負担にならないレベルで働かせ、家事をやらせることで心理的負担を軽減してくれた。
だけどフィリスのところで同じようなことはきっとできない。
俺は、選択しなくてはいけない。
これからの事を。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。




