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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
4章 最後の平穏
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幕間:エイムウェル=バストメア=オルコック

懺悔します。

初期案ではガロウィンとオルコックの名が反対でした。PKのときに公爵家だからと使い、シエルの時に気が付きました。

詳しくは「エイムウェル」「バストメア」「オルコック」で検索すると分かります。

「本当に人間じゃなかったの、あの小僧」

「報告された通りの化け物でしたな」


 オルコック公爵とその腹心である騎士は先ほどまでの会食を振りかえり、ため息を吐いた。

 アルヴィースと名乗る謎の少年との顔合わせは、この二人の気力を大きく削っていた。


「迦月殿からの報告では戦士として一流、魔術師としては“超”一流。この国の宮廷魔術師“程度”では相手にならない実力者。別ルートからの情報では生産者・指導者としても見逃せず、最近は怪しげな儀式を果樹園でする魔法研究者でもある。……話半分どころか一つとっても眉唾ものだというのに、全部事実だからタチが悪いですなぁ」


 迦月の実力を良く知る騎士は、その評価の高さを(いぶか)しんだが、こうやって目の当たりにすればそれがすべて事実だと理解できた。足の運び、周囲への気の巡らせ方、それらを見れば精強で知られるオルコック騎士団の中でも5人しかいない大隊長とほぼ同格。魔力については宮廷魔術師や騎士団所属の魔法騎士のいずれも相手にならない、倍以上の差があった。術士としての腕は知らないが、その膨大な魔力をもしも効率良く運用してくるのであれば相当厄介だ。

 国防を、治安維持を担う者として見逃せないと騎士は思った。それが敵味方どちらであっても。

 勿論そんな実力者が見た目通りの年齢である事は常識をあてはめるまでも無くあり得ないので、人外の化け物という評価に落ち着いたのは仕方がない事だろう。


「だというのに野心も欲も無い。地位や権力の意味を知って要らんと言いおった」

「まあ、珍しい物や宝石が糸口になりそうなのが分かっただけでも良かったのではありませんか?」

「どうでもいいわ、そんな事」

「そうですなぁ」


 腹心の的外れな言葉が軽い冗談と分かっていても公爵は少し苛つく。

 オルコック公爵の知る『実力者』とは何かしらの強い願いを胸に秘めている。当然それを察知するのに長けた公爵ではあるが、アルヴィースには「空っぽ」という評価しかできなかった。

 会話の中でモノ作りに必要な素材の入手について愚痴を漏らしたことから、魔法の触媒に使われる事の多い宝石や上位の魔物から採れる素材が交渉の糸口になりそうという事は知る事が出来た。

 だがそれではちょっとした商売の話しかできず、長い付き合いをする為の交渉材料にはならない。


 ただ。心に大きな傷があり、それがアルヴィースの行動を制約している事。いざとなれば公爵すら敵に回す覚悟と手段を持っている事が分かった。

 最悪公爵領を壊滅に追い込まれても打ち倒す覚悟を見せることで敵対の選択をさせないようにしたが、面倒だな、と公爵は思った。



「愚かではないしある程度の人間性は認められる。道具のように扱わなければ大きな問題はないだろ」

「まだ平民ですがなぁ。わずらわしい事になりそうです」


 とりあえずフィリスをダシにすれば多少の要求を通せる事は確認できたので、何人か弟子を押し付けてこちらに都合のいい人材を育てさせる方向で行く事に決める。アルヴィースに「いつまでも何度も時間を拘束されるより、弟子の育成をして「後は任せた」と言える立場」を望むように誘導すれば大規模事業への発展も望めるだろう。

 ただ、時間をかけてしまえば公爵以外にもアルヴィースを利用しようと近づく輩は増えていく。相手が平民という立場であれば何をしても構わないと考えるダメ貴族を二人は良く知っている。


「お嬢様の婿に迎えるというのは本気ですかな?」

「まさか。ただの時間稼ぎじゃ」


 公爵家の娘と結婚し、その身内に数えられるようになれば手出しできる人間なんて片手で数える事が出来る。

 ただし、逆に言えば手出しできる人間の目に付くように仕向けてしまう事になる。公爵家の婚姻は大事件の一つだからだ。それに身分差をはじめとした各種細々とした問題でダメージが大きすぎる。

 さすがにそんな悪手を打つ公爵ではない。ああ言うことでアルヴィースがこの屋敷に自分から近づく可能性をなくしただけだ。

 結婚なしで付き合わせれば済む話なのだし、公爵の孫娘たちとは身分を隠して会わせる用意をしている。孫たちも選べる立場になった事で乗り気だから都合がいい。型にとらわれず実利を追求するオルコック公爵家ならではのやり方だ。


「それに運良くクソババアの血族を連れていた。いい牽制になるじゃろ」

「逃がした事は知っておりましたが、ここで連れてくるとは予想できませんでしたな」

「フン、あのババアの差し金だ。あの娘ども、この為に残しておいたんじゃろ」


 あの二人が今日来る事についてはギリギリまで把握できなかった。恐らくだが、ガロウィン公爵が手を回し、このタイミングに間に合うよう手引きした。オルコック公爵はそう考えている。それをされない為に緊急の呼びだしをした訳だが、間に合わなかったことが悔やまれる。


 だが、オルコック公爵にしてもあの二人の利用価値の高さは見逃せない。

 ガロウィン公爵の特徴を色濃く受け継ぐ娘を連れていれば、勘のいい貴族はアルヴィースに手を出さない。それでも手を出す馬鹿なら潰してこちらに都合のいい人間を送り込むきっかけを作れる。それにセイレンはオルコックの派閥であり、そこにガロウィンの娘が従うという認識を持たせることで派閥を強化できる。

 その代わりガロウィン公爵家が出てくる可能性が増えるかというと、そうでもない。不義の娘であれば知らぬ関わらぬが基本姿勢になる。もし関わってきたとしても攻撃材料に出来るのだからマイナスになる事はない。


 ただし、クソババアと称されるガロウィン公爵だけにその全てが想定内。そこからどんな巻き返しを狙ってくるか分らない。オルコック公爵はそれを知った上で利用する。どちらも貴族の世界で名を馳せる古狸だけに、お互い相手の思惑を知って利用する習慣が付いているのだ。



「さぁて、次はバカ息子を呼び戻さねばな」

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


9月4日 誤字修正

× それらを見れば盛況で知られる →

○ それらを見れば精強で知られる

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