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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
4章 最後の平穏
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当日②

 俺がこの世界に迷い込んでから1年と2ヶ月程度経っている。

 これまで色々やってきたが、俺はあまり自重してない。

 スラムでゴミ掃除をしたり、≪彫金≫スキルを教えてみたり、最近は男爵相手に殲滅戦をやったりもした。

 それなり程度の情報封鎖はしたが、正直権力者にバレていないとは思っていない。


 異世界転移のチートありなら権力者に目をつけられる展開が多いのはお約束という奴だろう。

 もちろん俺の事はこの国の上層部に知れ渡っていて、使い勝手のいい有望な人材と思われていた。


 だというのに俺が今まで無事だったのはフィリスが後見人になっていたからだ。

 フィリス=システィナ=アラド伯爵。

 彼女はれっきとした、この国の権力者なのだ。





 貴族の位というのは、王族を頂点に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵となる。

 この国の場合、公爵は王族の外戚で王家の傍流を指す。広い領土と屈強な軍隊を持つ。日本の政治家に例えるなら大臣かな? 10万以上の軍を持ち、国防の最前線を担っている。家の数は3つで固定。

 侯爵はそれより一段階劣るが、権威と武力は侮れない。国会議員並みの権力を持つ。数万の軍を持ち、主に国内の治安維持に駆り出されることが多い。

 伯爵になると県知事ぐらいの権力なのだが、都市一つと周辺村落を従える程度である。軍と言える規模の武力は持てず、フィリスの手持ち兵力は1万程度であるが大半は徴兵した一般兵でしかない。まともな訓練を受けた兵士はだいたい1千人だ。

 子爵はちょっとした町といくつかの村を治め、小規模な私兵を維持するのがやっとだ。

 男爵、騎士爵になると土地を持たず、国や公爵などに仕える連中で、貴族と呼ぶのが微妙なラインになる。男爵は政治家として、騎士爵は軍人として国に仕える者を指す。

 この説明は大体のもので、例外もあるがそこまで大きく間違ってはいない。


 土地を治める各貴族は各々領土に独自性を持つが、つながりがない訳ではない。

 セイレンの場合、近くにあるオルコック公爵領とガロウィン公爵領がそれにあたる。

 オルコック公爵家とガロウィン公爵家は仲が悪く、セイレンのアラド伯爵家は代々オルコック公爵家とはつながりが深い。

 よって、なにかあった場合はオルコック公爵を頼る事になり、時折ちょっとした頼みを引き受ける。



 俺の立場はアラド伯爵家の預かりなのでオルコック公爵はフィリスを通じて俺に命令できると考え、直接俺を如何(どう)こうしようとはしなかった。下手に何かやって逃げられるより自主的に何かさせる方が楽だし費用もかからない。

 上級魔法を使える魔法使いの雇用費用は安くないので、多少手間はかかるが使える立場にある以上、手元に置かないのが正解なのだ。

 費用関係の理由で、伯爵家以下の貴族は俺に手出しできない。

 侯爵家以上の権力者もオルコック公爵が後ろに控えるアラド伯爵に引き抜きをかければ、オルコック公爵に対し借りを作る事になる。俺はオルコック伯爵に直接仕えてはいないが、貴族の社会ではその理屈が成立するのだ。

 後問題になりそうなのは王家なのだが、王家の場合は信用がない風来坊のような俺を近くに置くのは危険だからと、そもそも呼ぶ立場にない。国に仕えたうえでの実績がなければ王宮務めはできない。これはオルコック公爵が俺を手元に置かなかった理由の一つでもある。信用がない、戦闘の力が高い奴など普通は近くにいて欲しくないだろう。



 今回は何かあってから顔を合わせるより、事前に一回顔を見せておこうという配慮だ。

 フィリスの上司(?)とはいえ、いきなり名前も知らない奴から命令されれば角が立つと考えたようだ。


 言葉を返せばこれから色々頼まれる(いいように使われる)未来が見える。


 断ってもいいと言われたが、もちろん、これを断ればその分フィリスの立場が悪くなる。普段頼みを聞いてやっているというのにこちらの頼みを断るとは何事だ、と。実際セイレンは工業製品のうち、いくつかの品目を輸入している。俺が勝手に逃げたとしても不手際として叱られるので無茶はできない。大人しく従うべきだろう。



 とまあ、俺の知ろうとしなかった事情をマリィから延々と聞かされた。途中眠りそうになったが、なんとか耐えきった。


 貴族様(笑)の相手など面倒ではあるが、いざという時の切り札(メテオドライブ)もある。

 何とかなるだろう。





 俺が帰ってきたのは15時ぐらいである。

 あちらには19時までに着けばいいので、18時まで時間が空いた。


 やった方がいい事はいくつか思いつくが、もともと俺は疲れて帰ってきたのである。

 形は違えど難敵を相手にするのだ。休んで英気を養うべきだろう。

 時間がきたら起こすように頼み、俺はベッドに潜ろうとした。


「アルヴィース様、来客です」


 控えめなノックで俺の休憩は無しになった。さっき別れたばかりのマリィだ。

 マリィがわざわざ俺のところに来た事に違和感を感じつつ、客とやらのところへ案内してもらう。



 応接室の一つ。案内された部屋にいたのはアルビノの双子と赤毛の少女。山に送り込んだはずのシエル、ルリエとノエルだ。


 とりあえず、意味が分からない。


 3人には連絡をしていない。

 安全は確保したが、リハビリの為に2ヶ月間は山にいるように言い含めてあったはずだ。

 山を降りるのはあと1カ月以上先の予定だ。

 帰る為の馬車などの手配だってしていない。お金は少し渡してあったから途中で乗せてもらったのかもしれないが、それでもなぜセイレンに戻ったのかが分からない。


「アルヴィース様、お客人の前です。まずは座ってください」


 マリィに言われるまま、3人の対面に座る。

 それを見た後なら3人も椅子に座ると思ったのだが、シエルが頭を下げた。


「ご主人様、言いつけを守らずこの場にいる御無礼をお許しください。申し訳ありません」


 シエルに倣い、ルリエとノエルも頭を下げる。

 まあ、リハビリは終わるまで旅はキツイだろうという配慮と、安全を確保するための期間を多めに見積もったから2ヶ月と言っただけだ。安全が確保されたことを考えれば特に咎める理由はない。


「気にしなくてもいいって。敵は排除してあるから」


 そう言っても頭を上げない3人に困り、マリィに助けを求める。

 マリィは3人に小さく耳打ちして頭を上げさせた。む、何を言ったかはわからなかったが、聞かれないようにしたという事は聞かれたらまずいって事かな?


 その後も所々マリィに間に入ってもらい、情報が俺に隠蔽されることになったが3人との話はスムーズに進んだ。


 ただ、この3人はオルコック公爵のところに付いてくることになった。シエルとノエルはガロウィン公爵家の血縁だったことが関係しているのだろう。

 事情は分かる。分かるのだが。

 気が進まない。あまり巻き込みたくない。実家と縁を切った人間である以上、ここで公爵家と関わるのは、別の家とはいえ問題がある。

 どのように関わる気なのかも不明だし、安心できない。



 狙ってやった事ではないが、やる事なす事すべてが裏目になっている気がする。

 どうしてこうなった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


9月1日 誤字日本語修正

× オルコック公爵に貸しを →

○ オルコック公爵に借りを


× 3人はオルコット公爵に →

○ 3人はオルコック公爵に

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