5日前:只今ストレス解消中
4章スタート。
4章は短めです。
現在位置、ダンジョン19階層。
俺は一人、ダンジョン攻略に勤しんでいた。
いや、今さっきボスを倒したところなので休憩中なのだが。
俺がダンジョンの深層にいる理由はストレス発散である。
慣れないことを2週間にわたり延々とやっていたので、自分の中では打ち上げパーティのノリでダンジョン攻略をしているのだ。
対人関係を気にするとか、現実世界でもほぼやっていなかった。
可愛い女の子達と戯れる? 可愛がってもらってる?
だからどうした、だ。
こっちだって気を使いまくってんだよコンチクショウ!!
なので、難易度それなりの19階層までを攻略することにより気分転換をしているのだ。
人の中で平穏に暮らすよりモンスターを狩っている方が精神的に安定するとか、少々人として疑問を持たれる気もするが、ゲーム廃人など大体そんな奴ばかりのはずである。
午前は座学に出席していたので午後からの挑戦である。
ダンジョンはおそらく10階層を一つの区切りとしている。
そうなると、攻略難易度のうち16~19階層はそれなり程度のものになる。本番は20階層だ。そこまで行かなければ特に問題は無い。
16階層はダンジョンの傾向を見せるだけだったので特にギミックの一つもなかった。
17階層は一部水中エリアを含む構造になっていて泳ぎを求められた。ボスも水中から顔を出して攻撃してくるタイプだった。ウォータードラゴンのゾンビで水属性の魔法とアンデット特有の腐食のオーラを駆使してきた。時折雑魚も出てくるので、雑魚用の手数とボス用の大威力を並行して用意する事を求められた。
18階層は入ってすぐに氷に覆われたダンジョンで歩くと足が滑り立ち止まると凍りついたりする。17階層で濡れたままだと、入ってすぐに全身が凍りついただろう。ボスが“狂った”氷の最上位精霊だったので、水と氷属性吸収・火属性無効という俺には相性の悪い相手だった。
19階層は雑魚敵の数が少ないのに特定エリアで一定数の撃破が必要となる手間のかかる仕掛けがあった。どちらかというと戦闘より罠などによる消耗を狙った構成で、手間のわりに得られるものの少ないフロアだった。ボスはヴァンパイアの上位種で真祖(下位)とヴァンパイア軍団。この上に真祖(上位)や神祖がいるので、ヴァンパイアとしてはそこまで強くないのだが、その前に数を相手にする必要があるあたり、時間のかかる奴だった。
ここまでくると、このダンジョンはアンデットがメインであることは間違いないと考えられる。
最上位精霊のように少し方向性の違う敵も混じるが、聖なる武器をメインにすれば攻略が捗るだろう。シチュエーション的に途中で堕天した天使や悪魔なども混じるだろうから、そちらの対策も必要になる。
自分だけなら手持ちだけで対処できるけど、20階層はリアの手も借りるつもりだからそちらの装備を用意しないといけないかもしれない。迦月たちを連れてくるつもりはもうないからそっちまで気を回さなくてもいいし、リアの分だけで十分だろう。
今までリアの装備の性能とかって全然聞いてないんだよ。再戦するつもりだったから、聞くのはフェアじゃないというのが自分なりの矜持ってやつだ。
ボスの専用装備だけに、なんの心配もしてないけど。
ここまで来るのにそれなりに時間を使ったので疲労が激しく、このまま寝てしまいたいがそんな事をしたらリポップしたボスに殺されてしまう。
手持ちの情報をまとめ終わると多少気力が回復したので、リポップ前に撤退する事にした。
しばらくは19階層までをワンセットにして自分を鍛え直すとしよう。
現在自分が世話になっているこの街の領主フィリスの屋敷に戻る。
帰る事には19時近い。ご飯を食べるにはいい時間だ。いつもの食堂に向かう。
俺が普段使う食堂は従業員用とでも言うべき食堂で、勤めている兵士や使用人が食事を摂っている。フィリスやティア、迦月達は別の場所で食べている。こちらは社会的地位の低い人間が使う為の場所だ。
たまにフィリス達と一緒に食事をすることもあるが、あまり決まった時間に食べない俺は客人という立場もありこちらを使う事が多い。
そしてそれは似たような立場にある他の客人の従者、莉理さんと楓さんにも適用される。
莉理さんと楓さんが一度に食事に来ると迦月が一人になってしまうので、この二人は交互に食事をする。今回は楓さんがいる時に来たようだ。
「アル君、先日は水着をいただきありがとうございます」
「貰い物だから気にしないで。俺が持っててもしょうがないし」
一昨日手に入れた大量の水着はこの屋敷の関係者各位に渡す事にした。そのとき、フィリスやティア、迦月達には優先して選んで貰う事にしたのだ。具体的には、彼女らが着れそうなサイズを適当にピックアップし、昨日のうちにいくつか渡したのだ。
楓さん経由で迦月らにも贈ってあり、無事受け取ってもらえたのでほっとしている。正直なところ、水着を贈るのは他意があるように見えて躊躇してしまったのだ。
「今日はどちらに行かれたんですか?」
「座学の後はダンジョンだよ。今のうちに19階層までの攻略に慣れようと思って」
食事中の雑談が今日の出来事にシフトする。
ダンジョンに行った理由については、さすがにストレス解消に暴れに行ったとは言い難いので建て前を教える。
まあ、実際に20階層を攻略しようと思ったら、19階層までを何度か繰り返して最適行動を取れるようにならないといけない。消耗しきった状態で20階層に向かえば思わぬ不覚をとる可能性が高いのだ。
大体節目になる、記録地点のワープゲートを守るボスモンスターは他より強く設定される。どのゲームでもやっているお約束なのだ。
「もう19階層まで……少しお話を聞かせてもらってもいですか?」
「構わないよ」
迦月達を20階層攻略の立役者にする計画は潰えたが、16階層でかなり本気の訓練をするというなら止める理由も無い。今の迦月達ならたぶん大丈夫だろう。付き添いぐらいはするつもりだが、俺が手を出さずとも何とかなる実力はある。
実力を発揮できれば、であるが。
その後楓さんに19階層までの情報を細かく教える。
自分の中にある情報の整理を兼ねているのでなかなか有意義な時間だった。
楓さんが言うには、迦月も16階層以降に挑戦してみたいらしい。今はその為の特訓をしているのだと。
彼女らの中に16階層へ行くだけの実力が付いたという自信はまだ無く、それが付いたと思えたら連れて行って欲しいと頼まれた。
これに二つ返事で了承し、手合わせの後にでも迦月を交えてこの話をする事にした。楓さんは従者なので楓さんとの約束は口約束レベル以下、迦月と改めて約束しないと意味がないからね。まさか楓さんを俺が連れ出す訳にもいかないし。
しかしこうなると、迦月達に20階層を開放させる計画をもう一回検討してもよさそうである。
ちょっと頭の中の予定を組み替えた。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。




