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ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
3章 クエスト攻略、逆攻略
109/231

幕間:自重しない人たち

時間軸はクエストクリア翌日、108話と同日です。


8月24日 会話を追加しました。


「お姉ちゃん、ご主人様がピンチなの!」

「今度はどうしたの?」

「早く戻らないと泥棒猫に盗られちゃう!」



 ノエルは私の双子の妹です。

 つい数日前まで毒と呪いによってベッドで寝るだけの生活をしていた妹ですが、2週間前からリハビリを始めました。


 アルビノ種特有の白髪に白肌と赤い目。不健康には見えない程度に痩せているその体は抱きしめたら折れてしまいそうな儚さがあります。ですが食事の改善とリハビリにより、見た目からは想像もつかないほど高い身体能力を有する人間凶器のような娘でもあります。

 私自身にも欠けているごく一部がさらに欠けている為に大平原な妹ではありますが見る人を惹きつける魅力があり、恐らくあと2年もすればご主人様の御手付きを頂けるでしょう。

 ……その前に、自ら強硬手段に出る姿がありありと思い浮かびますが。



 あの運命の日から3週間。

 山での生活も飽きてきましたが、自分の身を自分で守れない私達に選択肢などありません。

 大人しくリハビリ生活を続けてきました。

 幸い、食事には困らない量の備蓄と、快適な寝る場所があるので生きていくだけなら困りません。

 ですが、刺激の少ない山小屋生活はご主人様の命令であっても苦痛になってきました。

 鍛錬と妹のリハビリだけでは腐ってしまいそうです。


 ですからちょっと変わった事を言い出す妹には「またですか」という気持ちもありますが、「今度は何でしょう?」という思いもあり、数少ない娯楽のようなものです。

 ですから私も笑顔で対応できます。


「ノエル、ご主人様が迎えに来るまであと5週間。7月の中ごろまでここで頑張る約束でしょう?」

「違うの、お姉ちゃん。このままいくと、私たちの出番が無くなっちゃうかもしれないの!」

「? どういう事?」

「私にもわからない! でも、何もしないとご主人様がいなくなっちゃう事だけは分かるの!!」


 私は妹の必死な様子が気になりました。

 ノエルは昔から直感に優れ、私では見通せないモノを見る事があります。妹自身を対象とする事はありませんが、危険察知の能力などはかなりのものです。

 その妹の感じる焦燥感は十分考慮に値するでしょう。


 いつの間にか隣に来た親友(ルリエ)に意見を求めます。

 何も言わずに肯くルリエ。つまり、ルリエも妹の直感を信じるべきだと考えています。



「ノエル、セイレンに危険は感じますか?」

「ううん、大丈夫。先週くらいから危ない感じはしなくなったよ」


 この場にいたのは身の安全の確保。

 それがセイレンでも保障されているのであれば、動かずにいる理由はありません。


「ご主人様のもとへ行きます。準備ができ次第出発しましょう」



 3人の意見が一致したのであれば迷わず動きます。

 ご主人様の意見を違える事になりますが、状況が刻一刻と変わりゆく現状においては拙速こそ求められるものです。巧遅を求めては間に合わないのなら、間に合う手段こそ選ぶべきでしょう。


 待っていてくださいご主人様。

 貴方のシエルが今行きます!



 それにしても、泥棒猫とは何でしょう?





 セイレンのとある貴族の屋敷、その一室に集まる4人。

 そいつらを眺めながら、(ワシ)は報告を聞く。


「ターゲットの特定、間違いありません。かの少年が“製作者”と確認できました」

「周囲の者に秘密にするよう頼んではいたようですが、更にその周辺までは手が回らなかったようです。近隣の住民の証言、全て一致しました」

「販売物の性能は同質の物より性能が5~10%上昇しています。私兵100人に使わせましたが、いずれも付与による効果が確認されています」

「特殊効果の確認は難航しています。ですが、10種類中3種類までの特定が終わっています。≪自然治癒速度上昇≫≪体力回復速度上昇≫≪魔力回復速度上昇≫と、いずれも効果の分かり難いものが選ばれていました。このことから、付与した特殊能力を売り物にするつもりが無いのは確定的かと」


 部下の報告は調べさせたことが順調であることを示しておる。

 一番有望だった孫に死なれた今、それに変わる物が必要になっておるのだ。忌々しい。あれは少々色好きが目につく子供であったが、実力なら頭一つどころか二つは抜け出た逸材じゃったのに。


 公爵家の後継者候補は他に9人おるが、そのどれもが小粒ばかり。戦技でも魔法でも、中級で終わる事が目に見えておるような暗愚にオルコックの名は継がせられん。

 軍部の統括たるオルコックは常に強者であらねばならん。

 指揮官として優秀でなくとも、最前線に出る実力と気概を持つ戦士でなければいかんのだ。



 不本意ではあるが、家を出たバカ息子を呼び戻さねばならん。

 あのバカはセイレンの学園で不祥事をやらかしたと聞いておるが、その時は家名を捨てた後だから良かった。だが、家に戻せばその事をガロウィンの糞ババアが(つつ)いて来るだろう。今から頭が痛いわ。


 だからその事を避ける為に魔法具の買い漁りなどしておるのだ。

 孫が死んだと慌ててきたセイレンの武具屋で偶然見つかった≪彫金≫された武具一式。ドワーフどもが秘匿する技術によってつくられたそれを見た時は顎が外れるかと思ったわ。

 しかも、その武具が店主の作と知った時は部下の報告を疑ってしもうた。もっとも、報告しに来た部下自身、自分の報告が信じられんかったようだがの。



 調べに調べた結果、ここの領主アラド伯爵のところで厄介になっておるアルヴィースとかいう小僧が店主に≪彫金≫の技術を教えたと分かった。

 11歳とかいう話だが、絶対嘘だろう。エルフか何かの血をひいていて、体が成長せんように(しなく)なった妖怪の類としか思えん。

 他にも何かできるようだし、押さえておいて損は無い。戦士としても魔法使いとしても使えそうだし、一族に引き込むところまでやらねばな。

 孫娘の一人でも宛がえば良いかのう。似たような歳の孫娘なら2~3人はおったはずだ。



 とにかく、その妖怪小僧を押さえ、バカ息子を呼び戻す醜聞を誤魔化さねばな。

 まったく。年寄りをこき使い過ぎじゃわい。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。


8月24日 誤字修正

× 抱きしまたら折れてしまいそうな →

○ 抱きしめたら折れてしまいそうな


× その武具が店主の策と →

○ その武具が店主の作と

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