戦後処理:この世界の神話
報酬。そんなのあったんだ。
全員分の水着(自動追加機能あり)……どうでもいいな。
それよりも、今はアラスティア――リヴリアの対策である。
「そういや、クエストのキャラ表示がアラスティアなんだけど、呼ぶ時っていつも通り『リア』でいいか?」
「ん。呼ばれる時は、リアがいい」
細かい事だけど、一個目の問題解決。
「じゃあ大事な話をしようか。リアは何で死が回避できないと諦めたのか、その経緯を知りたい」
「……話すと長い。また明日」
「却下」
当面の目標を立てるためリアから情報を引き出そうとするが、リアは面倒くさそうに逃げようとする。
あんまり期待されてない気もするけど、結果で応えるだけだしねぇ。
少しでも早く知りたいし、今のテンションのまま動かないとなあなあでズルズル何もせずにいそうだから逃がしはしない。
「うー。あんまり説明したくない」
「教えてくれないと何とかできないだろ。さあキリキリ吐け」
「アルのおにちくー」
床に座り込み、立ったままの俺を上目遣いで見るリア。何でここまで嫌そうにするかね?
頭を撫でて少しでも話しやすい精神状態にしようとしてみる。
しばらくされるがままになっていたが、「もう大丈夫」と俺のベッドに座り直し、語り始める。
「まず、私は何度も転生する神なんだよ」
この世界でアラスティアという女神は、神々の母として知られる。
この世界の最高神は、孤独だった。
アラスティアは孤独を厭うた最高神によって作り出され、その妻として10柱の神を産んだ。うち5柱の神がアラスティアを筆頭とする管理神であり、残り5柱は新たな最高神となるべく他の世界へと旅立った。
アラスティアは子供を産み終えたとき、毎回毎回、必ず死んでいる。
理由は様々で、敵対する他の神に殺されたり、病気、毒、事故などで死ぬ。
死までの猶予は、産んでから10日しかない。
これはこの世界の因果に組み込まれたシステムらしい。
死ぬたびに転生するアラスティアではあるが、ノーリスクの転生などではない。普通に男女の交わりによって生まれた訳ではないアラスティア。最高神の加護により変わらぬ姿で転生する。ただ、転生するたびにそれまでの記憶はほとんど失われ、残った記憶の一部も知識になり下がる。
誰を産んだ、どうやって死んだかはだいたい覚えているが、そこにあった感情は失われている。子供たちと再会しても、自分の子供と頭でわかっても感情が付いてこない。
たとえば、俺と結ばれ子を生して転生すれば、俺の事を覚えていても感情はリセットされてしまう。
避けられない死を回避しようとしたのはフラグやペナルティメーカー、いまだ呼び方すら知らない残りの神々も同様である。
生まれてすぐに母子の絆を断たれても、彼らの母には変わりがない。彼らは彼らで頑張った。
旅立った5柱の神も、この無限ループをどうにかする力を得るために他の世界へと渡ったのだ。
神々の母というくだりは俺がゲーム時代で知った通り名が『祖魔神』だったし、慈母と合わせて考えれば辻褄は合う。
死と転生の状況、条件についても一応理解した。
「何で因果?」と思ったが、ペナルティメーカーが因果関係の神様で、そっちが調べたようだ。
死に至る理由は設定されてないけど、とにかく死ぬようにできているとか。
実にやり難い。対策が取り辛い。
転生における最大のデメリット、記憶の消失と知識化は実に厄介だ。
記憶を外部保存したとしても、知識化された記憶の残骸に足を引っ張られるように、感情が付いてこないようにできている。
というかなぁ。死んだままなら魂だけでも連れ回せるようになる手段を考えれば済む話なのに。子育て幽霊とか。
アラスティア死亡フラグの破壊は神様レベルで何度も実行されたって部分は、感情のある神様の世界だけに理解できる。
だというのに、今のところ成功する目処も立たない。
なんとかできるはずの最高神は、何もしないまま自我消滅。というより、この状況を作ったのが最高神っぽい。
なにせ、アラスティアから最高神に関する記憶のほぼすべてが消されており、最初の方のちょっとした思い出と、「挑む方法」「挑んだ結果」のみ覚えている状態だ。
子供達に至っては、一度も言葉を交わした記憶がないとか。
疑わしいにもほどがある。
今のところ気になること。
・ 最高神以外と子供を作っても死ぬのか
最高神と子供を作った時に死ぬのか、子供を作った時に死ぬのかは試してないから誰も知らない。試したくもない。今のところペナルティメーカーの情報を信用する事にする。つまり、誰が父親でも、子供を作ったら死ぬ。
・ 最高神以外と子供を作り、死んだ場合も転生できるか
こっちについてはリアも調べてなかったようで。嫉妬心あふれる最高神だった場合、他の男と子供を作ったら不貞だと言って転生させない可能性もある。記憶の欠如は転生とセットになっているので、実は期待していたりするが。
・ 最高神はなんで転生なんてさせているのか
あとは、わざわざ転生させる手間をかけるぐらいならなんで死なないようにしないのか、ということ。転生にはまだ知られていない、隠された秘密でもあるのか?
これぐらいかな?
……全部最高神に集約するし。
こうなると、もう片方の当事者から話を聞き出すのが手っ取り早い気がしてきた。
根性入れて、過去から意識のある最高神を召喚する方法を考えてみよう。
今まで全然気にしてなかったけど、召喚するための触媒その他を集める。
その為にこの世界の神話関係を洗い出さないと。どんな神で、どこが聖地で、なにか神器の一つでも残っていないか調べないと。
それだけ条件を整えれば呼べるはずだし。
直接理由を聞いて、最高神にどうにかさせるのが正解だと思う。
これで実は「娘が欲しければこれぐらいの試練を乗り越えてみよ」って理由の、最高神による嘘オチだったらマジで滅ぼすことになるけど。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。
エピローグまであと1話。




