表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニートに恋愛ゲームはイジメです  作者: 猫の人
1章 入学前、出会いの嵐
10/231

クエスト:幼馴染をゲットせよ②

異世界物の定番、料理回?です。ミューゼルはハラペコキャラではありませんが、料理関係担当になります。

 だいたいのMMO-RPGには≪料理≫に纏わるスキルが存在する。

 「Brave new world」も例外ではない。≪料理≫≪醸造≫スキルと食材を集めるための≪釣り≫≪採取≫≪農耕≫≪解体≫スキルがあるし、本来は薬剤を作る≪調合≫スキルは調味料を作るのにも使える。魔法だと≪生活魔法≫という系統があり、≪純化≫(ピュリフィケーション)で小麦粉に混ざっている殻を取り除いたり、≪集水≫(コレクト・ウォーター)で飲み水を確保するのはよくある事例である。アイテム類も豊富で、例えば魚を捌く包丁だけで6種類もある。


 冒険をする以上、飲食方面へのこだわりを持たせるのは間違ったことではない。

 冒険中に毎日味気ない乾パンを食べていると心が荒むというのは日本人ゲーマーには一般常識である。


 もちろん俺も料理関連のスキルはカンストまで成長させてあるし、専用の道具を常備しているほどにこだわりがある。

 「Brave new worrld」ではプレイヤースキルによる補正も大きく、パーティを組んだときはほぼ確実に俺が調理担当だったほど、腕には自信がある。

 自分が好きで肉料理を作ることが多かったが、女性プレイヤーにはお菓子が喜ばれるので、お菓子は肉料理の次によく作っていた。毎年2月14日(バレンタイン)に自分用チョコレートケーキを作っている、某漫画の主人公ほど上手くはないと思うけど。



 ミューゼルと友達になろうと思う。

 正直に言えば、友達は欲しかったのだ。たまには同年代の友達と話したりしたいのだ。

 むしろそれが目的で下山したのに同年代の人間に触れ合う機会がなかった。

 村では親が俺に関わらないように言い含めていたらしく、会った途端に逃げるのだ。あれはかなり傷ついた。こちらに来てから仕事ばかりで一昨日(おととい)の休みはあんなことになってしまい、時間が全くない。あっても何をすればいいか分からないけど、時間がなかったから友達ができなかったということにして欲しい。

 まぁとにかく、ウォレスのおっさんは俺にとって都合のいい大義名分をくれたのだ。


 しかしいざ仲良くなろうとしても、俺は喋るのが苦手だ。というか、こちらに来てからまともに人と喋っていない。唯一の例外はマードックさんだけど、あのおっさんは自分から喋りかけてきたから、自発的に人と喋ろうとしたことはここ数カ月全く無かったりする。

 リアル世界の友人(といってもVRMMO仲間のみ)と話すのであればゲームの話をすればいい。だが、こっちで同年代(?)の女の子と話せと言われても無理である。


 そうなると方法は一つしかない。

 餌付けである。


 お菓子を作り、食べてもらうことで関心を誘うのである。

 ライトノベルでも異世界チートものは食で世界と戦えることが多い。俺の料理スキルがこの世界でそこまで高い水準になくとも、それなりに美味しければきっと勝てる。



 用意したのは小麦粉、牛乳、卵、砂糖、重曹。あとは蜂蜜。作るものはパンケーキ。

 バニラエッセンスも使いたかったが今回は見送る。売っていたことは確認できたが高級品だった。買ったら確実に目立つ。そこまでしなくてもいいだろう。

 生クリームやプリンなどを作れないこともないが、保冷の問題で却下。シンプルでもたぶん問題ないだろう。


 今回のパンケーキなんて混ぜて焼くだけの簡単なものだ。工夫を凝らすことはしないでおこう。

 よって分量を量り間違えるような失敗もせず、とりあえず自分の昼飯もこれで済ませてしまおうと、結構多めに焼いた。



 朝の時間を削ってここまでやったんだから、失敗したら目も当てられないよな。




 仕事に来てみると、ミューゼルはチマチマ何か書類を書いていた。

 ……よく考えれば来ないという可能性もあったわけだ。今日は来ていて良かったよ。

 昼間では普通に働きつつ、昼のためにミューゼルの親父さん――名前はウォレスというがどうでもいい――に話しかける。

 俺がミューゼルに直接渡すのも恥ずかしいので、パンケーキと蜂蜜の瓶はウォレスに渡した。ウォレスは昨日の今日でこんなものを用意した俺の肩をバシバシ叩いて豪快に笑っていた。ミューゼルはそんな父親を不思議そうに見ていたが、俺が見ていることに気が付いたらすぐに目を逸らして仕事に戻った。



 昼。今朝味見したパンケーキは、今食べても普通に美味しい。納得の出来栄えだ。

 蜂蜜をかけるのが前提だがパンケーキ自体もほんのり甘く、口にしてもやわらかくてパサつかない。

 もし甘いのが苦手であれば、塩クッキーとかで攻めてみるのも手である。今日の結果はあとでウォレスに聞こうと決めた。



 昼過ぎ。午後の仕事を始めるが、ウォレスが見当たらない。ミューゼルはいるのになんでだ?

 気になって他の人に聞いてみたら、ウォレスは護衛で街の外に出たらしい。そういやウォレスがとまともに話したのって昨日が初めてだし、それ以前は見た覚えもない。記憶に残っていないのではなく、そもそもいなかったということだ。どうやら本職は商隊の護衛で、昨日のは合い間の手伝いだったらしい。

 であれば昨日俺に話しかけてきたのも納得がいく。自分がいない間に娘と同年代の子供がいた。娘の友達になってくれるかもしれない。そんな期待をしたのだろう。しかも知り合い(マードック)の養子なら信用もできる。自分がいない間、預けておこうって考えたのかもね。



 ん?

 あれ?

 ちょっと待て。ミューゼルの家庭の事情(バックボーン)はいいけどさ。パンケーキの感想、自分で聞かなきゃいけない?

 うわぁ。ハードル高くない? 昨日ちょっと顔を合わせたやつからパンケーキを渡されてその感想を聞かれたら、普通の女子は引かないか?

 うん。やっぱり感想を聞くのはやめよう。ウォレスがどんな事を言って食べさせたかは知らないけどさ。食べてもらえたなら餌付けは十分だよね?


 そんなことを考えて、ミューゼルをチラ見しながら今日の仕事を終えた。ミューゼルはこちらを見ることなく仕事を続け、この日は一言も話すことなく終わった。

 ごめん、ウォレス。女の子に話しかけるのって、俺には無理だよ。



 少々ヘタレ臭いことを考えながら家路につき、家のドアを開けた俺が見た光景は、予想の斜め上をいった。

 巫女からメイドにクラスチェンジした獣耳幼女が、三つ指ついて、頭を下げていたのである。


「お帰りなさいませ、旦那様」


 その出迎えはメイドじゃなくて若奥様だろ、と心の中で突っ込んだ。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら指摘をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ