一つの命
私の集約
一つの命が産まれました。
一つの命は自分の運命も知らずに大きく育ちました。
一つの命はもう一つの命と出逢いました。
一つの命ともう一つの命とから更に命が産まれました。
一つの命は二つの命の為に働きました。
三つの命達に新たな命が誕生しました。
一つの命は更に懸命に働きました。
働いても働いても、一つの命は渇きを癒せません。
そこへ五つ目の命が誕生しました。
一つの命は渇きを癒すために、そして4つの命の為に働きました。
渇いてくたびれてしまいましたが、一つの命は働き続けます。
六つ目の命が誕生したのち一つ目の命は壊れました。
一つの壊れた命は命を修復しようとしました。
壊れた命は生きていく為にまた働きました。
そしてまた壊れました。
壊れて働いて、壊れて働いて、七つ目の命が産まれました。
六つの命を護る為に一つの命は働きます。渇きの原因は分かりません。
それでも一つの命は、働き働き働き働き働き働き。
そしてまた壊れました。
毎度一つの命が壊れる毎に困るのは二つ目以降の命達です。
六つの命は困りましたが、一つの命を支えようとします。
一つの命は渇きの原因が分かりません。働く事へは責任感のみで、その意味すら忘れてしまいました。
そして一つの命は気が付きました。
とても単純なことに気が付きました。
「自分がいなければ、誰も不幸にならなかった」
一つの命は更に壊れました。
しかし現実は逆流しません。
やり直しもききません。
一つの命は悔やみました。
産まれてきたことに。
存在していることに。
『私など産まれてこなければ良かったんだ』
けれども現実を悔いても仕方ありません。
一つの命はまた働く日を考えながら休みます。
今度こそ産まれてきたことを悔やまぬように。
一つの命はそうやって、まだ生きています。