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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
一章 水の錬金術者
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五話「能力説明」

 彰の家は住宅街にありそこそこの広さがある、二階建ての一軒家だ。

 家に着いた彰はまず恵梨をリビングに案内した。

 普通男の一人暮らしとなると部屋が散らかったりしているものだが、彰が主婦のようにまめに掃除をしているのでリビングは整理整頓されていた。


 彰は買った食料品を冷蔵庫に入れお茶を準備し、リビングの机で恵梨と向かい合って座った。

「とりあえず落ち着いてよ」

 彰は早く話を聞きたいが、この家に入ってますます落着きの無くなった恵梨をせかす訳にはいかないのでそう言った。

「あっ! すみません」

 恵梨が長い黒髪を振りながら謝る。そしてお茶を飲んで一息ついた。

「それで、まず何から話せばいいですか?」

「じゃあとりあえず、恵梨について聞いていいか」

「私ですか?」

「ああ。……さっき使った能力は何なんだ?」

 そう言って彰もお茶をすする。


「あの能力は……さっきも言ったように、水の錬金術というものです」

 恵梨が話し始める。彰も恵梨が話しやすいように合いの手を入れることにする。

「見ていたから大体分かるけど、詳細を教えてもらえる?」

「あっ、はい。えーと、水の錬金術はまず自分の近くにある水を自由に動かせます。手で触れる必要もありませんし、空中にも浮きます。こんな風に」

 そう言うと、恵梨の飲んでいたお茶が、コップから浮いた。二、三回見ているが、やはり彰には慣れない光景だ。一度も見ていなかったら手品だと思ったかもしれない。

 恵梨の周りをお茶がふわふわ漂う。

「水の形も自由に変えられます」

 浮いているお茶が、球状、棒状、ドーナツ状、と次々に形が変わっていく。

 そして、最後にお茶は星型になった。

「その水を金属化(メタライズ)できます」

 お茶は星型のまま、青みがかった金属に変わった。

「触ってみますか?」

「ああ」

 彰は、立ち上がって浮いている金属を触ってみる。

 質感に水らしさは全く感じられず、ただただ堅い金属だった。


 彰は感嘆して、確認する。

「この金属は、錬金術と同じように金じゃないんだな」

 まぁ、青色の金があるとは思えないが。

「はい。……ただこれが何の金属なのかも分かりません。そもそもこの能力は、金属になるのが錬金術っぽいって理由で名付けられましたから」

「結構てきとうな名前なんだな」

 彰はまた座りなおした。

「そして、金属化(メタライズ)した物も自由に動かすことはできます。形は変えられませんけど」

 さっきと同じように、星型の金属が恵梨の周囲を漂う。ただ地面に平行に動くだけでなく、上がったり、下がったり、停止して逆走を始めたりとかなり自由に動かせるようだった。


「それはどれくらいの速さまで動かせるんだ?」

 彰が聞くと、

「えーと、そうですね~……」

 急に、恵梨がいたずらを思いついた子供のように少しニヤニヤした。

「?」

「いいこと思いつきました。…………彰さん。動かないでくださいね」

 そして星型がいきなり加速して、

「っ!」

 彰の顔めがけて飛んできた。

 突然のことに何もできない彰。その顔に当た……らずに、あと少しで当たるという空中で停止した。


「うわっ!」

 肝を冷やした彰は遅れて悲鳴を上げる。

「ふふっ。彰さん、驚いて面白い顔してますよ」

 そう言って笑う恵梨に、からかわれたのだと彰は遅まきながら理解する。ぶすっとした顔にして、

「面白い顔って何だ?」

 と反論するが、

「照れ隠しですか~」

 と恵梨は取り合わない。完全に恵梨にもてあそばれている。

「うるせぇ」

「…………でも、安心しました」

 恵梨が笑い顔を引っ込めて、いきなり安堵する。


「何がだ?」

「だって……彰さんは出会ってからずっと真面目で堅い感じでした。それに裏通りで空腹に悩んでいた他人の私に弁当をくれたりと、追っ手を退けることができたり、私をこうして家に招いてくれたり、となんか人間離れしていると思っていました。でもこんな顔もするんだなって思って。同じ高校生だなって、今やっと思えました」

「……俺はそんな怖い感じに思われていたのか?」

「怖かったって……うん。怖かったですね」

 そう言って恵梨が笑う。それににあわせて黒髪が揺れる。

 その姿を見て、能力を持っている恵梨も同じ高校生なんだ、と彰も再認識するが口には出さない。何となく恥ずかしいからだ。


「話が脱線しましたね。えーと、私が今動かせる速度がこれくらいです。大きなものなら更に速度も低下しますけど」

 恵梨が説明を続ける。

「また自分の近くなら、さっきのように加速、停止も自由自在です」

「近くじゃないといけないのか?」

 彰が疑問を発する。恵梨が何かに気づいた表情になる。

「そういえば、言ってませんでしたね。私から半径二メートルほどの距離までを領域(エリア)と呼びます。領域(エリア)内でないと、水は浮きませんし、金属にもできません」


「…………つまり自分から遠い水は動かせないし何もできないが、逆に恵梨の領域(エリア)内であれば水は思いのままって訳か」


「はい。追っ手と戦っていたとき盾を飛ばせたのは領域内で加速して、あとは勢いのまま飛びだしていったという感じですね」

 そして、星型フワフワと動いて元のコップの上まで動く。

「あとできることは金属化を解除することぐらいですね。そして解除だけは領域(エリア)外でもできます」

 そう言うと、金属化(メタライズ)が解除されて元のお茶に戻りコップに落ちた。

「これぐらいですが、何か聞くことがありますか?」

「そういえばこの力はどうやって、何で動いているんだ?」

「水は私のイメージで、私の魔力を使って動きますよ」

「魔力?」

「はい。人間すべてが本来持っている物であると聞きます」

 恵梨は先生のように説明する。

「世界の(ことわり)に反して、水を浮かせるのにも、水から金属を作るのも魔力が必要なんです。さらに理に反している、水から作られた金属という物が存在を続けるのにも魔力が必要なんです。だから、解除というのは魔力供給を止めることで、水が金属でいられなくなることを言うんです」

 恵梨はお茶を飲んだ。

「一気に言いましたが、分かりましたか?」

「何とか」

「良かったです」


「……その能力俺も使うことはできないのか」

 そして気になっていたことを聞く。

 この能力さえあれば水をいつも携帯しておくだけで、追っ手の襲撃に対応できるから楽だと、彰は思う。

「すみません。それは無理です」

 と恵梨が返してきた。

 特別な能力だ。彰はもともとそんなに期待していない。しかし、一応聞いておく。

「何で使えないんだ? 努力しても身につかないのか?」

「それは、この能力は遺伝することでしか使えないからです。遺伝してさえいれば、生まれたときから使えるはずです。……といっても、きちんとイメージできないと使えないんですが」

 そこで彰に聞く。

「……彰さんの両親は能力者ですか?」

「いや違うと思うが」

「まあ、そうですよね」

「ということは、恵梨の親は能力者なのか?」



「はい。……能力者でした」



 恵梨は、何故か冬を連想させるさびしげな笑いを浮かべる。

 なんでだ? そんな顔をしないでくれ。と彰が脳裏に思ったとき、 


 グ~~と彰のお腹の音が鳴った。


「………………」

 彰は恥ずかしくて机に突っ伏す。

 前にもこんなのがあったと思い出す。あの時鳴ったのは恵梨のお腹の音だったが。シリアスな雰囲気になるとお腹が鳴らないといけないのだろうか?

 現実逃避に答えの無い疑問を浮かべた彰を、恵梨は笑わなかった。

「おなかがすきましたか? ……そういえば、私が弁当を食べてしまったから」

「いや、もう七時だし、しょうがないよ」

 彰は顔を上げて、関係ない、と手を振る。

「……じゃあ、私が晩御飯を作ります」

 恵梨が提案する。

「えっ、いいよ。俺が作るよ」

「やらせてください。泊めてもらっているのに、何もしないっていうのも肩身が狭いですし」

「………………フム」

 それを聞いて、恵梨の性格上料理をさせたほうが楽になるかと判断する。

「……それならお願いするよ。キッチンはそっちだから」

「分かりました」

 恵梨はキッチンへとぱたぱた歩いていく。



 彰はさっきの恵梨の言葉、そして寂しげな表情が気になった。

 能力者でした……過去形か。あの表情から想像すると……。親がいなくなってしまったのだろう。

 何があったのだろうか?

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