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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
二章 炎の錬金術者、来襲
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四十六話「いつか、ちゃんと」

「何の話だ?」

 彰はいつもどおりに恵梨に言葉を返す。

「………………」

「?」

 恵梨は何か口に出すことを逡巡しているようだった。

 彰が気になって見ている目の前で、恵梨は話し始める。



「……彰さんはゴールデンウィークの予定が何かありますか?」



 ……恵梨が言い出したのは、直前に自室で考えていた「彰の過去について」ではなかった。


「特に用事はないぞ。……そういえば明日は何かクラスの連中が集まって遊ぶというのは聞いているが」

 彰も恵梨もゴールデンウィークについて話を続ける。

「それなら、私も美佳さんからその話は聞いています」

「俺もさっき仁司からメールが来たぞ」

「楽しみですね」

「……まあ否定はしないが」

 彰がぶっきらぼうにそう言ったところで、一回恵梨が言葉を溜めて、

「……それで、お願いしたいことがあるんです」

「……何だ?」

 彰が真面目な話のにおいを感じ取って、寝転がっていた姿勢から立ち上がり、ベットに腰掛ける。

 恵梨はそのお願いを告げる。


「私と一緒に、このゴールデンウィークに開催される能力者会談に参加してください」


「…………能力者会談……?」

 彰はその言葉を一度聞いたことがある。それは恵梨と火野の話をしていたときで――

「確か、日本の異能力者が全員集まる、とかだったよな?」

「そうです」

 そういえばメールにも俺を連れて行くとか書いていたな、と彰が思い出している中、恵梨が続ける。

「彰さんは風の錬金術者(アルケミスト)の家系に属していない風の錬金術者(アルケミスト)という、その家系に属していない能力者という今まで聞いたことのない人です。その存在の特異さゆえに、今回の会談でも話題の中心になるでしょう」

 どうやら自分は能力者の世界から見るとよほど異質な者らしい。

「……そんな中、俺が行っても大丈夫なのか?」

 彰は口の中でつぶやく。

 彰は能力者の世界がよく分からないのだが……こういうときは大抵、異分子はよく思われていないことが多い。

「何か言いましたか?」

 恵梨には聞こえないボリュームでつぶやいたつもりだったが、少し耳に入ったのだろうかそう聞いてくる。

「いや、何でもない」

 ……まあ恵梨が俺を危険な場所に誘うとは思えないし、大丈夫だろう。

 そう思えるほどに、彰は恵梨を信頼している。


「ちなみに、会談は三泊四日になるので宿題は早めに終わらせておいてくださいね」

「……旅行になるのか」

 大きな会議場で一日かけて何か話し合いをするようなものを思い浮かべていた彰は当てが外れる。

 ……ていうか、能力者会談ってどんなことするんだ?

 そう疑問を持ちながらも、口をついて出たのは別の言葉。

「……まあ、とりあえず宿題はもう終わっているぞ」

「………………えっ? ……どういう意味ですか? まだゴールデンウィークは始まってもいないですよ?」

「ゴールデンウィークの宿題なんて、各教科がばらばらにこの一週間で配っていただろ。配られた日には各教科の宿題は終わらせたからな」

 教師が自分の授業の時に宿題を配るのでこんなことができる。

「………………」

 何でもなく言った彰に、凡人と天才の違いを見せられているようで恵梨は言葉が出なかった。




「……それで他に話はあるのか?」

 能力者会談についての話がまとまったと見て、彰は恵梨にそう訊ねる。

「………………その」

 恵梨はその言葉に本来聞こうと思っていたことを告げようか迷う。


 つまり、彰が不良になった話……その続き。


 ……でも。

 恵梨がそれを聞くのを踏みとどまったのには理由がある。

 その理由は、彰が理由なくそんなことを隠すような人ではないということ。だから話せない理由があるんじゃないかということ。

「………………」 

 だから恵梨は聞かない。自分の心の奥底に、それを知りたいという気持ちを封印する。

 ……大丈夫。彰さんなら話す時にはちゃんと話すと思いますし。

 彰が恵梨を信頼しているように、恵梨も彰を信頼している。


 ……ですけど、話せないなら話せないと言って欲しいですね。……その出来事自体から隠していたなんて。

 なので彰には少しだけ仕返しをしておく。

「彰さん」

「どうした?」

「……彰さんの過去話。……いつか、ちゃんと話してくださいね」

 その言葉に彰の右手がピクッと動く。

「……もう話しただろうが」

 自分の鼻の頭をかこうとする動きを、意志で止めながら彰は答えた。

「そうですか。……では」

 恵梨はそう言い残して、部屋を出た。




 彰はひとり自室で、恵梨に最後に聞かれた言葉を脳裏に浮かばせた。恵梨は明らかに自分がまだ話していないことがあることを分かってそれを発言したのだろう。


「どうして恵梨に気づかれたんだ?」

 一回目の火野との戦い後に始まった彰の過去話。あの時、彰は恵梨に最初は嘘をついて意図的にある部分を誤魔化した。恵梨に嘘をついているのがばれて、ケンカを始めた理由を話したが、

「……あのときは鼻をかかないようにするのに苦労したな」

 その後話したものにも、一部誤魔化しが入っている。

 そこまでして彰が隠したかったものは……ケンカしてばかりで周りのことを考えていなかった自分が更正したきっかけ。


「……あれは話すことができない」

 それは自分が最もみっともなかったことを示すから。そして自分だけの問題ではないから……。

 でも、恵梨は「いつか、ちゃんと話してください」と言った。

 ……これからも一緒に暮らしていくのだから、いつかはその機会が来るのだろう。


「………………はあ」

 そのときのことを考えると、ため息が漏れた。それは憂鬱(ゆううつ)なのではなく、自分の至らなさを露呈(ろてい)する話をしたくなかったからだ。

 ……まあ、いつまでもうじうじ考えていないで、勉強でもするか。

 意識を切り替えるために最後に一言つぶやく。


「……俺はあれを後悔しているんだよな……」

 しかし後悔はしているけれど、否定はしない。

 それはつまり、今の自分を否定することにつながるからであった。




 その日も夕食時になって由菜が彰家に来る。

 いつも通りに夕食を三人で食べて、その夜は更けていく。

 能力者会談がある、彰と恵梨の高校一年生のゴールデンウィークは始まりを告げる。




 <第二章 炎の錬金術者、来襲 完>

 話数が多くなりましたが、第二章も完結!

 いきなりですが第三章予告!


――――――――――――――――――――――――――――――


 能力者会談。

 それは日本の能力者が唯一、集合する場である。


 彰と恵梨はそれに参加する。

 大勢の異能力者に会って、そこで彰は能力者の世界についていろいろと新しく知ることになる。

 そして彰はある能力者と実戦形式の試合をすることになって…………!


 ゴールデンウィークのため、学校は無し。異能力アクション×コメディの第三章「日本、能力者会談」開幕!!




「こいつが婚約者なんて認めません!」


 新ヒロイン登場!!


――――――――――――――――――――――――――――――


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