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異能力者がいる世界  作者: 雷田矛平
一章 水の錬金術者
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三話「開戦」

 研究会の追っ手は二人組の男だった。

 着ているスーツは黒く、サングラスに黒い帽子。全身黒づくめで、追っ手と聞いてなかったら、重要人物を守るSP(エスピー)だと思ったかもしれない。

「何でここが分かったの!?」

 二人の姿を認めて、恵梨は驚く。

 追っ手の一人が言う。

「本当にてこずらせやがって。逃げ始めてもう一週間だぞ」

 恵梨はこんな奴らから一週間も逃げていたのか、と彰が内心で思う。

 二人組みのもう一人が、言葉を返す。

「ああ。俺も本当に早く帰りたいよ」

「全くだ」


 そう言って、男たちは黒光りする銃を取り出した。


「銃!?」

 彰は驚愕した。この平和な日本では、あまり縁のないものだ。

 この二人に応対しないといけないので、彰は恵梨に最低限のことを確認する。

「あいつらがお前の言っていた研究会の追っ手とかいうやつか?」

「そうよ」

「じゃあ、あの銃は……モデルガンとかか?」

「いいえ。たぶん本物よ。あいつらの組織ならそれぐらいのこと出来ると思うわ」

「……銃相手にどうすればいいんだ?」

 彰が途方にくれた。そのとき、二人組みの内ひとりが話しかけてきた。

「そっちの学生は誰だ? 協力者か?」

 彰がそれに答える前に、もう一人が言う。

「誰だっていいだろう。見られたからには殺す、で」


「ちょっと待って! この人は関係ないわ!」

 恵梨が叫ぶ。しかし、男は笑って答える。

「知るか。目撃者を残しておくとまずいんだよ」

「?」

 正直、彰は置いてきぼりだった。まだ話も聞いていないのに、巻き込まれては状況がつかめない。説明して欲しかったが、それもかないそうにない。


 なので恵梨に助けを求める。

「あの二人をどうにかすればいいのか?」

「………………」

「おい、恵梨」

 名前を呼ぶが、反応しない。恵梨はなにやらつぶやいている。

「…………守らなきゃ、…………巻きこめない、…………覚悟を決めて……」

「おーい、恵梨」

 もう一回呼ぶ。

 そして、恵梨は今までと違う冷たい声音で、いきなり人が変わったような感じで、言った。

「下がっていて」




 彰の回想(現実逃避)は終了。

 現在、恵梨が盾を作ったところまで戻る。

「では早速開始といきますか」

「そうだな」

 彰からは盾に阻まれて追っ手の二人が見えない。さっきまでは、二人の前に浮いている盾の材質が水だったので盾の向こう側が見えたが、金属に変わり見えなくなってしまった。

「「くらえ!」」

 パン! パン! パン!

 そのとき銃声がした。

「!」

「大丈夫よ」

 そして盾に銃弾が当たった音がはじける。盾はかなり頑丈なようだ。

「くそ堅いな」

 男は悪態をついて銃を連射したようだ。盾からは銃弾が当たった音が鳴り止まない。


 彰はこの能力についていろいろ聞きたかった。が、とりあえずこのピンチを脱出してから、と思い恵梨にたずねた。

「この次はどうするんだ。逃げるのか? それとも撃退するのか? 俺は銃を持った二人組みになんて勝てないぞ」

「撃退するわ」

「どうやって? 守ってばかりじゃ勝てないぞ」

「黙って見ておきなさい」

 恵梨がピシャリと言い切る。

 彰が、あんた戦闘に入ってからノリノリだなと思っていると、

「……ほらっ!」

「!?」

 恵梨の声とともに触れてもいないのに、盾が追っ手を目掛けて飛んでいった。

 盾の飛ぶ速さは、普通に野球の球などを投げたときよりは遅いぐらいだ。

 しかし盾が金属製で大きいので、威力と命中範囲ともに大違いだろう。

「くそ!」

「ちっ、逃げろ!」

 追っ手の男が叫ぶ。

「あっ、うわぁーー」

 ゴスン、という鈍い音が響いた。

 そして盾は推進力をなくして、地に落ちて滑っていく。

 彰が見たところ盾は追っ手の一人に当たり、弾き飛ばしたようだ。

「解除」

 恵梨が命ずると、一瞬で盾が元の水に戻る。盾は落ちていたので、水はそのまま地面にしみこんでいった。追っ手の一人は裏通りの地面に倒れて気絶していた。もう一人は、まだ無事である。


 一瞬で水に戻った!? と彰が驚いていると恵梨が宣告する。

「まだやるの?」

 恵梨はペットボトル逆さにした。

 残っていた水が落ちるがやはり空中にとどまり、そのまま形を変えて、盾状になる。

 そして、さっきと同じように金属になる。

 それを頭上に浮かせた。さっきのように前に浮かせていたら相手の顔が見えないからだろう。

「引きなさい。ただの銃じゃ私には勝てないわ」

 恵梨は強気に降伏勧告をする。声も冷ややかなままだ。


 彰が、戦闘に入ってからなんか強気だなと思っていると、

「?」

 視界内に、恵梨の足が震えている様子が入ってきた。

 それを見て彰は想像した。

 戦闘に入ると恵梨の声音が冷ややかになったのは虚勢だったんじゃないかと。たぶん本当は、元の雰囲気通り戦うのが怖い普通の女の子ではないか?……。



 まあ、何はともあれ一件落着だと思った彰。

 追っ手の男も圧倒的な力の差に引くだろうし、早く話を聞かせてもらわないとな。街中で銃を撃つ追っ手に、日本で銃などを持っているその研究会について。そして恵梨の能力。聞きたいことは山ほどある。

 しかし、そこに声が響く。

「ちっ! ここまで強いとは」

 追っ手の男が悔しがっていた。

「?」

 それに違和感を感じたのは、彰には男の口元が笑っているように見えたからだ。


 それを見て彰は、一件落着だと思っていた思考を切り換えて、頭を働かす。

 何故だ?

 見過ごしてきたが改めて考えると、この二人組みには違和感が多い。

 第一に、なりふりをかまうようなやつではないように見えるのに、最初男は先に声をかけてきた。何故、いきなり銃を撃って奇襲しなかった?

 なのに、そうしなかったのは……それが確実じゃないからか?

 彰の本能がそれが正解だと告げている。

 追っ手達はたぶん元から恵梨の能力のことを知っていたんだろう。

 確かに、恵梨の能力なら水があれば銃弾などすぐに防御できる。事実、恵梨は水の入ったペットボトルを最初から持っていた。

 もし恵梨を殺すなら奇襲が有効なのは事実だ。正面からでは、あの盾に阻まれて銃弾は届かない。知覚外から撃っても、恵梨が警戒していれば、銃声で気づかれて一瞬で防御される。


 有効なのは、恵梨の知覚外から、さらに油断しているときでの攻撃しかない。


 ならば、どう奇襲するか? 彰は男たちの立場に立って考える。

「………………」

 そして彰は、現在の局面から考え出した追っ手の作戦を思いついた。

 まず、追っ手の一部が正面から宣戦布告する。その理由は他に仲間がいない正々堂々の勝負だと思わせるため。そして本当に殺す気で戦う。しかし恵梨の能力の前に敗れる。しかし恵梨が勝ったと思った瞬間……一番無防備になった瞬間を隠れていた仲間が撃つ。

 追っ手の作戦はこれだろう。この作戦が一番確実に恵梨を殺せる。

 

 つまり今、もう一人か、二人か追っ手の仲間が隠れていて恵梨を狙っている。


 他の可能性もありそうだが、たぶんこの作戦だろうと思い、急いで対策を考える。

 だが、

「………………」

 やばいな……。

 考えれば考えるだけ状況が悪い。

 一番問題なのが恵梨が、勝ったと思って警戒を解いてしまっていることだ。

 さっきの可能性を恵梨に伝えたいが、その瞬間男が何か合図をしてすぐに仲間に撃たせるかもしれない。そしたら戦闘に不慣れで、警戒を解いてしまっている恵梨はすぐに防御できないだろう。

「くそっ! こんな小娘に負けてたまるか!」

 男が言う。会話を続けて自分に気をひく作戦のように思える。

「無駄よ。あきらめて出直しなさい」

 恵梨は勝ったと思いきっている。

 男はそれを見てさらに口元の笑みを深くする。


 ちっ。ここまで来たら間違いないだろう、彰は自分の考えに確信して舌打ちしたい心境だった。しかし勝っている状況なのに舌打ちすると、恵梨が不思議に思い、男に感づいたのがばれるかもしれない。

 もうそろそろで、追っ手の仲間が恵梨を撃つだろう。そしたらその次に撃たれるのは俺だ。

 ならば、俺に出来る行動は何だ? 一刻の猶予もないぞ。

 俺はどうすればこの追っ手に勝てるのか?

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